キャッチボーラー
おじさん二人だ。
子供たちで賑わう空き地で、おじさん二人がキャッチボールをしている。
ボブくらいの長さのロマンスグレーの髪を振り、男がボールを握った腕をぐんと後ろにそらす。
ぐるぐるとその肩にエネルギーが蓄えられていく。
十分な時間をかけてたまったエネルギーは、おじさんのグレーのスウェットの腕を通って、茶色く日焼けた指先に送られる。
指先が強く球を握る。
腕がばねのように振られた。
ボールが手を離れた後も、おじさんは奇妙なフォームを保っている。
後ろにクロスしたぴっちりデニムの脚、少し前傾の姿勢、乱れたボブヘア、力が入り硬直した指先はボールの行先を指し示している。
ボールは、少し離れたところにしゃがみ込む、やはりおじさんのミットに吸い込まれた。
ぱしん、という軽い音を立てて、ボールがおじさんからおじさんの元へ。
受け取ったおじさんも、投げたおじさんも、一言も話さない。
無言のまま、ミットを持ったおじさんは立ち上がり、軽々とボールを投げ返すのだった。
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