ショート・コロ 其の一
「ショート」は短文の意。「コロ」は、石ころの「コロ」。石ころのような雑多なイメージを、いわくありげに語るコーナー~
刑事役
「キサマ、この画像をどうやって手に入れた?」
被疑者役
「散歩の途中で、テキトーに……」
刑事役
「いい加減なことをいうな! 陶芸家から被害届が出てるんだ。未発表の作品のスケッチがネットに上がっているとな」
被疑者役
「こ、この画像が、そうだと云うんですか?」
刑事役
「そうだ。キサマ、アトリエに忍び込んで盗撮しただろう!」
被疑者役
「まさか。なんなら、この画像のオリジナル写真をお見せしましょうか。そこに撮影日時や撮影の細かなデータがちゃんと記録されてますから」
刑事役
「当然だな。証拠として押収させてもらう」
被疑者役
「ち、ちょっと待ってください。その前に、その陶芸作家の作品を見せてくださいよ。ほんとうにそっくりなんですか?」
刑事役
「キサマにそんな権利などない! と云いたいところだが、それくらいのことはいいだろう。これだ」
被疑者役
「…………」
刑事役
「どうだ、そっくりだろう。観念しろ!」
被疑者役
「あの、これ、日付が一ヶ月前になってますが……」
刑事役
「それがどうかしたか?」
被疑者役
「わたしの画像のオリジナル写真は、三年前ですよ」
刑事役
「なに! そんなわけがないだろ!」
被疑者役
「ですから、撮影データを見てくださいよ」
刑事役
「うーーーむ。確かに、そうだが……。
いや、この写真、別物じゃないか。シルエットは似てるが、これはただの影の写真だ。キサマ、警察を愚弄しているのか!」
被疑者役
「この影を、画像の加工ソフトでアレンジするとこうなるんですよ」
刑事役
「なにっ!」
被疑者役
「なんなら、ここでやって見せましょうか? 十五分くらいで加工出来ますから……」
こうして被疑者は無事、容疑を晴らすことができました。
被疑者の写真のほうが先で、しかもそこに写っているのはオブジェではなく影だったのです。陶芸作家の作品とは何の関係もありませんでした。
ただ、どうして二つがそっくりだったのか?
時系列で考えれば、陶芸家のほうがネットにあった写真を真似たことになりますが、高名な陶芸家がそんなことをやるわけがなく、そこがナゾとして残りました。
わたし? わたしはその話をオカルトのブログで知りました。そのブログ主によると、人々が自分で発見したり考え出したと思っていることの幾分の一かは、宇宙のデータベースにアクセスして、そこから読み取っているのだそうです。今回の事件は、ですから、ひじょうに希(まれ)なケースですが、二人がたまたま同じデータにアクセスしたのではないかと。
大発明、大発見が、短期間のうちに数人によって成し遂げられるという例がままあるのは、そういうことなのだそうですよ。
ただ、今回の場合は、大発明ではなく、こんなヘンチクリンなものに、それが起こったというのが、ミステリーだそうです。案外、このガラクタのようなイメージに重大な秘密が隠されているのかもしれませんね!