「性的消費」の正体
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1.はじめに
こんにちは、東京バハムート(Tokyo-Bahamut)と申します。
この記事は、私がこれまでフェミニストの皆様と対話を通じて収集してきた「性的消費」に関する情報と、私の見解を取りまとめたものです。私はフェミニズムを体系的に学んだ訳でもありませんが、過去に同等の内容をTwitterで投稿した際、(発言がアンチ寄りにも拘らず)複数のフェミニストの皆様からも褒めていただけたので、丁寧にヒアリングできたのではと、ちょっとだけ自負しております。時間のない方は、文末に「まとめ」のスライドを掲載していますので、そちらをご覧ください。
基本的には、フェミニズムにもアンチフェミニズムにも毒されていない健やかなる皆様向け(何かの炎上を機に「性的消費 定義」「性的消費 意味」などでググった人向け)に書いておりますが、フェミニストや親フェミニズムの皆様にも、自分たちサイドの主張が本質的にどういったものなのか、再確認していただきたい気持ちもあるため、該当する方がいらっしゃれば、是非最後まで読んでいただければ嬉しいです。
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2.「性的搾取」とは
「性的消費」の話をする前に、同じ文脈で出てきがちな「性的搾取」について整理しましょう(既にご存じの方は飛ばしてください)。
なんだか小難しい書き方ですが、性的搾取は特定の相手との権力勾配や何らかの強者性を盾に、相手に何らかの性的な行為を強要すること(またはその試み)を意味します。直接1対1で性行為を強要する場合以外でも、例えば、芸能事務所が所属タレントを取引先の社長に差し出す等、何らかの恩恵や便宜を受ける目的の行為でも、成立するようです。
上記のような定義のため、基本的には「女性の萌え絵やグラビアを広告に利用した」だけでは成立しません。なので、こういったケースで使われている場合は誤用となります。何故なら、(人間だと思ってたかたには申し訳ないですが)萌え絵は実在の人間ではないため搾取のしようがなく、またグラビアについては通常、契約という形で同意を持って行われる為です。勿論、グラビアに関しては強要されての出演となったケースはあるでしょうが、それは個別の紛争として訴訟を起こすべきものであり、グラビアアイドル本人以外は口を挟んでよいことではありません。
誤用を指摘され「言葉の定義は変わるものだ」と抗弁する方もいらっしゃいますが、議論や主張をする場合に一般的な定義からズレた言葉の使い方をするのは、ただただ正しく伝わらないだけであり、社会性のある行動とは言えません。また上記の通り、なかなかに深刻な状況を表す言葉のため、「性的搾取」という言葉は現在の強い意味のままとした方が、性的搾取を撲滅していく上では役に立つでしょう。
もし、今まで「使ったことがあるよ~^^」って方がいらっしゃったら、せっかく誰かが「性的消費」という便利な言葉を作ったのだから、せめてそっちを使いましょう。
3.「性的消費」とは
やっと本題「性的消費」でござる。拙者、話が長いでござる。この概念は非常に分かりにくく、拙者も理解するのに苦労したでござる。
(1)「性的消費」のベーシックな定義
本来「性的モノ化(性的対象化)」などと言われたりするもので、手嶋海嶺さんや神崎ゆきさんが要件に該当しないので誤用であると指摘(以下リンク張貼っときます)されてますが、個人的には、まあちょっと学術的な定義は置いておいて、一定程度の女性が嫌がってるっぽいから、どういう理屈なのか一度聞いてみようよというスタンスで、この「性的消費」を紐解いていきます。フム、なかなか、物わかりのよい召喚獣でござる。
手嶋海嶺さんの記事:小宮友根氏の論の問題点~それは性的客体化表現ではない~|手嶋海嶺|note
神崎ゆきさんの記事:「性的搾取、性的消費、性的客体化、性的モノ化、性的対象化」という言葉の『誤用』について - Togetter
戦争でもない限り人間は消費できないので、「性的消費」という言葉を使うとうまく理解できない方が多いと思います。なので「性的モノ化(モノのように取り扱う)」と理解してもらった方が分かり良いかもしれません。
要は、「性的消費」とは女性の人格を認めず、モノのように性資本を利用することを意味していると考えられます。この「女性をモノ化して性的に利用する」という部分が重要で、昨今の様々な炎上の論拠となる部分です。
フェミニズムでは、”旧来の家父長制は女性の人権・人格を認めてこなかった”という史観を強く持っているため、何なら"現在でも女性は圧倒的に抑圧されている"という世界観を持っているため、男性側に少しでも女性をモノ化しているとみられる言動があれば徹底的にこれを叩きます。
(2)「モノ化」理論の拡張
でも、これだけでは説明がつきませんね。何故なら、昨今の炎上騒ぎの起きた広告物などのデザインと、この「女性の人格を認めず、モノのように性資本を利用する」には論理的な乖離があります。
おっぱいが大きいキャラクターを広告に使うことが、何故モノ化になるのか、女性モデルをアイキャッチに使うことが何故モノ化になるのか。性的搾取の時と同様に、キャラは実在していないし、そのモデルやタレントが希望してやっているなら良いではないか。
これをつなぐものとして、概念としての「女性」というものが援用されます。要は、その広告の表象が女性を表しているなら、女性全体へのモノ化の助長であると捉える拡大解釈をしているのです。
なので、「本人が良いんだから良いじゃねーか」とか「2次元は実在しない」とかの反論は、残念ながら「性的消費」の主張者には全く効きません。何なら、勉強が足りない・解像度が低いのでアップデートして欲しいと言われちゃいます。まぁちゃんと勉強すると、先ほどの手嶋さんや神崎さんの結論にたどり着いちゃったりするんでござるが。
また、逆に本人が主体的に露出している等のケースについては、モノ化ではない為、OK!!となる理論です。むしろフェミニズム的には(自身の体を主体的に取り扱ってるので)称賛されるべきものです。
おいおい、ちょっと待て、オカシイじゃん。さっき「被写体本人(モデルやタレント)が希望していてもNG!」って言ってたじゃん!矛盾してるじゃん!信用できねえなァこの召喚獣は。と思った貴方。素晴らしい、察しが良いですね。そうなんですよ(詐欺師っぽいとよく言われます)。
そこを解説すると、なんでも、広告などについては企業や行政などの広告主側の意図や目的があり、また意思決定者に他者(というか男性)が含まれているから、女性本人の主体性が却下されるという理屈なんです。
その理屈だと、フェミニズム系の団体がよくやるセクシーでカッコいい女性像の広告もダメじゃない?と個人的には思うんですが、おそらく、性的な利用の意図が皆無であるということなんですね。
意思決定や企画に男性が居るとNGという理屈を紐解くと、男性の存在により性的な利用意図を類推する、ということなんでしょう。
豊満なおっぱいや胸の揺れも、ミニスカートの皺も、萌え萌えした画風も、男性に性的なインスピレーションを抱かせ得るデザインすべてが、女性を性的な対象物としてモノ化している。そんな意趣を持った広告物を公共の場に出すなんて、女性のモノ化にお墨付きを与える行為に他ならず、性犯罪(性的搾取)を助長させる行為だ!!!となるわけです。
まあ、男性向けの広告や出版物の女性意匠が、胸が大きかったりミニスカだったりするのは、性的な要素を持たせる為ということ自体は否定できないのですけどね。
ちなみに、性犯罪と性的表現の関係については、手嶋さんが「性的表現と性犯罪/性的攻撃性」の関係~最先端の科学的知見に迫る~|手嶋海嶺|noteに整理してるので、気になる方はご覧ください。
(3)「性的消費」の判定基準
「性的消費」として炎上したもの/逆に炎上しなかったものについて整理していくと、どういった基準なのかサッパリわからなくなると思います。「え?これは良いの?」「ええ?これダメなの?」と困惑されている方をよく見ます。たまにTwitterでは、今まで炎上したものと、炎上しなかったものを整理した散布図的な画像(揶揄目的)が流れてきますが、それを眺めていても当然結論は出ません。
そうです「性的消費」の基準なんてものはないのです。フェミニストに聞いても、ちゃんとした回答がないのも基準がないからです。あえて基準を整理するとしたら「男性の喜びそうなデザインで描かれたモノ、男性の喜びそうなモデルの服装・姿勢だとの印象を女性が受けた場合」となります。
実際にどうかなんて関係ありません。男性の内面を推定し「性的消費」であると判定しているのです。
ちなみに、「性的消費」の話から「TPO」や「公共性」「未成年の保全」の話に言及する方が居ますが、本来これらの概念と「性的消費」は相容れません。何故なら「時間や場所、相手の年齢を選んだら"性的消費"してよいのか」という命題にぶつかるからです。
本来、競合する概念を都合よく使い分けられるのは、やはり「性的消費」という概念は、後付け理屈であるからに他なりません。別の源泉から湧く拒否感・嫌悪感を、社会に認めさせるために作った理屈であると推察します。
(4)「性的消費」は避けるべきものなのか
我々は、他人は尊重すべきであり、モノのように扱うことはやっちゃいけないことであると教えられてきました。では、「性的消費」も「モノのように扱われている気がする」という気持ちになる人がいるのであれば、避けるべきものなのでしょうか。
そもそも女性だって、男性を「性的消費(モノ化)」しています。少女漫画を見れば背の高いイケメンしかおらず、首筋やあごのライン、腕の血管、細長い指先、鎖骨、たくましい背中、メガネをかけた姿などを性的にまなざしていることは、私でも知っています。"性的"に限らなければ、経済的なモノ化・便益的なモノ化・社会的地位のモノ化など、至る所で男性もモノ化されています。女性の皆様はこれをやめることが出来るのでしょうか。何故、「女性」「性」だけ特別扱いしてしまうのでしょうか。
また、これらを禁止し排除するなんて本当にできるのでしょうか。露出の少ない清廉の象徴だったシスター服や巫女服、女性ならスーツ姿や制服に異性としてのセクシーさを感じるようになる人類の想像力に、歯止めをかけることなんてできません(噂では、アフガニスタンではブルカにすらセクシーさを感じるようになるらしいです)。一旦この理屈を認めたら最後、次から次へ禁止していくことになるのではないでしょうか。そもそも、モノ化を止めるなんてことは現実的な話ではなく、糾弾するだけ無駄な事項なんだと思います。
フェミニストの皆さんは、女性が抑圧されてきた歴史的経緯や肉体的・経済的格差、権力勾配、モノ化の総量などを持ち出し、女性に対する性的モノ化が殊更危険であるとみなし、男性のみにモノ化を辞めさせようとしていますが、本当にこれは公平で平等な要求なのでしょうか。男性を属性で括り危険視する、ただのミサンドリー(男性嫌悪)ではないでしょうか。
現実的ではなく、公平でもない、差別的な考え方をベースにした要求を一方的に認め続ける社会的な意義とは、一体何なのかよく考えていただきたいです。
(5)「性的消費」の正体
ここからは、拙者の分析が多分に入るので、そういうつもりで読んでいただけると有難いでござる。
皆さんは「負の性欲」という言葉をご存じでしょうか。リョーマさんが名前を付けた、男性から見た女性の行動原理的なものです。元ツイは消えてるので、白饅頭さんのリンクを張っておきます(「負の性欲」はなぜバズったのか? そのヤバすぎる「本当の意味」(御田寺 圭) | 現代ビジネス | 講談社(1/6) (gendai.media))。
当初の定義より以下のサイトが俯瞰的かつ端的に表しているので、こちらもどうぞ。
「負の性欲」の存在について否定的な方がいらっしゃるのは存じてますが、多くの方は経験的に知っていることではないかと思います。論理的に紐解くと以下のような話だと思います。
男性と女性には肉体的な性差があります。一般的に女性は妊娠・出産をする方の性別です。男性は妊娠・出産ができません。
人類史が始まって以降、妊娠・出産は我々の存続に重要な、しかし、大変危険な営みとして紡がれてきました。医療の発達した現在でも同様です。女性にとっては、人生の間に数回限り、命がけで実施するものです。なので、できるだけ優秀な遺伝子(社会的繁殖能力※の高い遺伝子)を獲得し、劣等な遺伝子(社会的繁殖能力の低い遺伝子)を掴まされるリスクを排除することが形質的に優位となりえます。
一方で男性は、妊娠させることだけが自身の遺伝子を残す営みなので、相手の遺伝形質の優劣に頓着せず、なるべく沢山自分の遺伝子をまき散らして回ることが、形質的に優位に働きます。
そういった肉体的性差から、男女間で先述のマトリックスのような傾向差が発生していると思われます。
要は、女性は男性に比べて、
・社会的繁殖能力の高い遺伝子を獲得したい欲求がある
・社会的繁殖能力の低い遺伝子を掴まされるリスク排除したい欲求がある
という傾向が出てくるのは当然といえば当然です。
よって、女性目線では、男性の欲求を惹起する自身(もしくは女性全体)の性資本の価値を可能な限り高く維持(安売りをしない)ことで社会的繁殖能力の高い男性だけを選別し、社会的繁殖能力が劣等なオスを排除したい本能があるのだと思います。
なんかこいつ、関係ない話を始めたぞ。と思われている方もいらっしゃると思いますが、もう少しお付き合いください。
では、「性的消費」されるとどうなるのでしょうか。女性の表象を使ったエロ表現は、実際の女性の代替品としての効能があるため、男性に性資本へのアクセシビリティ(利用可能性)を提供し、トータルとして女性の性資本の価値を下げる働きをします。
要するに、
・社会的繁殖能力の高い男性から性的にまなざされることを阻害する
・社会的繁殖能力の低い男性からの性的まなざされることを助長する
という、相反する2つのリスクがあるものと捉えられている節があります。
また、先述の「トータルとしての女性の性資本の価値を下げる効能」を感じ取り、女性の性資本を安売りする行為として認知されているかもしれません。ちなみにこれは、サークル内のビッチが嫌われるのと同根です。
長々と書きましたが、要はフェミニスト以外の女性についても個体差があるにしろ、女性を表象としたエロ表現に本能的に不快感を持ちやすいという推論が成り立つと思います。この本能的な不快感と、先程の「性的消費」の理論が結びつき、猛威を奮っているというのが昨今の現状だと解釈しています。
そして、もう一つ指摘するなら、男性は本来的にこの感覚を理解できない傾向がある為、何故嫌なのかサッパリ分からんといった反応をします。ananの表紙に、男性アイドルの裸が掲載されようと、ミラーリングで温泉むすこを描こうが、「男性を"性的消費"してる!」とは感じないのです。
むしろ、男性がエロ表現や女性の肉体露出について目くじらを立てるのは、フェミニズムが根絶を願う家父長制的なパターナリズム(パターナリズム - Wikipedia)の文脈です。昭和の親父はミニスカートを履く娘を見て「はしたない!」と窘(たしな)めてきたのです。きっと、昭和親父ならきっと、ananの表紙に眉を潜め、温泉むすこに激昂してくれたことでしょう。
不思議に思われるかもしれませんが、男女はこれまで絶妙なバランスの上で成立し、生存や生殖に優位に働く特性・本能を受け入れ、社会制度として昇華することで集団としての強度を高めてきました。男女はコインの裏表。異性側の生来の形質を直接理解できなかったとしても、社会性を帯びれば帯びるほど、性別を超越した一つの指針(生存や生殖に優位)という点で一致するのです。私も自分で子どもを持って初めて、これが理解できるようになりました。例えば、自分としては何も思いませんが、自分の幼い子どもにはananの表紙は見せたくありません。
(6)「性的消費」を主張する皆さんへ
私は「性的消費」という理屈には全く賛成できませんが、「生理的に無理」という声には耳を傾けたいと思っています。何故なら、私も集合恐怖なのでブツブツした画像が街中の色々なところに氾濫したら嫌だし、やめてくれとの声をあげるでしょう。実際、ネットサーフィンをしていると、脈絡のなく毛穴の汚れ取り?の広告が表示され、嫌な気持ちになることが多々あります。
なので、「性的消費」という後付けかつ欠点だらけの理屈を捨て、ただ単に「気持ち悪いからやめてくれ!」と言いませんか。根拠なく犯罪惹起を叫んだり、止めようのないモノ化を糾弾したり、すべてを女性差別に結びつけたりするより、そっちの方がきっと健全ですし、対話もできるのでルールも決めやすいと思います。
嫌な気持になる人が多いなら、どうすれば良いかを話し合う。最終的には程度問題として、どこかに線を引く。それで良いじゃないですか。
4.まとめ
なんか、もともと2,000字くらいのツイートを再構成しただけなのに、やたら長くなってしまいましたが、最後に全部まとめたスライドを置いておきます。
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