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東京都庭園美術館に行ってみた

港区白金に東京都庭園美術館がある。

旧朝香宮邸を活用し、1983年に開館したらしい。建物自体もアール・デコ建築様式で芸術的な価値が高いという。

先日、はじめて庭園美術館に行き、「そこに光が降りてくる 青木野枝/三嶋りつ惠」の展覧会を見てきた。

https://www.teien-art-museum.ne.jp/wp-content/uploads/2024/07/e-flyer_F.pdf

土曜の昼ごろに行ってきたのだが、チケット売り場に行列ができていた。

整理員の人に「事前にオンラインで予約してますか?」と言われた。やっていなかったので素直に最後尾に並んだ。

待っている間にオンラインでもチケットが買えたので、整理員さんに伝えると「じゃあ、どうぞ、先にお入りください」と行列から抜け出して入場できた。

「皆さん、並んでる間に、オンラインチケット買ったほうが早いですよ〜」

と『イカゲーム』のソン・ギフンさんのようにヒントを教えたくなったが、自分がそこまで、おせっかいキャラではないことに気づいた。それに、これはイカゲームではない。みんな、それぞれのペースで、それぞれの呼吸で、アートを楽しみにきているだけなのだ。

そして、展覧会を見た。先に一言だけ言わせてほしい。

「これは、マジで良かった・・・・」


今週末、2月16日(日)までやってるから、ちょっとでも興味ある方は是非おすすめしたい。

正直、僕自身、美術に関しては、ガラス工芸的なものや鉄器的なものより、絵画が好きなタイプだった。ゴッホに惹かれ、マティスに惹かれ、モネ展の最終日に駆け込もうとする典型的日本人であった。

しかし、この展示に驚いたのは、旧朝香宮邸という建築を活かして、この建物のためだけに用意されたような展示構成になっていたということだ。

しかも嬉しいことに写真撮影や、人の写り込みを気にしつつSNS投稿もOKだという。(展覧会によってOKでないものもある)

展示されている作品のエネルギーがすごかった。

なんじゃこりゃ・・・。

いままで見てきたガラスの概念を超えてくるようなものばかりだ。ガラスってこんなにカッコ良かったっけ・・・。

誰かのフィルタや検閲を通すこともなく、忖度するでもなく、かといって過度な承認欲求を感じさせることもなく、作家自身の思うままを純度100%のエネルギーで力強くカタチにしたような作品ばかりであった。

上の写真だって、この照明器具があってこそ、成立するような抽象彫刻が力強く立ち上がっている。

こんなふうに、1つ1つの部屋のコンセプトを作家さん自身が自分なりに解釈し、そこに溶け込むような作品が数多く制作され、展示されているように思えた。

作品が先だったのか、建物が先だったのか。

そんなことを考えながら各部屋を巡るのが楽しかった。そして作品を飾っている土台も、反射するような素材のものが多かった。

展覧会のインタビュービデオの中で、三嶋さんはこんなことを語っている。

「日本人は反射するものを見て『綺麗だね』と言う。
 池に反射するものを見て『美しい』と言う。
 詩や俳句でもなんでもそうだけど、直接的じゃない。
 太陽を見ても『綺麗』とはあまり言わない。
 太陽の光を反射して光る月を見て『綺麗』と言う」 

引用元:https://youtu.be/j84Xu5roI18?si=jCK-nWIfa1nT2sEc

なるほど、たしかに言われてみれば、日本人には「間接」の美学があるのだなと思った。

僕はわりと直接的な表現が多い。たとえば、今回のnoteのタイトルとサムネイルをとってみても、あまりに直接的で何のひねりもない。

では、もし、間接の美学に挑むとしたら、どんなタイトルとサムネイルにしようか。

たとえば・・

うん、悪くない。

しかし「迷宮」と言ってしまうと、展覧会の順路図を作ってくれた人に申し訳ない。実際、ものすごく分かりやすかった。左手にはApple Watchをしているから時を忘れることもない。

ならば、こんなのはどうだろう。

うん、こっちの方がいいな。今からでもサムネとタイトルをこっちに変えようかな。

しかし、静謐という割には、あまりに人が多すぎて賑わいまくっていたな。それに何の記憶の扉も開いていない。嘘はいけない。正直でありたい。また別の機会に挑もう。

この展覧会自体も素晴らしいと思ったが、この展覧会にきている来場者の人たちの雰囲気も好きだなと思った。ここに来る人とは仲良くなれそうだ。

一人ひとりに「やぁ、元気かい?」と声をかけたくなったが、自分が『ワイルド・スピード』のローマン・ピアースのような陽キャではないことに気づいてやめた。

そして美術館を出た後、西洋の庭園と、日本の庭園がそれぞれある雰囲気も良かった。

思えば「迷宮」は混沌とした現実社会のほうにあるわけで、自分の「時」を取り戻したくなったら、またここにふらりと訪れたいと思った。


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宇都宮秀男
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