オフィス家具メーカー・オカムラが東京チェンソーズの「森の中」で研修を行なった理由
2023年9月、東京チェンソーズ社有林で、オフィス家具を始め、商環境や物流システムなどさまざまな分野で事業展開しているオカムラが社員研修を行ないました。
オカムラは「人が活きる環境の創造」「従業員の働きがいの追求」「地球環境への取り組み」「責任ある企業活動」の4つの観点から経営の重要課題を特定し、取り組みを進めています。
この記事では、昨年9月に行なわれた研修に参加した社員や企画・運営した事務局にお話を伺い、東京チェンソーズの「森の中」での研修の印象などお聞きしました。
研修の目的とスケジュール
今回の研修は事前の打ち合わせを経て、国産材活用について、またその木材を生み出す林業について学び、「社会課題の解決に貢献するアクションを考えるヒントを見つけること」を目的に、以下のスケジュールで行なわれました。
研修についてはこちらの「ACORN社内研修@東京都檜原村」をご参照ください。
オカムラの環境活動
はじめにオカムラのこれまでの環境に関わる活動について、簡単になりますがご紹介します。
自然との共生「ACORN(エイコーン)」活動をスタート
オカムラでは2010年から生物多様性と自然共生に向けたアクション「ACORN(エイコーン)」と名づけた活動を行なっています。
活動開始当時は国産木材に対する社会の関心が高まり始めた時期で、オフィス家具の業界でも国産材(間伐材)が注目されるようになっていました。
その流れの中で、オカムラでは国産間伐材の家具を製品化するに当たって、まずは国産材について、また、間伐材を使うことはどういう意義があるのかを考えようと、ACORN活動をスタートします。
ACORNでは「木材利用による人工林の健全化」にも取り組み、その過程で地域の木材を活用したテーブルやカウンター、収納ボックスなどを製造・販売しました。
また、「自然体験型研修」として、長野県信濃町にあるC・W・ニコルさんが創設した「アファンの森」での社内研修も2011年から続けています。
「アファンの森」で社内研修実施
「アファンの森」の研修では生物多様性に富んだ森林・里山の再生を目指し、同時に未来を担う子どもたちの心を育むプログラムも実施。
そこで、森林環境に関わる重要なポイントとして生物多様性について学び、小学校などで行なう環境出前授業や環境展示会「エコプロ」への出展コンテンツにつなげてきました。
感じていた課題
生物多様性の「次のステップ」が必要
「アファンの森」での社内研修を続けるうちに、オカムラでは森は里山のほか、人工林や原生林などに分けられることを学びます。
人工林とはヒノキやスギ、カラマツなど針葉樹を中心に、建築材とすることなどを目的に林業のフィールドとして人が植林し育てた森林のこと。
日本の森林面積の約4割を占めることから、森林・木材の環境を考えるにあたっては無視できない存在となっています。
しかし、人工林には、林業の担い手不足から整備がされない荒れた森が存在するなど課題が多いのも事実。
木材を利用するメーカーとしても、人工林に関わる課題を解決することが必要だと感じていました。
東京チェンソーズで研修実施
森林の課題をビジネスで解決する
研修にはデザイン、営業、マーケティング、物流などさまざまな部署から15名が参加しました。
今回は参加者の中からデザイン部門と営業部門のお二人をはじめ、研修の企画・運営側のスタッフ数名にお話を伺いました。
ーーまずは「アファンの森」で行った社内研修との違いを感じられたか教えてください。
デザイン:環境保全に興味があって両方とも参加しました。そこで気づいたことは、東京チェンソーズはよりビジネスに近いということです。
環境保全も継続するためには仕事として回していかないといけないと思っていましたが、まさにその通りで、東京チェンソーズでは仕事として製品を作り販売することで、より持続的な活動を行なっています。
ここが1番の違いだと思いました。
事務局:「アファンの森」は生物多様性について学んでから実際森に入って、環境保全について考えるきっかけを与えてくれる場所です。
一方、東京チェンソーズでは実際に木に触れた上で、ビジネスについて考えるというところ。
「アファンの森」で生物多様性を学び、東京チェンソーズで森のビジネスを学ぶ、そういう二段組みで考えるのもいいかと思いました。
再生した里山である「アファンの森」と林業のフィールド・人工林である東京チェンソーズの社有林では、森林としての成り立ち及び目的が違うので、そこで行なう研修も自ずと違ってきます。
補助金のみに頼らない林業の確立を目指す東京チェンソーズでは、よりビジネスに近い研修内容となります。
ーー研修に参加して良かったと感じた点、気づきになった点はいかがでしょう?
デザイン:事前研修を受けられたのがすごく良かったです。東京の森林の割合や林業で働く人がどういう状況にあるのか、木が1本いくらなのか。そういった厳しい現状を突きつけられて、ではどうすればいいのかという問題を抱えながら現場に行くことができました。
あとは実際に木材の皮を剥く作業を体験できたことです。
ただ聞いただけでなく、地域の仕事、その実情を見られたこと、自分もそれを体験できたことが良かったです。
営業:仕事で木を扱っているのに詳しいことが理解できておらずモヤモヤしていたところ、研修の募集があり応募したという経緯です。
良かったのは現場を見るという経験ができたこと。東京にこれだけ緑があり、林業があり、ビジネスがあることを知ることができたことが収穫です。
木材の実情・背景を業務に活かせるようになった
ーー普段の仕事で木の家具を販売するときはどのようなことを話しているのでしょうか? また、それは研修後に変わってきたのでしょうか?
営業:以前はデザイン、価格だけの話になっていました。しかし、研修で木材の背景の部分がわかったので、それを踏まえてなぜこの価格なのか、なぜこの素材なのかをセールストークの中に織り込んで話せるようになりました。
木製家具についてセールスの中で触れる機会はそれまであまり多くなかったそうですが、こうして実際に現場を見ることでいろいろと変わっていくこともありそうです。
研修を終え、気づいたことは…
研修の目的は「社会課題の解決に貢献するアクションを考えるヒントを見つけること」。
1日かけた研修の後に実施されたアンケートにはこのような回答が集まりました。
ーー今回の研修でもっとも学びになったこと、気づきになったことはなんでしょう?
森林の樹木は伐採してはいけないと思っていましたが、逆に日本の樹木は伐採されずに過剰となっている状況だということを知って驚きました。このことから国産木材の利活用が重要だと思いました。
木材を正しく使っていくことの必要性。
オカムラ(自社)と森、木材の関係を理解することができたと思います。
木を使うことが森林の保全につながるということを今まで知らなかったので勉強になりました。
ーー研修についての感想をお聞かせください。
オカムラ(自社)について、製品について改めて見直すことができる機会をいただきました。
国産木材の販売の意義を学ぶことができました。
お客様に体験提供できると良いと思いました。
消費者が国産木材を選ぶのが当たり前になるように、自分にできることをやりたいと思います。
振り返りの席で各自が短冊にしたためた「体験研修を私はこう活かす宣言」でもオフィス空間への木材製品の提案や社内で研修内容を広めたいなどの声が溢れていました。
これからの環境的アクション
最後にサステナビリティ推進部・部長の関口政宏さん、「ACORN」を推進してきたマーケティング本部の犬塚悦司さんに今後の環境的アクションについてお話を伺いました。
関口さん:「アファンの森」での研修はすでに社内に浸透していることもあり、今後も環境に関わる活動の入り口として継続して行きたいと考えています。
これからは、その次のステップとして、事業と関わりを持たせ、社会問題を解決していくときです。
長野の「アファンの森」と東京の人工林ではそれぞれアプローチが変わってくると思いますので、研修先ごとの特色を考えながら進めていきたいです。
ーー地域ごと、森の種類ごとに研修にバリエーションがあるということでしょうか?
犬塚さん:首都圏と各地域では森の種類も林業のスタイルも違いがあります。オカムラは首都圏のシェアが高いので、首都圏中心に目が行きがちですが、地域ごとの活用を促進することも考慮する必要性を感じています。
当社はいろいろな地域に事業所(工場)があるので、地域連携も考えていく必要がありますね。
東京で実際に林業を行なっている森林での社員研修。今回はその一例として、オフィス家具メーカー・オカムラをご紹介しました。
自社のビジネスと関係深い木材という自然素材。
研修を通して、その供給元となる国内の森林、そして林業が抱える課題をビジネスと関連づけて考えていただけたようです。
東京チェンソーズが「森の中」で企業の研修を受け入れるわけはこちらから。
さて、ラストになりますが、こちらがお昼にいただいた”檜原づくし”のお弁当。
竹皮で包むことで、ごみロスにもなっています。