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「利他学」(小田亮、新潮社、2011年)P123-より 人間は誰に対して同情するのか? ここで紹介する分析で用いられたのは、場面想定法である。実際に参加者がなんらかのコストを払うというかたちで他者への援助行動を調べた研究も過去にあるが、この分析では架空の場面を想定してもらい、そこでどのような選択をするのかという質問をした。 具体的には前節の冒頭で考えてもらったような場面を想定し、真面目で偶然失敗したA君、真面目だが自分のせいで失敗したB君、不真面目で偶然失敗したC君、不
「利他学」(小田亮、新潮社、2011年)P119ー123より 利他行動と感情 私たちが互恵的利他行動(あとで見返りがあると期待されるために、ある個体が他の個体の利益になる行為を即座の見返り無しでとる利他的行動の一種)への適応としてもっている仕組みは、相手の利他性を検知したり、非利他的な人を特に記憶していたりというだけではない。実は、人間がもつ豊かな感情もまた、互恵的利他行動への適応ではないかという説があるのだ。 人間の感情には、怒りや驚きなど、他の動物と共通したものがい
「利他学」(小田亮、新潮社、2011年)P19-21から要約 「仕組み」と「機能」の関係「仕組み」についての問いと「機能」についての問いは別々のものだと述べたが、実はこの二つは無関係なものではない。 道具を例にとって考えてみよう。例えばハサミだ。一般的なハサミがどういう「仕組み」になっているかというと、二つの刃が交叉するように固定されていて、反対側には穴があけられている。なぜこんな形ちかといえば、穴の部分に指を入れて刃を操作し、紙などを二つの刃で挟み込んで切断するためで
「利他学」(小田亮、新潮社、2011年)P16-18から要約 四つの「なぜ」 なぜ、人間は他人に対して親切にするのだろうか。人間に限らず、動物一般の行動について、「なぜ」そんなことをするのだろう、ということを考えるときには、四つの異なる考え方がある。これは、動物行動学の創始者の一人であり、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞したニコ・ティンバーゲンが提唱したものだ。 四つの「なぜ」とは ①その行動が起こる仕組みは何なのだろうか。 ②その行動にはどんな機能があるのだろ