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「一年限りの結婚」(上) 小説

息子が生まれて2年、
次々とミラクルなことが起きた。

夫はごく普通のサラリーマンだったが
ある日二人で宝くじを買ってみると
なんと、1億円が当たったのだ。
今の時代はweb上で当選番号を確認
出来るのだがその番号を見たときは
夫婦目を合わせ息が止まった。
銀行に出向くと
「おめでとうございます」の言葉と
手続きが待っていた。そして
これまでの人生では見たこともない
桁の数字が通帳に記入されたのだった。

他にも例えば趣味で描いた絵が突然
高値で売れたりとにかくお金が不思議と
自然に入ってくるようになった。

しかしある時私に小さな腫瘍がみつかり
入院することになってしまった。
入院のストレスを軽減させるため、と
病室は個室のまるでホテルのような
部屋を夫が選んでくれた。

気がかりなのは2歳の息子。
まだ言葉も「ママ」「わんわん」くらい
しか話せず、私が四六時中
一緒にいたので入院となるとかなりの
ストレスになってしまうと思った。
しかし私の予想はハズレ。
パパと楽しくお留守番できていると
聞いた。テレビ電話では「マーマ」
「がんがって(頑張って)」と言って
少し寂しいほどの聞き分けの良さ。
愛しい、可愛い。こんなに可愛い子が
この世に存在していて大丈夫なのか?
実に親バカである。

手術前日のことだ。
居心地のいい部屋とはいえ病院なので
閉じこもっていることが窮屈になって
きた。私は点滴を引っ張ったまま
外科病棟の休憩室へ散歩に行くことに
した。

休憩室には一人だけ自販機の横の
ベンチにお婆さんが座っていた。
明るい憩いのスペースで雑誌や本も
充実している。彼女は本を読んでいた。
ちょうど自分の祖母と同じ年齢ほどの
人の良さそうな優しそうなお婆さん。

次回へ続く


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