【TOLOPANの真髄の迫るvol.40】ハード系を焼くコンベクションオーブンUNOX
たまにはパンではなく、
パンを「焼く」ことを話したい。
今回はその前編。少しマニアックな話になる。
FMIからの依頼を受けたのが4年半前。
僕はその時初めてFMIがベーカリー用オーブンを持っていることを知った。それは、イタリアパドヴァ社の「ベーカーズトップマインドマップ」をもとにした自信作、UNOXという製品だった。
それから、UNOXと向き合い始めることになる。
導入にあたって、まず最初に他メーカーコンベクションオーブンとの比較テストを行った。重石をのせた紙を一つの天板に12枚ずつ置き、風の動きの強弱を見るものだった。そこから生地玉にUNOX内蔵の芯温計をさして糊化テストを行い、スチームとダンパーのタイミングを測った。生地の焼成段階では、平窯とコンベクションでの「熱の種類」「熱の効率」「熱の量(温度)」の違いを知り、UNOXでの熱コントロールで平窯と遜色ない状態を実現できるかを試した。どのフェーズにおいても、「UNOXにしかできないこと」の期待値を図っていた。
そのなかで、ハード系を焼くのにはUNOXが非常に良いという結論に辿り着いた。まずUNOXの特徴は「蓄熱板」「ファンが2つ」「蒸気量の調整が0%〜10%刻みで100%まで可能なこと」「ファンが停止すること」。そのおかげで石窯にもなり、平窯にもなり、コンベクションにもなるのだ。
ここでTOLOPANのカンパーニュのレシピを紹介したい。
UNOXの機能をフル活用させて作っている。
カンパーニュ 500g の参照レシピ
(606XBモデル、ホイロ終了芯温20°C前後)
(ステップ1)
260°C / 1分 / スチーム100% / 連続ファン1
(ステップ2)
175°C / 5分 / スチーム100% / パルスファン4
(ステップ3)
120°C / 6分 / スチーム100% / 連続ファン4
(ステップ4)
220°C / 12分 / スチーム20% / 連続ファン4
(ステップ5)
225°C / 4分 / スチーム40% / 連続ファン4
(ステップ6)
230°C / 8分 / スチーム40% / 連続ファン4
『ステップ1の解説』
予熱を一番高い260°Cにしている理由は、蓄熱板を熱くしスチーム100%を当てて細かい蒸気を充満させ、天板での窯入れ状態にするための伝導熱(底部と芯部)の確保が目的だ。対流で蒸気が気化しやすいため、風の弱さは固めず、結露と蒸気で皮張りを遅らせている。
『ステップ2の解説』
無風にして真っ直ぐ伸ばしクープを開かせていく。周りのシルバーと蓄熱板による熱量は落とさず、じっくり柔らかな熱を加えていき石窯状態を作る。
『ステップ3の解説』
風を強い「4」で回し、温度を落としながら蒸気をいれる。平釜の場合でいうところの床熱の効果、カマ伸び(オーブンスプリング)が目的だ。
『ステップ4の解説』
半分の6分間までは昇温が目的。それ以降は、生地が色付き出す(130°C〜150°C)メイラード反応の時間。実温を見ながら表面温度をスチーム量で調整し延ばしていく。
『ステップ5の解説』
スチーム量をさらに上げ、還元糖(ブドウ糖、果糖)が多いことからくるメイラード反応をさらに加速させる。
『ステップ6の解説』
最終段階では、スチーム40%の実温を見て60%〜80%にする場合もある。キャラメル化(160°C〜190°C)において、表面温度が190°Cをなるべく上回らないように引き延ばしながら炭化させずに焼き込む。
このように、UNOXはひとりで何役もこなしてくれる。
だからこそ僕はUNOXを相棒にしているのだ。
後編はさらなる説明と、「焼く」ことに焦点を当て詳しく説明していきたいと思う。
来週まで、またお楽しみに。
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