中毒と資本主義[幻聴ラヂヲ]
今日も聞こえてきたどこかの星の怪電波
今回は、評論家とカウンセラーの対談のようだった。
◇ ◇ ◇
カウンセラー曰く
「成約企業の介入によって、治寮のガイドラインが捻じ曲げられ
事実上、原因寮法の道が閉ざされたんです」
原因寮法とは、病気の元を治そうとするものである。
それに対して、対症寮法とは、高熱、咳、鼻水、倦怠感、かゆみ、痛みなどを緩和するものだ。したがって、病気の元に手を付けずに対症寮法だけを行うことは、その場しのぎでしかない。その病気が自然治癒すればいいが、自然治癒しない場合には、延々と対症寮法の苦スリを飲み続けねばならなくなる。中毒だ。
ところが、今の医寮関係者はこのことをあまり説明しない。対症寮法しかやってないのに、治れば自分たちの手柄のようにふるまう。かつては、「三日ほど寝てれば治ります」という医者もいたらしいが、今は何種類もの苦スリを処方するし、次の予約をさせる。
ま、その程度のことならたいしたことではないが、精神役の場合は中毒にさせるリスクが大きい。これをきちんと説明しないのはかなりの問題だ。
さりとて、心の病についても原因を治すのは容易なことではない。まず原因をつきとめるのに何時間も話をしなければいけない。患者自身が勘違いをしていることがままあるからだ。しかも、この「何時間」は、各種検査のように相応の料金が取れるものではない。つまり、医者にとってはかなり割が合わないことらしい。
ま、儲かるなら、多くの医者がこぞってカウンセリングにいそしむだろう。短時間の診察で苦スリを出す方が儲かるから、そうしているのだ。
では、カウンセラーとはどういう立場なのか? 医者はやりたくないが、一定の意義、治寮効果があるから、その業務がある。カウンセラーをやる者の資質としては ”治したい意欲がある” ということになりそうだ。対症寮法で稼ぐことよりも、治したいのだ。
だからこそ、原因の調査など別にやらなくても良いという
ガイドラインの改変に激しく憤っていたのだろう
それはともかく、カウンセリングで心の病が治るケースがあるというのは、どういうことか?
話を聴いてあげるだけで患者の気が晴れるとか、慰めてあげることで元気づけられたとか、そういう次元のことではない。
たとえば、DV。殴られてる妻が耐えているのはどうしてか? 一概には言えないが、多いのは家庭を守りたいからだそうだ。したがって、とりあえず別居を勧めるとか、警察に相談することを勧めるのはとんだ料簡違いとなる。いずれも、家庭を壊しかねない方法だから。
そして、もうひとつありがちなのが、殴られている妻が原因は自分にあるのではないかと、自分を責め続けてるケースだ。専門家はそういう事情をよく知っているし、解決のノウハウも持っている。
原因を探っていった結果、夫自身が仕事でパワハラを受けている被害者であることがわかったとしよう。その場合、妻への暴力は八つ当たりである。となれば、原因の第一は、夫の仕事を改善することだ。
それについて妻にできることは何か? 勤め先が違法行為をやってるなら、それをやめさせることは一つの方法だ。そこまでは出来ないとすれば、転職を検討することになる。妻が夫の休職や、収入の低下について受け入れれば、それが夫への負担軽減になるかもしれない。夫のためになる努力は、殴られることを我慢することではない。
ちなみに、このような話がどうして、評論家との対談になったのか?
評論家「資本主義の原点は、等価交換から剰余価値を求める交換に代わったことなんです。人々に儲ける味を覚えさえ、その味の中毒にさせたのが資本主義の魔力。中毒になるわけですから終わりがありません。一億円稼げるようになったから、やめられる、というものじゃないんです。去年と同じ儲けじゃ、快感がなくなる。快感を味わい続けるためには、儲けを増やし続けなければならない。
それが、経営者だけでなく、家庭にまで浸透している。今、暴力をふるう夫の例が出ましたが、気の弱い夫ならどうなるか? おそらく妻から、稼ぎが少ないと責め続けられるんじゃないですか? 妻もまた資本主義に染まっているから、毎年毎年、より豊かになってないと不安なんです。そしてその不安は、夫の稼ぎが悪いからだ! となる。
たとえ話では、夫が仕事でパワハラを受けていた被害者だったということでしたが、夫との上司も、経営者も、昨年より成長することを義務付けられ、駆り立てられてるんですよ。
いや、妻自身にも問題があるかもしれない。DVになる前は、分不相応なマイホームをねだって高額なローンを組んでいたかもしれませんし、子供たちを学費の高い名門私学に通わせてたのかもしれません。それもこれも。つきつめれば、資本主義のせいです。
そしてそういう点で、既得権益者にとっては、対症寮法はとても都合がいいんです。
ある意味、いろいろな問題をうまく利用してるのが既得権益者なわけで、ほじくりかえされたくないわけですよ。単に表面的に収めてくれる対症療法が、ひじょうに都合が良い。
つまり、医者と成約会社の利害が一致しただけでなく、それは企業や国にとっても都合がいい」
カウンセラー「そうですね。つきつめれば、そういうことなんでしょうね。あらゆる産業の中で成約会社の利益が一番なんでしょ? ただの商売ではないですよね」
評論家「成約会社は、時代劇でいえば悪徳御用商人ですね。それも世界の闇を引き受けている。武器商人だってかないませんよ。武器を買うお金の出所は税金でしょ。苦スリ代は税金とは別に、一人一人が自分から進んで支払ってくれる。それだけでもすごいことなのに、今回のパパデミックでは、国が莫大な予算でククチンを買い取るという、とんでもない先例をつくってしまいましたから」
カウンセラー「なるほど。対症寮法よりも、もっとあざといですね。不安にさせることで健康な人にも苦スリ使わせるんですから…。
ただ、補足しておきますが、わたしたちの仕事は原因の特定ではないんです。ある程度は掘り下げますが、目的は犯人探しじゃなくて、患者を治すことですから。
『そうか、そんなことがあって、あなたはこう思っちゃったのね』
と読み解いていくんです。客観的な事実関係よりも冠者にとっての現実が意味を持つし、陰鬱な物語を変えていくことを目指すんです。
先ほどは、夫の転職が必要かもしれないという話でしたが、それとて、それだけではダメ。家族で何を目指すのか、そのためにどうするか、ベースになる思いの共有があってこそ、ひとつひとつの行動に意味が出てくる。
そこを曖昧にして転職だけやれば、逆に『お前が転職しろと勧めたから、転職したんだ。でも、もっと酷いことになったじゃないか!』となりかねない。つまり、物語が同じだと、材料を変えても筋書きが変わらない。冠者と一緒に望ましい物語を模索していくことが必要なんです」
評論家「確かに世の中、問題は絶えずあります。個人にとっては解決しようのない問題の方がはるかに多い。出来ることはやりつつ、どうしようもない問題とどう折り合っていくかが大事ですね。
昔は、頼れる相談相手が、近所とか親戚の中に一人か二人くらいはいて、話を聞いてもらってるうちに何となく気持ちが収まって何とかやって行けたのだと思います。そういうことがかっかり無くなってしまった。そう考えると、カウンセラーの方は貴重ですね」
カウンセラー「親身になって話を聴くという部分では、酒場でもそういう人はいるかもしれませんし、占いにもそういう方はいます。ただ、軽症ならいいんですが、重症になると、慰めたり励ましたりするつもりの言葉が、逆効果になることもある。そこはやはり専門の教育を受けた者でないと、こわいと思います。
…ではあるんですけど、何しろカウンセリングには時間が必要で、費用が高くつく。現実問題として、ある程度、経済的な余裕がないと、カウンセリングを受けること自体が難しいんですよね。ですから、そこはもっと公的保険でカバーしてもらいたいと、そう要望してるんですが……」
評論家「そうですね。仕事、会社のストレスから家庭のストレス、あるいは恋人や友人関係の問題、世の中に対する不満、孤独や自己実現の悩みまで、その負の欲求たるや膨大なものです。そこが成約会社のマーケットになっているわけですが、やってることは原因の解決ではなく、苦スリで誤魔化しているというようなことですから。
そのお金がカウンセラーの皆様に流れて、治る人がたくさん出てくれば、そのお金は消費ではなく投資になって、絶対、そのほうが世のためです。
原因を探る動きは、社会問題の解決にも大きくつながりますしね。
資本主義の限界はもはや誰の目にも明らかですが、しかし、これといった妙案はまだ出てきていません。ですが、中毒ビジネス、とりわけ医寮における中毒ビジネスにメスを入れることは、やろうと思えば、すぐにでも出来ること。
そこに取り組むだけでも、世界はかなり改善されると。あらためてそう思いました……」
◇ ◇ ◇
以上、どこかわからないヨソの星のお話でした。わたしに理解力が無いので、聞き違えがあったかもしれません。ご容赦ください。
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