フランスにある、東京23区2個分の汚染地帯に行く
完成だ…
私はNotionで作られたカレンダーを見つめて完璧な旅行計画に惚れ惚れとしていました。
「ねぇねぇ、出来たよ旅行計画。コレ見てよ」
妻を呼んで自慢気に予定表を見せると、ヨーロッパ旅行でウキウキしている妻の顔が段々と歪んでいるのがわかりました。まぁそうだろうな。
メルヘンな楽しい旅行じゃないもの。
妻よ。俺と結婚したんだから諦めてくれ。
俺はどうしても第一次世界大戦で人が住めないほど荒廃した、
フランスの街…あのヴェルダンに行きたいんだよ。
欧州のメジャーな観光地は大体行き尽くした人には、
刺さる旅のプランを提案できるかもしれません。
気になる人は是非目次をどうぞ。
100年経っても復興しない戦場への旅
ヴェルダン…その土地の名前を知っている人はおそらくかなりの歴史好きかまたはBF1をプレイしたユーザーでしょう。
遡ること約100年、この土地は第一次世界大戦の激戦地となっていました。日本人にとって「戦争」といえば第二次世界大戦ですが、ヨーロッパ人にとっては第一次世界大戦も魂に刻まれる地獄でした。
なんせ死者の数が段違いです。
おおよそ当時のドイツでは男性労働人口の15%が戦死し、
フランスでは10%が死にました。
もし現代の日本で男性労働人口の10%が戦死したとすれば
370万人が死ぬことになります。
あの未曾有の大震災と言われた福島の地震での死者が1.5万人です。
そう考えるとフランス社会に与えた影響がどれだけ大きなものだったかわかるでしょう。
戦後100年を過ぎ、既に従軍者は皆全て亡くなったので、どうやらこの戦争も「歴史」担ったようです。そのため、ここ最近第一次世界大戦を舞台にしたゲームや新しい映画が作られることが増えていると感じます。
名作小説「西部戦線異状なし」のNetflix映画版。
英雄になることを憧れる青年が地獄の戦場で徐々に人間性を失っていく物語
若者たちは塹壕を掘り、雨が溜まった泥の中足を突っ込み、何年間も耐え続けました。塹壕の30mほど先には敵軍が隠れているのです。このジリジリと塹壕で戦い続ける戦争というのが第一世界大戦の特徴と言ってもいいでしょう。
そして、その激戦地の一つが「肉挽器」と呼ばれたヴェルダンです。
人気観光地は血塗られた戦場だった
ちなみに、このヴェルダンがある地域、ロレーヌ地方は今では豊かな観光地です。中でもナンシーって街は美術の一派がいたことで有名だったりします。それが上の写真です。きれいですね。でも今回は行きません。
なぜ優雅なナンシーを放っておいて、ヴェルダンに行くのか。
なぜならこのヴェルダンには日本人が殆ど訪れてないからですよ!
信じられますか?
日本語の情報で死ぬ気で探してもヴェルダンを訪れた旅行記を残しているのが下記のブログしかないんですよ?
https://oldbattlefield.web.fc2.com/19160221_Verdun.html
あの地獄と言われて今でも人が住めない地域があるヴェルダンにもの好きがほとんど行っていないなんて信じられません!だから私が行くことにしたのです。
まさに隠されたフランスの一部です。美しい街並みの裏では血塗られた歴史も残されている。そういう裏の部分を知りたくなってしまいました。じゃあ誰が行く?私が行こう!ってわけです。
ヴェルダンの話に戻りましょう。この街で行われた「ヴェルダンの戦い」がどうして第一次世界大戦の中でも悲惨な戦いだったかというと、その死者の数が尋常じゃないからです。
10ヶ月間の戦いでフランス、ドイツ両者の死者はなんと70万人。島根県の人口が消えるレベルでした。これは戦いの目標が土地の占拠ではなく、流血を増やすためにあったとされます。相手の兵士を殺し尽くして戦う気力をそごうっていう戦略ですね。
その結果信じられない数の砲弾がヴェルダンの地域には打ち込まれ、土地は文字通り焼け野原になりました。下の写真は有名なヴェルダンの戦場の一枚。もはや自然なんてものは存在しなかったんじゃないかと錯覚するくらい消え去っています。
そして生まれた、「誰も住めない土地」
第一次世界大戦後、フランスとドイツの国境沿い、そしてベルギーとフランスの国境沿いには荒涼とした大地に変貌しました。
砲弾で穴だらけになった地形に、草一本生えない地面。大量の砲弾が打ち込まれたことによって大地は大量の鉛とヒ素を吸収し、二度と生活していけない土地に変わった。
不発弾もそこら中にあることからとても住めない地域として、これらの場所は現在「Zone Rouge(レッドゾーン)」として立ち入り禁止区域に設定されています。
その広さなんと1200平方キロメートル、つまり東京23区2つ分くらいの大きさになります。
信じられますか?100年前の戦争の結果まだ帰れない広大な土地が観光で人気のフランスに広がっているのです。歴史に気がつくと見えていたフランスとは全く別の顔が見えてくると思います。
そして今回はそれを知るだけではなく、実際に行って、見て、感じてみたいのです。
旅行を楽しむためにはやっぱり下準備だよね
旅行っていろんな楽しみがあると思うのですが、私はこの様に、しっかりテーマを決めて下準備をするともっと旅が面白くなると思っています。
私の場合、大抵そのテーマが変なものなのですが、統一的にあるのはその土地のステレオタイプと異なる何かを探してその場所に行くことかと思います。
だって、信じられますか?あのオシャレ国家フランスではかつて大量の死者で溢れていたんですよ?そして今でも帰れない死の土地があるだなんて、第二外国語でフランス語選んだ大学生が想像なんてしないでしょう??
でも、もし下準備をしていなければヴェルダンにたまたまたどり着いても、その土地はただのフランスの田舎町でしかないでしょう。
だからこそ日本で売ってる欧州パッケージツアーのほとんどは見てわかるスゴイところか有名な場所が多いのです。何も下準備しなくても満足出来ますし、自慢できますからね。
しかし、情報を仕入れればヴェルダンは興味深い観光地です。そしておそらくほとんどの日本人が行かない場所です。そう思うと旅行の下準備こそ旅行の醍醐味だと思わないですか?
さて、今後もツアーの下準備を進めて行こうと思いますが変な土地があれば是非こちらでも紹介しようと思います。それでは!