経営のイロハ、起業ビフォーアフター[08]
連載記事【08/34】
起業したい人は、ぜひ見てみてほしい、「生々しい起業家の半生」にみる経営のティップス。そこには、時代を超越した起業と、その後に関するティップスが存在します。30年眠ってきた日本、そろそろ目覚めてみませんか?
尾崎氏のお話し、連載8回目はキーパーソンとトークのはなしです。
今回はキーパーソンのお話です。キーパーソンって誰でしょう。
会社の社長さん?役員さん?規模が大きいとなかなかそこまで行けない事もありますよね。その下の決裁権をもつ幹部社員?ある意味会える可能性は高まりますが、その人たちのミッションがなにか、なににコミットしているのかによっては、あなたにとってのキーパーソンではない場合もあります。では誰がキーパーソンか………よくいませんか? ”偉い人”「○○さん、これどう思う?」って聞かれて、「そうですねー…」って言っている人。あるいは、商談に行ったときに、”偉い人”が「☆×□○◎なんですよ(日本語だけど伝わらない日本語)」って言ったあとに、「つまりですね、いま”偉い人”が言ったのはこういうことなんです…」。と言われて「あー、なるほど」とあなたが思ってしまう人。あるいは、打合せの最後のクロージングで、「では次回はこんな話をいついつまでにしませんか?わたしはこの件を他の部門にも意見を聞いておきます」としれっとしっかり次のアクションを意識させちゃってる人…この人はどうでしょうか^^ 名刺にも特に肩書とかはないし、まあ、部下なんだろうな、くらいに思ってしまうこの人、実はにこにこしながら”偉い人”にしっかり意思決定を促したり、意思決定をサポートするブレインだったりしませんか? キーパーソンの見極めも大事ですよね。そして、そこで話す話もやはり重要ですよね。堅実で手堅い話が刺さるのか、あるいはちょっと飛び気味の話が刺さるのか、だいたい相手との2-3回の会話のリレーで雰囲気はつかめますよね…今日はそんなコミュニケーションにまつわるお話になります。
INDEX
1. “儲かる”ことをやるのではなく、やりたいこと・得意なことを軸にする
2. 事業計画・フィジビリティスタディ(=FS)の重要性
3. 起業の手続や作業は、全部自分で出来る
4. 資本金・運転資金の集め方極意
5. 政府金融機関・銀行との付き合い方
6. ベンチャーキャピタルは期待するほど機能しない
7. クラウドファンディングは資金集めになるか ?
8. 最初は恰好を付けない、実質勝負できる武装が必要
9. 情報収集は、ありとあらゆる手を使う
10. 意味のある人材ネットワークを構築する
11. 企画立案の極意・方法
12. 製品アイデア発案の極意・方法
13. 文書作成と文書管理の極意・方法
14. 営業の極意・方法
15. キーパーソンを見つける
16.“それいいね”と言われる「刺さる話」を展開する
17. 中小企業との付き合い方・大企業との付き合い方
18. いわゆるサラリーマンが言うことは、契約して金が入るまで信じるな
(企業勤務者でもビジネスマンなら良い、この違いを見抜くのが重要)19. プロジェクトチームの創り方極意
20. 製作監理ではなく“一緒に編み出す”
21. 営業や技術の苦労は少し、大半は資金繰りの苦労
22. 出港した以上「空荷」では戻れない
23.“幸せ家族”の生活は少ないが、それでもかなりのことは出来る
24. 経営者は個人に全責任が掛かる、覚悟はあるか
25. 第三者の保証人にはなるな
26. 間違いがあれば全部負わなければならない
27. インチキ・不正は絶対しない
28. 節税しても脱税はしない
29. 競合との対応
30. 知的財産権(特許)
31. 世の中の要素を組み合わせ展開すれば、かなりのことが出来る
32. 所有する必要は無い、使用すればよい
33. 時間が経っても、本当の人間関係やネットワークは、いつまでも活きる
34. 必要充分で展開し、余剰は社会や次世代の若者に還元する
35. 事実と実質3
ではでは、いってみましょー!
15. キーパーソンを見つける
アプローチ総数のうち約20%で、キーパーソン(鍵を握る中心人物)らしき人物に巡り合う。面談が実現した場合、多くの場合に役職者が同席するが、この役職者が本当のキーパーソンであるのは約1/3で、アプロ―チ総数の都合6%位だ。
一見確率が低いようにみえるが、縁も所縁もない相手を探して約6%なら効率は良い方だ。多数の相手に大量販売する業種なら別だろうが、私のビジネスの場合は、クライアントは量より質だ。
初対面で、人柄・考え・感性・能力・信頼性などを計るのはなかなか難しいけど、結果的にキーパーソンだった場合を振り返ると、そこに“ピンッ”と来るものがある。“この人は優れた人だ”“この人は解り合える”と思う直感だ。世の中のいろんな場面でこういうケースは多いから、直観はかなり当っている。
相手からこちらを見ても同様なので、人間は常に感性を磨いておく必要がある。営業で、詰まらぬ世間話やお世辞を言うのは不要で、核心を突いた話題に多彩なバリエーションを塗して語ると、“ほう !”と関心を持って貰えるから、話が巧みよりも、そこへ導入する道程を重視した方が良い。
もちろん、ビジネスや課題だけではなく、趣味や好みに触れて行くと有効な場合がある。
あるオフィス(キーパーソンの個室)にクリムト(オーストリアの画家)の油絵「接吻」が飾ってあった。“おっ、クリムトの接吻ですね、好きな絵です”と言ったら、そこからトントンと話が進んでいった。
キーパーソンは、髪をきちんと整えて、清潔でシャキッとした服を着ていて(ブランドは関係ない)、靴が綺麗に磨いてある。物腰が穏やかで、目線は水平以上で眼がキラキラ輝いている。(偉そうなんじゃなくショボクレてないのだ)。
私は、自分の話をする以上に人の話を聞く方だが、キーパーソンも聞き上手で、こちらの話を引き出す。この過程で、情報収集をしているのと同時に観察されていると解釈した方が良い。
キーパーソンは、穏やかに説明調の話し方が多く居丈高(いたけだか:威圧的な態度)な人はゼロだ。世界企業の要職者でもそうだから、これはもう人格の問題だ。余計な装飾話は無いけど核心をズバッと突いた話が多く、営業を度外視しても大変勉強させて貰えた。
キーパーソンとの面談は、必要充分な資料を揃えて行く。あれもこれもはご迷惑なので、主要点をビジュアルに示した資料の方が役に立つ。それを逐一全部説明するのはナンセンスで、話の展開によって臨機応変に裏付けとして示す。
私がプレゼンテーションする案件は、どれも従来に無かった新しいモノ・コトなので、興味を持って貰えたら展開の話をする。裏付けを示す資料や写真も重要だし、新材料や新技術を使う場合は、現場の工場へ案内するのが極めて有効だ。工場案内の話をすると、本気で考えているキーパーソンは必ず応じる。
ある世界企業の開発統括部長を最先端工場へ案内したときは、帰りの新幹線の中で“早速見積ってよ”という話が出た。工場へ連絡し、統括部長が帰社した頃に、見積が着信したという。“アクションが早くてイイね”とお褒めに与った。
キーパーソンは、意思決定も実践も早いのが魅力だ。それ以降「新幹線的意思決定速度」と称している。受注できたのはもちろん、続いて数々の異分野製品の開発を発注頂いた。キーパーソンと仕事をした方がハッピーだ。
16. “それいいね” と言われる「刺さる話」を展開する
自分が勤めている会社やその製品が“嫌いだけど仕事だから関わっている”という人はいないと思う。特に工業製品の場合は、趣味や特技を持って接している人が多い。いっぽう、私がモータースポーツを通じ、エンジニア・デザイナー・開発会社など、インフラを活かしてプロジェクトチームを創って実施していることは、大きな強みになっている。
最高のクライアントとキーパーソンに恵まれて仕事をする場合、私はエンジニアではないけれど、クライアントの製品を解し、趣味としても精通しているとスムーズに展開する。モータースポーツの背景を持っていることも威力を発揮する。
飛込営業して開発の協議まで辿り着いたときに、ある新製品を開発したいという話になった。既製品の内容も理解できるし、構想中の新製品の可能性も理解できる。おまけに、モーターサイクルの異種の開発であるが、オフロードもオンロードも実際に乗ってるから話は早い。
“新製品だから、今まで無い新機構を盛込みたい”という話が出て、私は反射的に“4輪ダブルウィッシュボンをトライしましょう”と応えた。開発部長は、“何でだ”ときた。フォミュラレーシングカーやプロトタイプスポーツカーの構造が閃いたからだが、理由はアドリブで付け加えた。
従来のATC(All Terrain Cycle:3輪の全地形対応車)や出始めたばかりのATV(All Terrain Vehicle:4輪の全地形対応車)はどれも後輪リジッドアクスル(左右一体の固定車軸)だから、後輪もダブルウィッシュボン(独立サスペンションの形式)にすると、新しい乗り方や使い方を提供できるかも知れない。暫く考えていた開発部長は、“それイイね、やろう”と返ってきた。そのモノに通じ、使い方に通じ、楽しみに通じて、かつ訳解りの人はこうなるから素敵だ。
開発部長は、試作車が出来て試験走行のときも自分で乗って“これイイね”となった。モータースポーツ関連製品だけではない、一般工業製品の製品でも“これイイね、やろう”が幾つもある。そこに至る状況を一言で言うなら、「刺さる話」すなわち“グッとくる”話を展開することだ。
解り合える同士で、琴線(きんせん:人間の心の奥深くにある感じやすい心情・感動し共鳴する心情)に触れるコトやモノは、“いままでなかったコト・モノを新しく編み出す”原点だ。
優れた楽器で、感銘を受ける音色を奏でるのが「開発オーケストラ」の信条(しんじょう:堅く信じて守っている行動規範)だから、常日頃から自分を磨くようにして、より磨いている人と交流し、レベルを上げて行きたい。
まとめ
さてさて、今週はいかがだったでしょうか。
誰しも、その会社には、従業員がいて、役員がいて、社長がいて…これは公官庁も社団法人もNPO同じです、そして、その組織に入る理由があります。
そしてその理由は、その分野のことが入社前から好きだった人もおおいはずです、あるいは入社後に興味を持った人達だと思います。みんな一人一人の意志を持つ人間だから、自分が好きな事で起業したあなたと分かり合える事も多いかもしれませんね、そんななかで話が分かる人、刺さる話はなに?というのを見極めながらビジネスを進めていくのはとても大事ですよね。
次回は
17. 中小企業との付き合い方・大企業との付き合い方
18. いわゆるサラリーマンが言うことは、契約して金が入るまで信じるな
(企業勤務者でもビジネスマンなら良い、この違いを見抜くのが重要)
です。
多分18は、起業家ではなく、むしろサラリーマンが読むべきです^^
ついつい陥りがち…私は企業の社員でありサラリーをもらっています、そして副業で会社代表をやっていますので、ある意味両方の意識がありますのでよくわかります。これはサラリーマンが商談時、相手にどうみられているのか知るのにも役に立ちますし、日ごろの働き方と、今どきでいえば、自分自身のパーパスに関係する話かなと思います。そんなこんなで、ぜひ次も楽しんでいただけたらと思います。
それでは、この話面白かったな、とか共感したな、って思ったら
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