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漬物屋さんに「ふすま」の季節がやってきた。知らず知らずに食べている漬物業界の「ふすま」とは、、、
ついにというか、やっとというか、寒い冬がやってきましたね。
冬は白菜やら大根やら、漬物とゆかりの深い野菜たちの出番。みなさんの食卓やスーパーでも、カブとか千枚漬けとか見かけると年末を感じられる方もおられるのではないでしょうか。
この時期ならでは、冬の風物詩としても有名な冬の寒さを活用しての大根作りも始まります。
そして、大根と並ぶもう1つの主役は白菜。冬は、白菜本来の甘さと旨みが最大限に引き出されたお漬けものが出てくるので、とても楽しみな時期なのです。
そんな冬のお漬物が賑わう中で、漬物屋さんの中ではこんな会話が交わされます。
「今年のふすまはどうだ?」
「ふすまの良いのが出てますよ~」
と。
わかります? ふすま、、、「ふすま」です。
私もこの業界に入った時に「ふすま?」と頭の中が「???」となりました。ふすまと言えば、こちらでしょう。
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でも、漬物業界の「ふすま」はこちら。
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え? ぬか漬けじゃない???
と思われるかもしれませんが、、、、正解です!
漬物業界でいう「ふすま」とは、小麦を製粉する際にできる実の外皮の部分で、タンパク質やミネラル、食物繊維などが豊富に含まれた食材のことをさします。
一般的に皆さんのご家庭でもぬか漬けをされる場合に使うのは米ぬかですよね。市販品でも米ぬかがほとんどだと思います。
糠(ぬか)は玄米を精白する際に出る、種子や胚芽が砕けて粉になったものです。糠の「康」は穀物の実が抜けた殻という意味で、米ぬかから「糠」の字ができたそうです。つまり、小麦の糠が「ふすま」なんです。
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「ふすま」の正体が分かったところで、「そういえば・・・」と思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
皆さんもおそらく日常で「ふすま」に触れているのです。
例えば、「ふすまパン」。スーパーやコンビニでも見かける「低糖質パン」ですね。主原料に、小麦ふすまを使用を使用しているもので、小麦粉と比べかなり低糖質で低カロリー。低糖質生活をしている人にもぴったりですね。
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さらに英語にしてみるとより身近です。
英語圏での呼び名は「bran(ブラン)」。
一気に馴染み深い感じがしませんか?
健康食品としてビスケットやシリアルなどに使用されていますよね。
薄力粉や強力粉などの小麦粉は、小麦粉粒の表皮「ふすま」を取り除いて精製されるので白い状態になります。 その一方で、ふすま(表皮)を挽いて作られる「ふすま粉」は、薄力粉などよりも茶色っぽいのが特徴です。
実は、ブラン(ふすま)の糖質量は小麦粉の1/7だそうです。
カロリーもぐっとおさえることができる食材ということに加え、不溶性食物繊維が豊富に含まれ、保水性が高く、体内で膨張する特性があります。
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「ブラン」と聞くと、体に良いというイメージがありますよね。私たちは知らず知らずのうちに、「ブラン」として「ふすま」を口にしているのです。
ちなみに日本で「ふすま」は、主に家畜の飼料として利用されてきました。また、米ぬかと同じように栄養分のある胚芽を含んでいるので、繊維質やミネラルが豊富に含まれており、健康食品としても利用されているようですよ。
デンプン、タンパク質、繊維質、ミネラル分が多く含まれておりバランスの良いぼかし肥料としてだったり、最近はふすまや米ぬかを畑に撒くと殺菌作用があることは経験的に知られてきています。これは土壌還元作用を利用した殺菌方法として農業にも使われてきているので、農業や畜産業の分野の方が「ふすま」は有名かもしれませんね。
さて、一気に洋風の雰囲気となった「ふすま」ですが、お漬物のお話です。
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「ふすま」は漬物に加えると素材の味を引き出すと言われているので、白菜やダイコンなどの漬物に使われることが多いのです。
天日干しした大根を、ふすまと塩、ウコンと一緒に漬けこんでいく大根のふすま漬け。白菜の間にふすまを塗り込むように漬けていく白菜のふすま漬け。近畿では滋賀の日野菜かぶのふくま漬けも美味しい冬の味です。
冬の野菜がもつ豊かな野菜そのものの味わいと、ふすまに含まれる栄養素。ふすま漬けは、美味しいはもちろん体も喜ぶお漬物です。
ぜひ、スーパーやデパ地下などのお漬物コーナーをのぞいてみてください。
「ふすま」が目にとまるはずですよ。