[AI絵本]えがお さきわうところ 3/x
糸口は、あっさりと見つかった。というか、すでに使っていた。画像生成のAIである。
その日、オレは挿絵用の「お花見」の絵をAIに描かせてみた。
すると思いのほか、良い感じの絵が出てきた。
これは当たり前のことではない。「美少女」を描かせてみて、AIはスゴイ! となるケースが多いと思うが、そんなふうに上手く行くケースは少ないのだ。
ところが、「桜並木」と打ち込むと、その一語だけで、すんなりとそれらしいものが出てきた。翌日、実際に桜並木の道を歩くことがなければ、不自然さに気づくこともなかったかもしれない。
不自然…… リアルの「桜並木」は、かなりかけ離れた光景だった。桜は同じでも人で大混雑していたからだ。人のいない満開の「桜並木」など、世界中探してもまずないだろう。
どうしてAIは人のいない「桜並木」を描いたのか? 何となく事情は察せられるが、憶測に過ぎないし煩雑にもなるので割愛する。重要なことは、AIが描きたがる人のいないシーンは、それこそオレの好みだということだ。
たとえば、多くの人は「テーマパーク」を好む。多くの人の好みに合わせて作られたのが「テーマパーク」だと云うべきかも知れない。しかし、それはオレの好みではない。社員旅行で行った際など、真っ先に人気のない場所を探したくらいだ。
当然、「テーマパーク」を模したメタバースも同じ。アクティブな体験ゾーンとしての自然空間はあるが(宇宙空間まである!)、ひとりで何もしないことを満喫する場所ではない。
ところが、画像生成のAIだと、特に注文をつけずとも人がない場所を描いてくれる。加えて、名所が描かれないことも、オレ的にはポイントが高かった。AIが名所を描かないのは偶然ではない。おそらく「肖像権」の問題で、フィルターがかかけられているのだと思う。
つまり、一般的な観光を仮想体験したい人には、画像生成のAIはほとんど役に立たないと思うのだが、その正反対のオレには、すべてが好都合に思えた。こうなると、出かけない理由はない。
あとは、思い出すだけだ。旅のやり方を……
つづく