少年よ、人生の舵をとれ!「選択格差」に独自の切り口で取り組む社内カルチャー
みなさん、こんにちは。運営事務局の松澤です。秋が深まりとても過ごしやすくなってまいりました。天高く馬肥ゆる秋、心なしか足取りも軽くなり、ちょっぴり遠出がしたくなってきます。
今回の記事は株式会社ハッシャダイ 明雄大 /YudaiMyoさんによる講演内容をまとめたものになります。テーマは『ベンチャーが取り組む社内カルチャー』。
当社は「Choose Your Life(自らの人生を選べ)」を合言葉にブランドに多額の投資をしてきました。ベンチャーでは異例であり、社内外で議論を重ねる必要があったそうです。それでも設立初期からブランディングに投資をしたメリットは大きいと感じているそうです。
明さん自身はハシャダイに1年間ほど関わったのち出戻りをしています。内外での活動では一貫して「企画」を武器にしてきました。社内カルチャーを担当した経験を活かし、現在は広報や企画に携わっており、明さんならではの視点でブランディングを語っていただきました。
この記事を読むことで「設立初期からブランドに力を入れた理由とは?」「独自の事業が立ち上がる仕組みづくり」「社員を力強く導く世界観(カルチャー)構築のヒント」が理解できます。
どうぞ最後までお付き合いいただければと思います。
(チカイケ秀雄主宰「TOKYO BRANDING.大学校」にて、2019/09/27に登壇いただいた際のお話です。詳細・入会はこちら)
大学を出て愕然した「格差」
明さんはご自身の地元である大阪の大学を卒業していますが、それまでにフリーターの時期もありました。「大卒」と「非大卒」それぞれの肩書きでの境遇を体験しているのです。その差を思い知ったときに大きな格差を感じたそうです。
↑明さんの原体験:お金がない中、大学へ進学
”大卒”となるだけで就職面接の往復の交通費が支給され、”非大卒”では支給されることはほぼありません。”大卒”と聞くと大人の対応は変わり、”非大卒”であると門前払いする企業がいます。
明さん自身はいわゆるヤンキーではありませんが、身近に優秀な非大卒の若者の存在を知っていました。地方出身者の方であればご友人に一人や二人、いらっしゃるかと思います。彼らは意識が高いが選択や情報でのディスアドバンテージを抱えているのです。
逆を言えば大卒=優秀と括ることには前時代的なフレームや思考があります。決めつけること、既製品、思考停止は明さんの嫌いなことでもあります。
ハッシャダイでは、いままで切り拓かれてこなかった非大卒を始めとする「選択格差」を抱えた若者に支援をしているのです。
ストーリーに仕立て共感を呼ぶ
ちょうど今月に創業5年目を迎えるベンチャー企業が行政や教育関係者を巻き込みながら、成長を続けています。なぜ中卒高卒の集まりの自分たちがここまで来られたか?にはストーリーが鍵だったそうです。
「ヤンキーが日本を元気にする」という筋書きです。明さんを始めハッシャダイでは、活発でエネルギー溢れる若者に可能性を感じていました。その存在も日本人にとってどこか身近で、彼らが日本を元気にしてくれる期待に共感が集めやすかったそうです。
地方から上京することには覚悟が必要です。地方から地方へ行くのと訳が違います。「大阪に魂を売った」という言葉がある通り、上京した場合は戻ってこないことが多く「地元を捨てる」感覚が多少含まれます。ハードルが高く断念する人もいます。そういった若者に共通するのは覚悟があることです。
ブランドステージ:いかにして企業風土を醸成したか
CEOの久世大亮氏は起業初期からブランドの大切さを社員に説いてきました。しかし一貫したブランド戦略ができるまでには、CEOの思想を言語化し表現をするブランディングプランナーとの出会いがきっかけになります。
社内の空気が変わり始めたと肌で感じるようになった境目は「制度に落とし込めた」ことだそうです。会社として「こういうことをした人は評価します」という意思表示にもなり、社員もどう頑張ればいいかが明確になりモチベーションが上がりました。
順を追ってステージを分けてみました。
1.ブランド暗黙知段階:CEO自ら思想やビジョンを浸透
2.ブランドの可視化段階(CEOと社員の思想の言語化コアバリューの作成、ホームページ作成)
3.ブランドの浸透段階:日報のアレンジ、制度など試行錯誤、資料のテイストや服などブランドとの接点が増える
4.ブランドの実感段階:メディア掲載など目に見える効果を実感し、ブランドに対する理解が深まる
5.ブランドの評価制度化段階:ブランドの成長と個人の成長が一致する
6.ブランドの無意識化段階:次の目標
ステージ5まで来ると再現性はかなり高まり、属人的なブランドから離れ始めてきます。
具体的な評価はOKRとコアバリューの基準を用いて1on1の面談をハイブリッドさせています。自分のやりたいを掛け合わせた目標設定を行ってもらいます。進捗状況やハッシャダイの社員としての立ち居振る舞いへ自己評価を行ってもらい、上司に現実との乖離がないかをすり合わせるのです。
「ありえない」をやってのけたNASAの世界観
社内へのカルチャーを浸透させていくにあたって意識していることは、世界観の自分ごと化です。明さんがもっとも中心に置いて参考にしているのがNASAの「アポロ計画」です。
アポロ計画は当時では「ありえない」をやってのけた国家プロジェクトです。まだ国際関係も緊迫した中、国民に納得してもらい、予算を確保して、成功にこぎつけなければいけない。そこで唱えたストーリーが「来たる”宇宙からの国防”に備えた一歩目の計画」でした。
「最も困難で莫大な費用がかかるからこそ、より強い印象を人類に残すことができる」とも言われており、グッズ販売やプロモーションを展開し、民間企業を巻き込んでいきます。
明さんが最も感銘を受けたのがステークホルダーとの関係性でした。宇宙飛行士の健康を阻害しないよう、取材は独占契約を結び、それ以外の大部分の情報はオープンにしたそうです。これにより膨大な計画をミスリードさせることなく成し遂げるにいたったのです。副産物として「コードレス工具」や「酸素マスク」などの画期的開発もするに至りました。
一つだけでも世界観の例があることによって、自分自身が判断軸を持って、制度作成やPR業務を執り行えるようになるのです。
「ヤンキーインターン」「BOOTCAMP」の取り組み
株式会社ハッシャダイでは様々な事業を推進していますが、特徴的な2つをご紹介します。
1つが「ヤンキーインターン」です。
食費・住まいを提供し、東京での就労経験や学びを得てもらいます。驚くことに英会話研修や就活講習をはじめ様々なカリキュラムも用意されていてサポート体制も万全です。東京以外に住む18-24歳であれば申し込まない理由はないと思います。
もう1つがハッシャダイスクールの一角を担う「CHOOSE YOUR LIFE BOOTCAMP」です。
大学生や社会人になってからやり始める「自己分析」を高校生や非大卒に届けています。せっかく上京を考え、行動に移しても目的意識が低かった人が見受けられたそうです。本校でもおなじみ「原体験ジャーニー」をより簡易にしたものを実施しています。
学校の先生と協働をしていく上で気をつけていることは、民間の企業と異なる目的を持っていることを認識することです。生徒の成長や教育があってこその協働です。相手がなにを求めているのか、どんな価値観であるかを最初に明らかにすることを意識しています。社内カルチャーはコミュニケーションでも反映されていました。
↑熱量を持って1回1回のイベントを成功させていることが伺えます。
「よそもので、ばかものな、わかもの」な若者に選択肢を提示していることが一貫しています。様々な切り口で取り組みがなされる中でブレないのは、ブランドがしっかりと言語化され根付いているからです。
人が増え、挑戦することが大きくなるにつれ「助けたい人」が増えている感覚があるそうです。最初は「非大卒の何歳の誰々」でしたが、OKRを持った自発的な社員の視点も重なり、やりたい・貢献したいの幅が自然と広がっています。
参加者からのコメント
「ブランディングの具体的な話を余すことなく話して下さった点。身近に感じられる組織規模の話だっただけに、よりイメージしやすかったです。」
(マネージャー/30代)
「抽象的から具体的なお話まで生々しいからこそ自分の会社に落とし込む形が見えやすく、有難い情報、頂きました。」
(コピーライター/30代)
※東京ブランディング大学校では月1で外部から講師をお呼びしているので、ブランディングの学びを深めることができるコミュニティです。
明さんとハッシャダイの今後の活躍に注目です!
(ライター:松澤直輝)