人生で、人が頭を下げられる回数には上限があるのかもしれない。 私が勤めるオフィスビルのエントランスには警備員がいる。深い紺色の制服を着て、エレベーターホールの入…
おじさん二人だ。 子供たちで賑わう空き地で、おじさん二人がキャッチボールをしている。 ボブくらいの長さのロマンスグレーの髪を振り、男がボールを握った腕をぐんと後…
女店主のそばが売りの店らしかった。 老舗らしい古びた店構えと、シールや手書きの丸文字に彩られた真新しい立て看板がちぐはぐな感じがした。 店に入ると、店主らしき若…
とうま
2024年1月5日 19:09
人生で、人が頭を下げられる回数には上限があるのかもしれない。私が勤めるオフィスビルのエントランスには警備員がいる。深い紺色の制服を着て、エレベーターホールの入り口に立っているのだ。警備員は、どのフロアに勤める誰が通ろうと、必ず「お疲れ様です!」と言って頭を下げる。それも含めての仕事なのだろう。おや、と思うのはその挨拶を受けたサラリーマンのおじさんたちだ。彼らはどうにも挨拶を返さない
2023年11月13日 08:39
おじさん二人だ。子供たちで賑わう空き地で、おじさん二人がキャッチボールをしている。ボブくらいの長さのロマンスグレーの髪を振り、男がボールを握った腕をぐんと後ろにそらす。ぐるぐるとその肩にエネルギーが蓄えられていく。十分な時間をかけてたまったエネルギーは、おじさんのグレーのスウェットの腕を通って、茶色く日焼けた指先に送られる。指先が強く球を握る。腕がばねのように振られた。
2023年11月8日 14:32
女店主のそばが売りの店らしかった。老舗らしい古びた店構えと、シールや手書きの丸文字に彩られた真新しい立て看板がちぐはぐな感じがした。店に入ると、店主らしき若い女性が調理場から顔を出した。明るい色の今っぽい着物が、古い店内でやたら目立っていた。女店主に言われ軋む階段を登って2階に上がると、小柄な男性が一人で給仕をしていた。60代後半といったところだろう。席につき、声をかけると、片脚