見出し画像

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

先日noteに「今年は教育書だけでなく、ビジネス本、特に経営に関する本をたくさん読んで学びたい」と書きました。そこで、2か月ほど前に↓の本を読んだ関係で、「もしドラ」を読んでみたくなりました。

今更「もしドラ」について説明する必要はないかもしれませんが、未読の方のためにAMAZONからあらすじを引用しておきます。

公立高校野球部のマネージャーみなみは、ふとしたことでドラッカーの経営書『マネジメント』に出会います。はじめは難しさにとまどうのですが、野球部を強くするのにドラッカーが役立つことに気付きます。みなみと親友の夕紀、そして野球部の仲間たちが、ドラッカーの教えをもとに力を合わせて甲子園を目指す青春物語。家庭、学校、会社、NPO…ひとがあつまっているすべての組織で役立つ本。

実際読み始めたら2時間ほどで読み終えました。約10年ぶりくらいに読みましたが、やはりとても読みやすく、ドラッカーの『マネジメント』の要点がわかりやすく整理されており、学ぶべきことが多くありました。以下「もしドラ」に引用されている『マネジメント』の一節を引用させてもらい、感想を記したいと思います。

マネージャーの資質

人を管理する能力、議長役や面接の能力を学ぶことはできる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて人材開発に有効な方策を講ずることもできる。だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。真摯さである。

自分はもう15年以上もマネージャーという立場で働いていますが、同時にこれまで多くのマネージャーの下で働いてきました。その中で一緒に働いていてよかったと思える人達は皆真摯さを持ち合わせていました。彼らは仕事に対して真摯に臨んでいるというだけではなく、上司であろうが部下であろうが誰に対しても分け隔てなく対応することができる人たちでした。言い換えると「ぶれない強さ」を持っていた人たちだった気がします。

私は自分が今周りの人々にどう評価されているかということはわかりませんが、この「真摯さ」ということを常に忘れずに仕事をしようと心がけています。うまくいかないことも嫌なこともたくさんありますが、ぶれずに強く生きていきたいです。

企業の目的と機能

企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、そして二つだけの基本的な機能を持つ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。

私は企業ではなく学校で勤めているのですが、私立の学校なので「顧客の創造」というのは組織として大きなミッションです。

そして、手前味噌で大変恐縮なのですが、私の学校はまだ創設してから7年目の新しい学校なのですが、初年度から全国で屈指の受験生を集め、教育市場において注目される学校になりました。その背景にはマーケティングとイノベーションが存在します。

我々の学校は既存の学校がやっていない、時代のニーズに合った先進的、且つ世界標準の教育を喧伝し、「キャズム理論」で言うところのイノベーターとアーリーアダプターの獲得を目指し、成功しました。

画像1

中学受験マーケットでは母親が実権を握っていることが少なくありませんが、我々はむしろ社会の最前線で働く父親たちに自分たちの教育の魅力をアピールしました。なぜなら、受験生の父親たちは自分の会社の若者たちを見て既存の教育に対して疑問を抱く人が多く、社会に出ても通用する思考力やコミュニケーション能力などを涵養してくれる中高を探していたからです。

何の実績もない学校が一気に全国区になったのは、初期市場における「期待値」のおかげです。我々は今もその期待に応えるために日々教育活動に邁進しています。そしてそこには今でもマーケティングとイノベーションが存在しています。ステークホルダー(顧客)たちが求めているものに対して常にアンテナを高く張り、教育をアップデートさせてイノベーションを起こしていけるように努力をしています。

人は最大の資産

人のマネジメントとは、人の強みを発揮させることである。人は弱い。悲しいほどに弱い。問題を起こす。手続きや雑事を必要とする。人とは、費用であり、脅威である。しかし人は、これらのことのゆえに雇われるのではない。人が雇われるのは強みのゆえであり能力のゆえである。組織の目的は、人の強みを生産に結び付け、人の弱みを中和することにある。

これは当然と言えば当然なのですが、我々はとかく人のネガティブな面に目が行きがちです。ただ、組織を強くするためにはその人の弱点を克服させることも重要ですが、強みを見出し、その強みをさらに伸ばすことで組織をより強くしていかなくてはなりません。

これは生徒にも言えることです。この国ではとがった人間よりも丸い人間が求められる傾向にあり、例えば得意科目と苦手科目両方がある場合は得意科目をさらに伸ばすことよりも苦手科目を克服することに主眼が置かれることがほとんどです。私は生徒にも自分の子供にも得意なことを伸ばすような教育を心掛けていますが、同様に同僚や部下にも強みを引き出し、伸ばすようなマネジメントを心掛けたいと思います。

働きがい

働きがいを与えるには、仕事そのものに責任を持たせなければならない。そのためには、①生産的な仕事、②フィードバック情報、③継続学習が必要不可欠である。

マネージャーは人を動かすのが仕事です。部下に仕事を振るにしてもそれがやりがいを感じられないような仕事だったら、部下のモチベーションは下がり、成長もしません。本人の特性を見抜き、やりがいをもって臨めるような仕事を与え、その仕事に対して的確なフォードバックを与え、さらにはその人が継続的に学んでいけるような環境を作ること、それがマネージャーにとって必要なことだと私も思います。(それができているかと言ったら全然できていないと思うので、このことを改めて頭に刻んでおきたいです)

生産的な仕事

仕事を生産的なものにするには、四つのものが必要である。すなわち、
①分析である。仕事に必要な作業と手順と道具を知らなければならない。
②総合である。作業を集めプロセスとして編成しなければならない。
③管理である。仕事のプロセスの中には、方向づけ、質と量、基準と例外についての管理手段を組み込まなければならない。
④道具である。

私はどちらかというと直情的な人間で、これまでもパッションとアクションで成果を収めてきました。ただし、マネージャー職に就いてからは、物事を多角的、論理的に捉え、分析するように心がけています。分析して得たアイディアやプランを編成して管理するのはもちろんですが、④の道具も活用し、仕事の生産性を上げるように努めています。ここでいう道具というのはICTを指すのですが、様々なテクノロジーを駆使することで昔なら1時間かかった仕事を10分で終えたり、生産性を追求しながら日々過ごしています。

社会への貢献

マネジメントには、自らの組織をして社会に貢献させるうえで三つの役割がある。それら三つの役割は、異質ではあるが同じように重要である。
①自らの組織に特有の使命を果たす。マネジメントは、組織に特有の使命、すなわちそれぞれの目的を果たすために存在する。
②仕事を通じて働く人たちを動かす。現代社会においては、組織こそ、一人ひとりの人間にとって、生計の糧、社会的な地位、コミュニティとの絆を手にし、自己実現を図る手段である。当然働く人を生かすことが重要な意味を持つ。
③自らが社会に与える影響を処理するとともに、社会の問題の解決に貢献する役割がある。

企業の存在価値とは利益を出すことの他に社会へ貢献することが挙げられます。我々のような学校という組織は存在自体がすでに社会貢献だと思うのですが、社会貢献のあり方も無限大であり、私は日本の教育を変えることで社会に貢献したいと思っています。もちろんこれは数年でできるような目標ではなく、私が生きている間何十年もかけてやっていくlifelong goalです。

高度の基準の要求

あらゆる組織が、事なかれ主義の誘惑にさらされる。だが健全な組織とは、高度の基準の要求である。自己管理目標が必要とされるのも、高度な基準が必要だからである。
成果とは何かを理解しなければならない。成果とは百発百中のことではない。百発百中とは曲芸である。成果とは長期的なものである。すなわち、間違いや失敗をしない者を信用してはならないということである。それは、見せかけか、無難なこと、くだらないことにしか手を付けていない者である。成果とは打率である。弱みがないことを評価してはならない。そのようなことでは、意欲を失わせ、士気を損なう。人は優れているほど多く間違いを犯す。優れているほど新しいことを試みる。

「現状維持は敗北」というのが自分のモットーです。これまでも常に自分に高いハードルを課し、そのハードルを越えてきました。もちろんここに至るまでに数々の間違いや失敗を重ね、周りに迷惑をかけたこともあります。ただ失敗を恐れていては何も生み出せないことを理解しているので、失敗を恐れずにチャレンジを続けてきました。今後は組織をより強固なものにするために、誰もが失敗しながらでもチャレンジできる環境を作っていきたいと思います。

目標管理

マネージャーたるものは、上は社長から下は職長や事務主任にいたるまで、明確な目標を必要とする。目標がなければ混乱する。目標は自らの率いる部門があげるべき成果を明らかにしなければならない。他部門の目標達成の助けとなるべき貢献を明らかにしなければならない。

学校の難しいところは目標を数字で表せないところです。入学者数や大学進学実績を増やすというような目標も立てられなくはありませんが、教育的に本質的ではありません。だからといって目標がないまま活動を行うことは上に書いてある通り混乱を引き起こすだけなので、マネージャーがしっかりした目標を提示し、その上で生産的な仕事を部下たちにしてもらいたいと思います。

以上、「もしドラ」を読んで印象に残ったドラッカーの言葉を引用しながら、自分のマネジメントに対する想いを書かせていただきました。マネージャーとしては本当にまだまだ至らないところばかりで勉強しなければいけないことばかりなので、今回「もしドラ」を久しぶりに読んでかなりモチベがアップしました。これからも精進していきます。

今回も長文をお読みいただきありがとうございました。


この記事が参加している募集