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10,000メートルの空の旅

「それでは皆さん、10,000メートルの空の旅をお楽しみください。」
前方にいたクルーは深々と頭をさげた。ふと右側の窓の外を見るとトーイングカーでこれから離陸する機材(飛行機)を搭乗ゲートからプッシュし終えた職員も頭を下げて、全身で手を振っている。僕も人目を気にせず思いっきり手を振る。そんな事以前は絶対にしなかった、してももっと小ぶりで手を振るくらいだった。でも今は明らかに違う。涙が出そうになる。なぜだろう。

あたりまえとか慣れとか

2006年に航空会社で勤務を始めてもう何回飛行機に乗っただろう。国内は単身赴任先の都内と自宅のある大阪を月2回往復。本社がある、欧州の出張は多い時は年間で10〜12回程行った。欧州のとある国に駐在していた頃は平日は欧州中を常に出張していた。今ふと思い出したが、最もハードだったのは日曜から火曜までモスクワ、火曜の午後からロシアの新幹線「サップサン」に乗って、サンクト・ペテルブルグ入り、木曜にロンドンに向けて出発、ロンドンからワルシャワ、そしてとある国に帰宅。もし時間があったらおおよそどれくらいの距離と時差か是非Google MapかMapアプリでチェックしてみて欲しい。そう、飛行機に乗ることが日常だった。だから離陸前の機内アナウンスの前にはだいたいシートに吸い込まれるように眠りについていた。お決まりの機内アナウンスという概念があって、そんな慣れに驕りある自分がいた。

翼の折れた..

昨春からのCOVID-19の感染者数の増加に伴い、思うようなビジネスが展開出来ない。人とモノの移動があってこその航空業界、航空事業。日本と諸外国という二国間においての入国制限、緊急事態宣言、人の移動、制限、人が一箇所に集まって移動することが否定されていた時期がある意味今でも続いている。羽田の滑走路付近や少し遠いところに駐留されている数々の航空機。正直、こんな光景はこれまで観たことがなかった。まるで翼が折れた鳥を観るようだった。なんだろうこの気持ちは。悔しい。悲しい。待つしかない。でも航空会社だけでは出来ない要素が多い。なぜだろう。Nobody's faultなのに。

流れ星新幹線

そんな気持ちがずーっと続いてはいるのだが、前はずーっと向いている。立場もマネジメントだし、事業を根本から見直し、何が今起こっているのか、何を今必要としているのか、伝えてはきたつもりだ。一昨日だ、Twitterを見ていたらトレンドにこんな言葉があった。

#流れ星新幹線

動画があったので観た。「あ、やばい。」胸がじーんとした。なんて夢いっぱいの特別運行なんだろう。動画で新幹線がホームへ入線してくる時の大人と子供さんの表情がすべてを物語っていた。(そうだ、みんな本当は乗りたいんだ、でも乗れないんだ。でもせっかくならこうやって夢を届ける事は可能だ。)とても感動した。なんでもそうだが、企業体や組織で何か新しいことをやってのけるのは壮大な時間と手間と承認が必要だと思う。それをやってのけたJR九州と九州新幹線に拍手したい。素晴らしい。僕たちもこれまでのような機材(飛行機)の使い方とは違う、「何か」が出来ないだろうか。

みんなの生活を考えてみる

すっかり家にいる時間が長くなったことと思う。パターンというか1日の流れが大きく変わっているのかと思う。働き方や生活そのものが。巣篭もりの需要の中にコンテンツビジネスがあると思う。以前にNews Picksがclubhouseの大流行を番組で取り上げた際に日本のコンテンツ市場規模は2018年ベースで全体としては11兆8,558億円にものぼる。個人的に興味深いのはその内訳だ。想定はつくが最もシェアが高いのは映像系ソフトの58.8%(6兆9,693億円)、テキスト系ソフトの34.8%(4兆1,291億円)と音声系ソフトの6.4%(7,571億円)だ。ここで少し目を閉じてイメージして欲しい。そう、耳だけに神経を研ぎ澄まして「あの時」の事をイメージして欲しい。今、空港でゲート前にいる。これから搭乗をする、あの時。機内に搭乗した、クルーのアナウンスとまだまだ搭乗してくる中、自分の席を探す、あの時。シートベルトを締めて滑走路に飛行機が止まり、これからまさに離陸しようと急にエンジンの音が激しく聞こえる、あの時。離陸してあっという間に高度が上がり、旋回している、あの時。10,000メートル上空の空の上を飛行中でシートベルトサインが解除され、すっかりリラックスしてエンジンの音とクルーがあわただしく通路を行き交う、あの時。いろんな時がイメージできると思う。みんなはどの時の「」を今もっとも求めているだろうか。この音を通じての空の旅、もちろん視覚に訴える旅もいいが、寝る前の1時間だけの空の旅に求めることは何だろうか。これってもしかしたら可能性としてはありかもしれない。機内にいる体験はこれからはARやXRというツールを用いてこれからよりリアルな時間を購入できる可能性もある。(ARについては以下の以前の記事を是非ご覧いただきたい。)そうだ、このMicrosoft Meshの動画の最後にあるように、

"Here can be anywhere."

今いるここが、どこにでもなる時が今そこに来ようとしているのだ。

だから僕は流れ星新幹線は本当にすごいと思う。どうか1日だけとは言わずにまた運行して欲しいし、すべての日本の新幹線も同じような取り組みをして欲しい。僕たちは飛行機を用いて何か新しいことをやってのけたい。これから上司や本社の人と戦いたい。常識を変えるために。そして夢と未来を届けるために。新しいことや、時代や、時世、そしてどんな時であっても適用できる人類のバイタリティに乾杯したい。そして、何も考えずにこの新しい価値観やテクノロジーや進化に触れて、体験して、経験して欲しい。

もうすぐ羽田に着きそうだ、今ふと今年の夢が一つ出来た。家族を連れて東北に行きたい。一番行きたいところは仙台の「楽天生命パーク宮城」だ。そこで野球を観たい。というか、絶対に観たい。大船渡市や陸前高田市にも行きたい。

そうだ。いつも夢を見たり、描いたりしないといけない。それが僕の仕事でもあり、ずっと持ち続けないといけない気持ちだ。実は先週たくさん泣いた。悲しいことや当時の辛い思いを映像、言葉で伝えられ、いろんな人の思いが心の中を駆け巡った。本当に最近すぐ泣いてしまう。でもこの涙にはなんか深い訳がある気がする。みんながこれまでになかった事態の中、できることをやっている。それまでは当たり前だったことがとても偉大に思える、見える。尊い。何をするにしても人を見る時、これまでと違って見えてしまう。そこに音楽が入るとまた泣きそうになってしまう。でも明らかに言えることがひとつある。とても感受性が強くなった、とても人との出会い(noteやあらゆるSNS上での初めましてというオンラインと通常のオフラインで)がありがたく思える、前までは仕事だけといったことが多かったけど、今はひとりひとりのこれまでのこととかを聞いたり、話したくなる。何だっていい、やっぱり夢をもって、その夢を今年やって欲しい。まだまだ新しいことがあるだけで毎日感謝だ。そんな中、滑走路に無事到着し、クルーの到着時のアナウンスが聞こえてきた。「本日はご搭乗、誠にありがとうございました。本日の東京はとても過ごしやすい1日です。そして来月は1年で最も華やかな季節でもある、4月です。東京も昨日桜の開花宣言が発表されました。どうか皆様も素晴らしい春を迎えてください。」だめだ、また泣きそうになってきた。本日もお読み頂きありがとうございます。

追伸
冒頭のイラストはtaamiさんの作品。空のイメージがいいかと思ったが、これから旅立つ、春の意味合いも含めることができるかなと思い、使用させていただいた。クリエーターさんに感謝。ありがとうございます。


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