飢える
飢える
家賃三万円
2kの文化住宅の昼さがり
六畳間で
ダイとリュウが走りまわっている
となりの部屋では
製鉄工場に勤める夫
連日の夜勤でこけた頬を
鰐のように覗かせて眠っている
もうすぐ四歳と三歳になる
ダイとリュウが喧嘩しておっかけ会う
ぐっすり眠っているはずの夫が
ガッとはねおきて
うるさい !と一喝
二人のこどもはキョトンとして静かになる
四直三交替という馴染めぬカレンダーで
わたしたちの生活は明け暮れる
一班、二班、三班、日曜、祭日関係なく
二十誌時間フル回転の製鉄所の機械に
夫は早朝に 昼に 真夜中にかり出されて行く
一秒たりとも動きを止めない機械と
五分に取り組んで
油と汗で汚れた作業服のなかに
労働の激しさを実感する妻のおなかに
もうすぐ産まれる三人目の生命が躍動する
手狭なアパートはパンク寸前
日本住宅公団の
3LDKに応募する
家賃六万円
五年後は八万円
その他共益費三千円
夫の背につっ立つ
扶養家族四人
給料の1/3以上は家賃と化し
富めるもののために明け暮れる社会で
わたしたちは飢えをたくわえつづける
詩集「はえる」より (17)
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