「都市と循環」来場者200名!多分野を横断するカンファレンスと展示のイベントレポート@京都
●今こそ都市を再編集!多分野を横断するフェスティバル
2023年12月7日(木)〜8日(金)、イベント『都市と循環』を京都にて開催しました。
東京R不動産の出発点は、20年前に発行した『R THE TRANSFORMERS 都市をリサイクル』という一冊の本。「築年数は新しいほど良い」という従来の不動産の価値観に、疑問を投げかけたことからはじまりました。
それから20年が過ぎ「サーキュラーエコノミー」という言葉も登場する中、これからの都市は「循環」をキーワードとして、さらに編集されていく必要性を感じています。
そこで、さまざまな分野の知恵や技術を横断するカンファレンス+展示会を行うフェスティバル「都市と循環」を開催することに。今回は実験的に「第0回」としての開催でしたが、20名の登壇者と約200名の来場者が集まり、濃密な時間の流れるイベントを開催することができました。
●6つのテーマでトークセッション
トークセッションにあたり、今回は6つのテーマを用意。各テーマごとに3〜5名の登壇者をお招きし、2時間弱のセッション形式で進められました。東京R不動産のnoteでは、その中から3つの講演をご紹介します。
①「建築と循環」建築の循環の現在地とは
このセッションでは、それぞれ異なるフィールドで活躍しているスピーカーたちが、各視点から「建築はどのように進化していくべきか」を話し合いました。
まずは、ShopBotという3軸CNCマシーンやAIといったデジタルテクノロジーを駆使して、「建築の民主化」を進めているイノベーター(VUILD株式会社)。「色々な道具や部品を『自分でも持てる』と思えるサイズに小さくしていけば、職人や専門的な機械に依存せずに誰もがものを作れるようになるのでは」「建築の『ハード』というより、仕組みや発想などの『ソフト』に対価をもらえるよう進化していきたい」などと話しました。
次のスピーカーは打って変わって、伝統的な知見を持つ茅葺屋根の職人(株式会社くさかんむり)。「近代の暮らしは『まず建物があって、その造りやルールに人間が合わせる』という順で設計されているが、本来は『まず人間がいて、それを快適に包み込むのが建物』であるべきでは」と語ります。
最後に、世界最大規模の建築エンジニアリング集団(アラップ東京事務所)のプロジェクトマネージャーが「何も建てないのがベストなのに建てる意義」などをドラスティックに語り、全く新しい考え方で会場を引き込みました。
それらに対し、東京R不動産の立ち上げメンバー(馬場正尊)が興味津々に質問やコメントを投げかけ、最後にこう締めくくりました。「次の建築における循環が『こうなっていくのでは』という各々のイメージには、ある程度の共有感覚がある気がする。それをこれから追求していきたいと感じた」。
このセッションが、会場の方々にとってそれを考えるきっかけになるとうれしいです。
②「海外事情」オランダと台湾のサーキュラーエコノミー
こちらのセッションでは、サーキュラーエコノミー先進国であるオランダと、廃棄物を使ったユニークな取り組みを行っている台湾の事業者の話をオンラインで中継しました。
オランダの2つの企業(Urbanberry Design)(space&matter)の話では、アムステルダムの実験的なまちづくりの事例を目の当たりにしました。両者は「デザイン」と「自然」を別々に考えるのではなく全体として一緒に考えることが大切だ」という観点と、「大きな単位よりも、まずは自分達の近所を巻き込むように」という、小さな国オランダならではのフレキシブルでコンパクトな考え方を話しました。
次に台湾の「ゴミから建築を作る」ことを実現している企業(MINIWIZ CO., LTD.)と中継。「全ての廃棄物」をリサイクルし、建築の骨組みとなる頑丈な建材から柔らかなインテリアまで全てを手がける挑戦のレポートは驚きの連続でした。特に「ゴミを再生したプロダクトで作られた手術室」が実際に稼働していることは、廃棄物のイメージを覆す事例だとも感じました。
台湾の彼らはすでに活躍の場を世界に広げており「ある程度大きな規模でやらないとビジネスとして成立しない」と、オランダの講演とはまた対照的な話も聞くことができました。
③「土と循環」土や木、生物サイクルにもとづく新しい循環
こちらのセッションでは土をテーマにそれぞれの活動、意義やその難しさを語り合いました。
登壇者は、農家を営みながら様々なコンポストプロジェクトに関わっている「コンポストアドバイザー」(鴨志田農園)、六甲山の木材を地域で循環させる仕組み作りの活動を行っているコーディネーター(SHARE WOODS)、そして葬儀のスタイルが世界的に変化しつつあるなかで、日本でもその選択肢を広げようと活動をしている「循環葬」の専門家(at FOREST 株式会社)の3人。
そんななかこの会場では面白いことが起こっていた様子。この講演を、別講演である「アートと循環」の登壇者の一人が聴いており、その方のアート活動のひとつは「自分の埋葬」だったのです。
「埋葬」を共通項として2人の登壇者がお互いの講演を聴き、そこから交流が始まったとのこと。これには主催側としてもうれしい気持ちになりました。
●展示会場では、全国各地の「循環」を手に取って
このイベントではトークセッションだけでなく、展示や物販も行われました。R不動産と関わりの深い地域ネットワークである「real local」を通じて全国11拠点から出展があり、各地で行われている「循環」の取り組みについて理解を深めることができました。
展示会場の設営をお願いしたのは、「みんなで作ろう」を合言葉に活動をしている「TEAMクラプトン」。彼らの「お仕事をする時はお施主さんも一緒に」というモットーのもと、運営メンバーも会場設営に参加しながら皆で楽しく木材を組み立てました。
●食事や音楽でも「循環」を味わって
1日目の夜・2日目の昼には、開催地である京都の地元食材やジビエを活用した料理をいただきました。1日目の夜には各地の地酒も振る舞われ、テーブルを囲む来場者たちの間で自然と「都市と循環」に関する熱い会話が始まっていたのも印象的です。
こうして大人数が集まる食事では紙皿や紙コップ・割り箸などがたくさん使われるイメージがありますが、このイベントでは参加者に「カトラリーの持参」を呼びかけており、当日は多くの方が器や箸を持ってきてくれました。
会場では「こういう取り組みいいよね」という声が聞こえてきて、同じような意識や感覚を持つ人々が集まっているのだなと改めて感じました。
楽しみは食事だけでなく、1日目の夜に行われたライブパフォーマンスも。ひとりでギターやバイオリンなどを演奏し、その場でフレーズを録音・再生しながら音を重ねていく・・というまさに「音の循環」を使った演奏を楽しむことができました。
たくさん学んで、たくさん話し合って、たくさん考えさせられた1日の終わりに、こうしてゆっくり生演奏を鑑賞できたのはとても贅沢だったように思います。
●2024年、さらにパワーアップして「第1回」を開催!
講演と展示を主として、盛りだくさんだった「第0回」のイベント。
初日に運営メンバーの馬場が「みなさん、この謎めいたイベントにお越しいただきありがとうございます」と挨拶したようにまだ実績もない中でしたが、興味を持ってたくさんの方にお集まりいただき、おかげで非常に濃密で意義のあるフェスティバルを開催することができました。
セッションする側・聞く側という関係を超えて、一緒に考えていく良い場になったのではないかと思っています。
参加者の意識や感度の高さを見ると、こうして同じ熱量で語り合える方々が一堂に会すること、それ自体に意義があると感じられました。参加してくださった方々の中には、きっと同じように感じた方も多いのではないかと思います。
次回は2024年秋、うんとパワーアップした「都市と循環 第1回」を京都で開催します。今回学んだ改善点を踏まえ、各講演をもう少し小分けにしたり、講演の中でもっと来場者の方々も話せる場を設けたりと、より居心地の良いイベントにしたいと考えています。
「都市と循環」のInstagram・FacebookやXなどのSNSで、この春から次回の情報を徐々に公開予定ですので、是非チェックしていただけたらと思います。今回はたくさんの方々にお集まりいただき、みなさまありがとうございました。