【全訳】 The Airbnbs
ポール・グレアム(Paul Graham)が執筆したエッセー「The Airbnbs」の日本語訳になります。
2020年12月10日
Airbnb の IPO を祝福し、未来の創業者を手助けするために、Airbnb の何が特別だったのかを説明することが役に立つかもしれないと思った。
Airbnb 創業者たちに関して特別だったのは、彼らがいかに真面目だったかである。彼らは中途半端なことをしなかったし、私たちは彼らの真面目さを面接の中でも感じられることができた。スタートアップを面接した後、私たちは何をすべきか分からず、そのスタートアップについて議論することがよくある。お互いを見合って笑うだけのときもある。Airbnb 創業者たちの面接はそういったものだった。私たちは Airbnb のアイデアがそれほど好きでもなかった。当時の段階ではユーザー数も好きではなかった。Airbnb には成長がなかったのだ。だが、創業者たちはエネルギーに満ち溢れているように思えたので、彼らを好きにならないことは不可能だった。
あの第一印象は誤解を招くようなものではなかった。バッチ期間中、ブライアン・チェスキーはアニメのキャラクターみたいにエネルギーの竜巻のように見えたので、彼のニックネームは「タズマニアン・デビル」だった。3人全員がそんな感じだった。YC 期間中に Airbnb 創業者たち以上に一生懸命取り組んだ人はいなかった。あなたが Airbnb 創業者たちと話をすると、彼らはメモを取っていた。もしあなたがオフィスアワー中にアイデアを Airbnb 創業者に提案したら、あなたが次に彼らと話をするときには、そのアイデアを実行しただけでなく、2つの新しいアイデアを実行していた。バッチ期間中、私はマイケル・アリントンに次のようなメールを書いた。「Airbnb はおそらく私たちが出資したスタートアップの中でベストな態度を取っていた」
Airbnb は今でもそのようだ。ジェシカと私は2018年夏にブライアンと3人だけで夕食を食べた。この時点で、会社は10歳だ。ブライアンは Airbnb ができそうな新しいことに関するアイデアについてメモを取っていた。
私たちが最初にブライアン、ジョー、ネイトに会ったときに気づかなかったことは、Airbnb が死にかけていたことだった。一年間会社に従事して全く成長しなかったので、創業者たちは最後のワンショットを与えることに同意していたのである。彼らはこのYコンビネーターとかいうものをやってみて、もし会社がそれでも軌道に乗らなければあきらめることにしていたのだ。
普通の人なら既にあきらめていただろう。Airbnb 創業者たちはクレジットカードで会社に出資し続けていた。彼らには限度額まで使ったクレジットカードでいっぱいのバインダーがあった。投資家はアイデアをあまり高く評価していなかった。カフェで会った一人の投資家は自分たちとの会議中に出ていった。Airbnb 創業者たちは彼がトイレに行ったのだと思ったが、彼は決して戻って来なかった。「投資家はスムージーさえ飲み終えていなかったよ」とブライアンは言っていた。ところで、2008年後半はここ数十年で最悪の不況だった。株式市場は自由落下状態で、その後4ヶ月間は底を打とうとしなかった。
なぜ Airbnb 創業者たちはあきらめなかったのか? これは質問するのに役立つ質問である。人びとは物質のように極端な条件下で本質を明らかにする。明らかなことの一つは、Airbnb 創業者たちがお金のためだけにこれをやっていなかったということである。お金を稼ぐスキームとして、Airbnb はかなりお粗末なものだった。一年間の仕事とその仕事を表すことができるものは、限度額まで使ったクレジットカードでいっぱいのバインダーだった。では、なぜ Airbnb 創業者たちはそれでもこのスタートアップに取り組んでいたのか? それは、最初のホストとしての経験があったからだ。
あるデザイン会議の期間中に床に置かれたエアベッドを貸し出すことを初めて試みたとき、 Airbnb 創業者たちが望んでいたのはその月の家賃を支払うのに十分なお金を稼ぐことだけだった。だが、驚くべきことが起こった。自分たちの家に滞在する最初の3人のゲストを迎えることが楽しかったのだ。そして、ゲストたちもそのことを楽しんでいた。Airbnb 創業者たちもゲストもある意味ではやむを得なかったからそうしていたのだが、全員が素晴らしい経験をした。ここには明らかに何か新しいものがあった。ホストにとっては文字通り目と鼻の先にあった「お金を稼ぐ新たな方法」であり、ゲストにとってはホテルよりも多くの点で優れた「旅をする新しい方法」である。
この経験が Airbnb 創業者たちがあきらめなかった理由である。彼らは自分たちが何かを発見したことを知っていた。未来の片鱗を見ていたので、それを手放すことができなかったのだ。
Airbnb 創業者たちは、現在「Airbnb」と呼ばれるものに滞在すれば、人びとがこれは未来だと理解してくれることも分かっていた。だが、人びとが Airbnb を試した場合にのみで、実際には Aitbnb を試していなかった。「成長し始めるようにすること」がYコンビネーター期間中の問題だった。
YC 期間中の Airbnb のゴールは、私たちが「ラーメン収益」と呼んでいるものに到達することだった。ラーメン収益とは、創業者がラーメンを常食としていたら、会社が創業者の生活費を払えるくらい十分にお金を稼ぐことである。ラーメン収益は明らかにスタートアップの最終ゴールではないが、途上で最も重要な閾値である。なぜなら、これはあなたが飛行しているポイントであるからだ。これはあなたがもはや存続し続けるために投資家の許可を必要としなくなるポイントなのだ。Airbnb 創業者たちの場合、ラーメン収益は月4000ドルで、家賃3500ドル、食費500ドルだった。彼らはこのゴールをアパートのバスルームにある鏡に貼った。
Airbnb のようなもので成長し始める方法は、市場の最もホットな部分に集中することである。もしあなたがそこから成長し始めることができれば、成長は他の部分にも広がっていくだろう。私が Airbnb 創業者たちに最も需要がある場所を聞くと、彼らは検索から「ニューヨーク」だということを知った。なので、彼らはニューヨークに集中した。彼らはホストを訪問したり、リスティングをより魅力的なものにする手助けをしたりするために、ニューヨークへ直接行った。この中で重要な部分は、よりよい写真だった。だから、ジョーとブライアンはプロフェッショナルなカメラを借りて、ホストの家そのものの写真を撮った。
これはリスティングをよりよくするだけではなかった。ホストについても教えてくれた。Airbnb 創業者たちが最初のニューヨーク旅行から戻ったとき、私は彼らを驚かせたホストに関する気づきを聞き、「一番の驚きは自分たちが経験したのと同じ境遇にいるホストの多さである」と彼らは言った。ホストが家賃を支払うためにお金を必要としていたのだ。覚えての通り、ここ数十年で最悪の不況で、その不況は最初にニューヨークを襲っていた。人びとが Airbnb を必要としていることを感じるのは、間違いなく Airbnb 創業者たちの使命感を高めた。
Yコンビネーターに入って約3週間の2009年1月下旬、Airbnb 創業者たちの努力は結果を見せ始め、数字が少しずつ増えていった。でも、これが成長なのか単なるランダムな変動なのかどうかをはっきりと言うのは難しかった。2月までには、これが本当の成長だったことが明らかだった。彼らは2月の第一週に460ドル、第二週に897ドル、第三週に1428ドルの手数料を稼いでいた。これは彼らが飛行しているということだった。2月22日、ブライアンはラーメン収益状態であることを知らせたり、過去3週間の数字を伝えたりするメールを私に送ってきた。
「私は君たちがもう来週のために何を準備したのか分かっていると想定しているよ」と私は返信した。
ブライアンの返信は7つの単語だった。「We are not going to slow down.」
Credit: Image from Airbnb, Inc.
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