
自文自賛
文章を書くことが好きだ。
自分が書いた文章も割と好きだ。
中高生のころにノートやPCへ書き散らしていた、二次創作やオリジナルの小説なんかがまだ取ってある。実家に帰ったときに見返すと、稚拙だし重度の中二病だし、当時ハマっていた作品がすぐに分かるしで恥ずかしくなる。でも、やっぱり自分が好きだと思う展開や描写がちゃんとあって、自分が好きな言葉が気持ちのいいリズムで並んでいる。オタク友達が「結局私の作品が、一番私の需要を満たしてくれる」と言っていたけれど、本当にそうだなと思った。
幸せなことに文章を仕事にできている今も、我ながらいい文章だなと思う瞬間がある。
例えば、記事を書いていて、序文やまとめの文章がなかなか思い浮かばないとき。以前の私はどんなふうに書いていたっけと思って、過去の記事を見返す。気持ちよく記事が終わっていて、思わずコピペしたくなる。しないけど。
例えば、テキストライターの仕事をしているとき。「とにかくおしゃれで知的な文章を大切に」と言われているから、自分の持つ語彙をフル稼働する。伝えたい内容を、おしゃれな文章で言い表せたときの気持ちよさ。私って天才なんじゃないかと思う。
とはいえ、こんな風に自文自賛できるのは調子のいいときだけで、大体はああでもないこうでもないと悩んでいるし、納品した後も不安で仕方ない。私は書くのが早い方じゃないから、編集さんやクライアントを待たせたうえにショボい文章だと思われたら目も当てられない。
つまり、自分の文章は好きだけど、誰かに見せるとなると自信がない。でも、そろそろ仕事納めだという今日、編集さんからフィードバックをもらった。それは「文章が素晴らしく整っている」というお褒めの言葉で。めちゃくちゃに嬉しかった。それだけを伝えてくれる短いフィードバックを、何回も読んで噛みしめた。記事の内容についてポジティブな感想をいただくこともあるけれど、不思議とそれ以上に嬉しい。
そういえば、ディレクター時代に原稿を褒められたときも嬉しすぎて泣いたことがある。「映像がなくても、読み物としてグングン読んじゃったよ」と、電話口でプロデューサーに言われた言葉をいまだに覚えている。会社には申し訳ないけれど、その瞬間に文章で食べていきたいという意思が固まった。
自分で書いた、自分が好きだと思う文章が、相手にも伝わると嬉しい。来年も、たくさんの文章を書きたいと思えた日だった。