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[AI画幻想]モランディ・ライフ
表題の「モランディ・ライフ」は、「Still Life(静物画)」を
もじったものです。モランディのアプローチは、静物画の中でも
かなり静的なほうだと思いますが、「死」を意識させるものではなく、
安らぎを求めるようなところがあり、
別の呼称をつかったほうがいいのではないかと。
もっとも、わたしのやったことは「モランディ・ゲーム」
「モランディ・プレー」ですけど~
Cover Storyは、末尾に
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Cover Story
朝から降りつづく雨…… 薄暗い部屋で疲れた身体を壁に持たせていると、古いアトリエにいるような気がしてきた。
実際にそんな場所に招かれたのは一度だけだが、生まれ育った場所には明治に出来た名門画塾があり、その佇まいには慣れ親しんできた。映画やドラマのロケに使えそうな(使われているかも知れない)、何か掻き立てられるような雰囲気があった。
もっとも、今、彷彿としているのは廃墟である。もはや誰一人残ってはいない。青年たちがしのぎを削っていたのは遠い昔のことだ。しかし、棚には石膏像、机の上にはいくつものボトルが置かれたままになっている。埃に覆われたそれらはモランディの絵さながらだ。
見ていると、それを少し動かしたくなった。埃のつきかたは絶妙なのだが位置が少し悪い。そこは修正する必要がある。むろん簡単ではない。モランディはそんな作業を何十年と続けたのだから。
ああ、しかしさぞ充実した時間だったろう。何十年とは云わないが、残りの人生、せめて雨の日くらいはそんなふうに過ごしたい。
と、いっぱしのことを考えたが、実際にやったことといえば、AIによる画像生成だ。空き瓶を拾ってくることすらやらなかった。だいいち安アパートには空き瓶を並べておく場所すらない。この部屋の「Still Life」は、オレだけでいっぱいいっぱいなのだ。
いつものことだが、オレの画像生成のやり方はAI任せ。最低限のワードしか打ち込まない。いわゆる「ガチャ戦法」である。「机の上に古びた瓶が置かれている。モランディの画風で描いてくれ」、それだけで生成してもらった。
結果がこれらの画像である。二時間ほど「ガチャ」を続けたので、百枚以上の画像が得られたが、その中から落ち着きの良いものを選んだ。
選び終わってから見返すと、モランディの画とは別物になっていた。モランディにかなり似た画像もあったのだが、オレの篩(ふる)いはそれらを残さなかった。ずっと、モランディに憧れていたつもりだったが、オレが夢見ていたのは彼の何だったのだろう。
ただ、気分としては悪くない。ふだんつきまとっているコンプレックスや不安は、どこへ行ったのか留守のようだ。何もないのに愉快だというのは、こういうことか。ああ、なんという穏やかさ~