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東北の10年から紐解く、アートプロジェクトの生態系。佐藤李青「3.11からの眺め」

「応答するアートプロジェクト|アートプロジェクトと社会を紐解く5つの視点」では、独自の視点から時代を見つめ、活動を展開している5名の実践者を招き、2011年からいまへと続くこの時代をどのように捉えているのか、これから必要となるものや心得るべきことについて、芹沢高志さんのナビゲートで伺っていきます。

第二回のゲストは、アーツカウンシル東京 プログラムオフィサーの佐藤李青です。タイトルは「3.11からの眺め」。10年間にわたって東北エリアに関わってきた佐藤から見える、この10年の経験とは、どのようなものなのでしょうか。

アートプロジェクトの3つの軸

アーツカウンシル東京では、2011年7月に東京都が発表した『東京緊急対策2011』をきっかけに、東日本大震災の被災地域(岩手・宮城・福島県)を対象とした事業「Art Support Tohoku-Tokyo」を行ってきました。これは、被災地域のコミュニティを再興するために、都内で展開する「東京アートポイント計画」の手法を用い、現地のアートNPO等の団体やコーディネーターと連携して、その時々に応じた地域の多様な文化環境を支援する事業で、2011年から2020年度までの10年間にわたり行いました。
この事業の担当者としてずっと東北に関わってきたのが、佐藤李青です。

対談の中で佐藤は、東北に関わってきた10年間の経験と、とくに書籍『10年目の手記』やCD『福島ソングスケイプ』が形になる過程を振り返るなかで改めて見えてきたアートプロジェクトの軸を、「事業ー活動ー運動」と提示しました。これは東北に限った軸ではなく、アートプロジェクトを考える上での視点です。

さまざまな地域で、さまざまなきっかけから生まれるアートプロジェクト。まずは当然、進めていく「事業」があります。そして事業を進めていくとそこから飛び火するように広がっていく「活動」が出てくる。そこで生まれた思考や技術は地域内にとどまらず、さまざまなメディアを介したり、人と人との関わりの中でまた別の場所にも連鎖し、同時代的な態度として広がっていきます。ある場所固有の活動が、アートプロジェクトという場があることでより広がっていき、「運動」のようなものにつながっていく、というのです。

事業が活動となり、活動が運動となることでより豊かになる。そしてそこからまた別の事業が生まれ、連鎖反応のように広がっていく。それは、天才的なアーティストが一人で、あるコンセプトをもって作るのではなく、いろいろな役割を持った人がプロジェクトという場のなかで、一定の結び付きをつくりながら状況をつくっていく、アートプロジェクトであるが故の広がりです。

10年のスパンで東北に関わり、さまざまなアートプロジェクトと並走してきた佐藤の視点から見えてきた、アートプロジェクトの構造と生態系。動画では、ナビゲーターの芹沢さんとともに、生態系がうまれるための複数の時間の重なりや、経験のリレーについても話しています。二人の対話の中から、あらためてアートプロジェクトの可能性と、プロジェクトを立ち上げる際に必要な視点について、考えることができます。

動画は前編(39分)・後編( 38分)合わせて約75分です!
ぜひご覧ください!


<関連リンク>
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視点1 港千尋:前に走ってうしろに蹴る
視点2 佐藤李青:3.11からの眺め
視点3 松田法子:生環境構築史という視点
視点4 若林朋子:企業・行政・NPOとの応答
視点5 相馬千秋:フェスティバルの変容

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