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TOKYOちゃんの短編小説

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「一年限りの結婚」(下) 小説

「一年限りの結婚」(下) 小説

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休憩室の自販機に100円を入れ私が
選んだのはつぶ入りコーンスープ。
真冬に自販機といえばこれだ。

点滴を引きずっている右手は使えない
ので左手を自販機に入れ取り出した。
熱い缶を持ってお婆さんのふたつ隣の
真ん中あたりのベンチに座った。
たった今開けたばかりのコーンスープが
口をつけたら想像よりもぬるくて残念に
思った。

ふと向かいに座るお婆さんと目が合った
が気まずいのでスマホに

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「一年限りの結婚」(上) 小説

「一年限りの結婚」(上) 小説

息子が生まれて2年、
次々とミラクルなことが起きた。

夫はごく普通のサラリーマンだったが
ある日二人で宝くじを買ってみると
なんと、1億円が当たったのだ。
今の時代はweb上で当選番号を確認
出来るのだがその番号を見たときは
夫婦目を合わせ息が止まった。
銀行に出向くと
「おめでとうございます」の言葉と
手続きが待っていた。そして
これまでの人生では見たこともない
桁の数字が通帳に記入されたのだ

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「別れ」 短編小説

「別れ」 短編小説

壁から出てきた中年男

「お前には何もできない。
お前には何もできない…」と繰り返す
メガネの中年男。
夢なのか?これは現実なのか?

スーパーのレジ袋を持ち、慣れない帰路を歩いていると彼がこちらへにこにこ
微笑みながら向かってくる。

「醤油も油も買ったの?
重かったでしょ?来てよかった。
調味料って重いよな。」
祐くんはこの時間にここを通る私を
見越して助けにきてくれたのだ。
レジ袋を持っても

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