詩『苺』
イチゴがわたしの口の中に飛び込んでくる瞬間に
わたしはたしかにイチゴの声を聴いたのだ
純粋なまでに瑞々しく生を生き
その生きた生をわたしに捧げんとする瞬間までもに
イチゴは生の喜びに満ちていた
そこには不安も恐怖も一欠片たりとも存在せず
わたしの口の中にあってもなお、喜びと愛と好奇心に満ちた声が聴こえた
わたしはイチゴの生の何たるかを感じずにはいられなかった
わたしは、一粒一粒のイチゴを口に運ぶ度ごとに、
「いただきます」
とゆっくりと語りかけた
そして、一粒一粒のイチゴが、わたしの体内に入っていく度ごとに、
「ありがとうございました」
と言った
そのイチゴはいつまで生きていたのか
わたしの体内で今もなお生きているのか
今や、一粒一粒のイチゴがわたしを生かしているのだ
イチゴの生がわたしの生となり
それはやがてひとつとなりその境目はなくなってしまう
やがてそれは消化され排泄されてしまうものであるが
わたしの中に今も、イチゴの愛と希望に満ちたイノチを感じている
そしてわたしは、こんなちっぽけな一粒のイチゴのイノチによって、もう一度だけ、生にしがみつこうと思い直したのだ
命あるものの意思を生きることに向かわせたものが、愛ではなくてなんだというのだろうか
一粒のイチゴは、わたしにとって愛そのものだった
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