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カフェ・ストーリー『コーヒーと彼女の笑顔』

ボクが住んでるこの町に、ちょっぴりパリの香りがするフラワーショップ&カフェがオープンしたのは今から3ヶ月前のこと。

と言ってもボクは一度もパリに行ったことがなく、果たしてパリの香りがどんなものなのか、ホントのところは知らないんだけど…。

でも向こうではカフェと花屋が一緒になったシャレた店がよく見られる…と、何かで読んだか聞いたかしたことがある。


今日もまたこの店にやって来た。少なくとも週に2回は足を運ぶが、ボクが注文するのはいつもブラックコーヒーだ。

この店には自家製のケーキやちょっとした料理ももちろんある。もしかしたらそのうち何か食べてみたい気持ちになるかも知れない。

この店が好きになったのは、完全ノー・スモーキングだから他所の店みたいにタバコの匂いや煙に邪魔されることなく、静かに大好きなコーヒーを飲みながら本や新聞が読めるから。ボクはずーっと前からこんなカフェを求めていた。

そして、この店の一番のお気に入りは、コーヒーをテーブルに運んでくれる彼女の“笑顔”だ。ボクが店に入って来た時の「こんにちわ」と迎えてくれる優しい声や「ハイ、どうぞ」とコーヒーを出してくれる仕草、カウンターの中で何か一生懸命料理している真剣な顔。そのどれにも正直なところボクはマイッてしまった。

それから何と言っても、「なんだか今日はあったかいネ」などという、あんまり芸のないボクの話しかけに応えてくれる時の、とっても自然な満面の笑み。こっちにまで微笑みが移ってしあわせな気分になる。

これはきっとボクだけじゃないかもネ。きっと誰もが微笑み、しあわせ気分になるんだろうナ。

心がほっこりあったまる。独り占めしたくてもそれは出来ない、ちょっとジェラシーのようなビターな気持ちちょっぴり…。

うん、なんかコーヒーに似ている。だからいつもボクは、一杯で二杯分楽しんでその店を出る。帰りがけには、必ず彼女に「じゃあまたね」を忘れない。

そう言えば彼女、コーヒーが飲めない…って言っていた。最近カフェ・オ・レならなんとか飲めるようになった…って。カフェで働いている以上コーヒーくらい飲めないと…って練習してるのかな。

まァ無理なんかしなくてもいいんだよ。おいしいコーヒーを飲んでるみんなのおいしそうな顔を見て、自然においしく飲めるようになれればそれで。なんたって、キミが淹れてくれるコーヒーとキミの笑顔はとってもおいしいんだから、みんなの顔を見ていればきっとわかるサ。

そう、コーヒーはその香りに乗せて、しあわせと笑顔を運ぶんだネ。ほんわかほんわか…。


              〜 Fin 〜



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晃介
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