突然ショートショート「強すぎる数え歌」/毎週ショートショートnote
彼は、明日は早いうちから家を出なければならないと思っていた。行列のできるお店の限定うどんを食べに行くために。
もっとも、この『早いうち』とは早朝などではない。
真夜中のことである。うどんを求めて行列に並ぶ客が多すぎるからだ。
そこで、彼はこの限定うどん争奪戦で勝利を掴む方法を考えた。
眠気が完全に無くなるように早寝して、絶対に起きられるように目覚まし時計を強力なものに買い替えることだった。
彼はこの日のために、強力な目覚まし時計を家電量販店で手に入れていた。
無機質な電子音ではなく、声で起こしてくれるというものだ。
アラームをセットし、これで安心とばかりに眠りにつく。
午前1時。静寂を切り裂くようにして、アラームが作動した。
「いぃ~ち!…にぃ~い!…さぁ~ん!…」
「ひっ!」
アラームは、男の声による絶叫気味の数え歌だった。
「う…強すぎる数え歌だ…ふぅ」
アラームを止めて安心した後、彼は午前7時まで起きなかった。
もう、手遅れであった。
(完)(412文字)
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