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[ミステリー]ムンクの「叫び」[ReliveArt]

[ReliveArt]シリーズは、アーティストの活動を生成AIでなぞって、
その気持ちをほんのわずかでも追体験しようという企画。

※この記事の解釈は、定説とは違います

 今回、試みたのは作家ではなく「叫び」という作品、唯一点。
 ですが、見出し画像でおわかりのように、絵は似せてません。
 作品の「見た目」「深意」…、これまでは見た目のほうを軽く再現して
 満足していたのですが、今回は「深意」にフォーカスすることに。
 結果、謎解きのような構成になりました。画像は末尾に。

 ムンクの「叫び」という作品、「叫び」と題されているけれど、叫んでいませんよね。少なくとも大きな声は出てない。これは発見でも何でもなく、パロディなんかでも、あの絵は「唖然」「愕然」「呆然自失」の意味で使われていることが多いと思います。絵だけみれば、そう見える。

 では、どうしてムンクは「叫び」と題したのか?

 もし仮に「ショック!」という題だったら、どうでしょう?

 クスッ で終わりませんか? オモシロ作品になってしまう。ローカルな公募なら、ふざけるな! で落選してしまいそう。「叫び」と題したから、不朽の名作になったとは云いませんが、「叫び」という題が絵の「深意」に気づいてもらうための仕掛けだったのではないか。

 仕掛けに、ひっかかってみましょう。

「叫び」? 何があったの?
 解説を読むと、この時ふいに激しい幻聴に襲われた、と書いてある……。
 なるほど。あの両手は頭を抱えているわけではなく、両耳を塞いでいるのか… でも、幻聴だったら、耳を塞いでも関係ないよね……
 といか、幻聴なら叫んでも仕方がなくない? 誰かに駆けつけてもらっても、頼めることなんてないから……
 そういえば、大きく口を開いているけれど、声は出てないみたい。叫びたくなったけど、叫んでも仕方がないと気づいて、呆然としている?
 だったら、どうして「叫び」という題にしたのかしら。叫んでないのに「叫び」って、どういうこと?

 いかがでしょう? 作品の深意を読み取るモードに切り替わりましたね。

 ここで見る人は自分のことをふり返る。ものすごくつらかった時、ショッキングな出来事に見舞われた時、自分はどうだったろうか……。

 叫び声を上げた時というのは、そばに甘える人がいてくれた時ではなかったか?
 周囲に他人しかいない状況で、ものすごくつらいことになったら、とても叫んでなどいられません。「すいませんが、○○なので、救急車を呼んでもらえませんか?」でしょう。騒ぎ立てて、オカシナヤツダと思われれば、ムダに時間が流れるし、最悪、関わりたくないとばかりに逃げられてしまう。
 しかし、それとて救急で対応して貰える場合のこと。幻聴であれば、嵐が過ぎるのを待つしかありません(当時は薬もありませんでしたから)。

 だとすると、はじまりは「ひどい幻聴」だったかもしれないけれど、衝撃を受けたのは「孤独」のほうだったのでは? 誰も頼れない、誰にもわかってもらえない「孤独」。
 実際、この時、ムンクは友人と一緒だったそうですし、周囲には他の人たちもいたとか。ある意味、人がいない場所よりも、人がいるのにわかってもらえない方が、キツかったりしますから。

 ムンクは早くに特別な姉を病で亡くしています。作品(『The Sick Child』)に描かれているので皆さんご存知でしょう。すごくブルーな絵。
 ムンクって、絶望を早くから体験していて、もうこの世には、あれ以上の苦しみは存在しない、くらいの気分で生きていたと思うのです。
 しかし、この時、それ以上の衝撃を受けた。
 もちろん、幻聴のことではありません。幻聴はいかにつらくとも、時間が経てば収まると経験で知っていましたし、また所詮は感覚の苦しさ。姉を失った時の心の苦しみとは比較になりません。
 つまり、幻覚はきっかけであって、本当の苦しみは直後にやってきた。

 かけがえのない人を外で亡くした経験のある方なら、わかっていただけるかと思いますが、病院では死はさほど実感されません。ともかく早く家に連れて帰ってやりたい。家にさえ帰ったら、また日常が戻るような気がする。 死の実感がわいてくるのは葬儀が終わって、駆けつけてくれていた人たちが帰ってから。日常が戻ったのに、あの人だけがいない。そこで初めて亡くなったことが実感されてくる。本当のつらさ淋しさは、そこからはじまる。心のつらさとは、そういうこと

 そんな経験をしてきたムンクにとって、幻聴の苦しさは、最悪ではなかったんです。衝撃を受けるほどのものではなかった。 

 ムンクがこの時、愕然としたのは、他者にはわかってもらえない「孤独」を味わっている中で、

「死にゆく者の気持ち」に思い当たったからではないか

 姉を見送った時は確かにものすごくつらかった。これ以上の苦しみは無いと思った。

しかし「死にゆく者の気持ち」がわかっていたか?
全然、気づきもしなかった。

姉を苛んでいた「孤独」に手を差し伸べるどころか、
思いやることも出来なかった…

( うわぁぁぁぁ!!! )

嗚呼、姉に何と云って謝れば良いのか。
今となっては、どんな叫んでも姉には届かない……

それがおそらく、あの傑作の「(声なき)叫び!」

freeze…


※定説では、
「叫び」の意味は「自然の叫び」となっています。ムンクが叫びたくなったわけではなく、聞こえてきた幻聴の内容が「自然の叫び」だったと。原題もそうだったので、それがムンク自身の解釈でもあった。
 しかし、それはムンクが自分で意識したこと。
 この記事で書いたことが、ムンクの無意識になかったか?


[ReliveArt]シリーズ






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