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【ソフトバンク育成6位】遅咲きの大輪 川口冬弥投手にインタビュー!

今回は、福岡ソフトバンクホークスから育成6位指名を受けた川口冬弥投手にインタビュー!

長身を活かした投球で最優秀防御率(1.37)と最多セーブ(7S)のダブル受賞を果たし、見事ドラフト会議で指名された川口投手。25歳、遅咲きの川口投手が抱く野球への思いや、ドラフト当日の心境、徳島での生活など、様々なことをお伺いしました。
ぜひ最後までご覧ください!

*この取材は、10月26日に行われたものです。



1.インディゴで「最後の勝負」を

_ご自身はどんな性格ですか

川口 粘り強く何かを続けることができる性格です。

周りからはよく「あざとい」と言われますが、不本意です(笑)
そう思われる理由で心当たりがあるとすれば、6歳上のお兄ちゃんがいるので、スーパー末っ子っていうところですかね。お兄ちゃんや先輩と遊ぶことが多く、人にくっついて生きてきたなと思います。


_野球を始めたきっかけを教えてください

川口 父親が草ソフトボールチームに所属していて、そこでボールに触れたことがきっかけです。父はとても熱血で、よく自分の練習に付き合ってくれました。


_インディゴを選んだ理由は何ですか

川口 大学を卒業した後は、NPBを目指してハナマウイというクラブチームに所属していました。そこで去年指名漏れを経験して、年齢的にもラストチャンスだと思っていたので、昨年のドラフト会議で6人選ばれた徳島インディゴソックスで最後の勝負をしたいと思いました。


2.抑えから先発へ 学びの多かったシーズン

_今シーズン、一番印象に残っていることは何ですか

川口 前期と後期の間にあった阪神戦です。8回、1アウト1、2塁のピンチで、自分が抑えないと試合が決まってしまう場面で登板しました。そのピンチを抑えることができ、自信にもなりました。また、いつもより観客も多かったので、ああいう雰囲気の中で投げることができて良かったなと思います。


_逆に、大変だったことで印象に残っていることはありますか

川口 後期シーズンが始まってすぐの、調子が上がらなかった時ですかね。ドラフトに向けて大きなアピールの場だと認識していましたし、年齢的に「1試合も悪い姿を見せられない」というプレッシャーを自分にかけてしまっていました。大量失点もあって、残りの後期シーズンどうなるんだろう、という不安を抱えていました。


_そこから立ち直ったきっかけは何ですか

川口 7月7日、海陽町で行われた高知戦です。7月5日、6日と連敗中で、もう負けられないというプレッシャーの中での試合でした。

6回から中込が2イニング投げて、それがすごくいいピッチングで。これを見せられたら自分もやるしかないと思いました。熱くて長い試合で、必死に叫びながら投げていたことを覚えています。

その試合から好転したというか、いいリズムに乗ることができました。


_後期は先発起用が多かったですが、抑えとの違いは感じましたか

川口 前期は抑えとして、短いイニングを全力で投げ、全部三振を狙いにいっていました。それぐらい圧倒しないと、「最終回何が起こるかわからない」という緊張感があったので。

でも、先発では球数のこともあるし、いかに試合を作るかということを考えていました。球種も増やさないと困るだろうな、という不安もありました。
先発と抑えで大切にすることの順番は違いますが、年齢的にどのポジションでもこなさないとと思っていたので、いつもがむしゃらに投げていました。


_先発も抑えも経験しましたが、NPBで希望するポジションはありますか

川口 個人的には抑えとして評価されたのかなと思っています。任されたところを全力で全うしたいです。


_先発転向後も奪三振率が下がらなかった要因は何だと思いますか

川口 キャッチャーとたくさん話し合って、自分の引き出しを増やしてもらったことが大きいです。球種も増やして、配球パターンもいくつか組み合わせて、と色々工夫していたので、投げていて楽しかったですね。三振を狙えるところは狙って、打たせるところは打たせる、というのをしっかり意識してできました。


_試合数が多い中でどのような準備をしてきましたか

川口 自分が野球で一番大切にしていることが準備です。連戦が続くとコンディションが悪くなったりして、結果が良くない時の言い訳は増えるけど、不安要素をできるだけ無くしたいと思っていました。

長く野球をやってきて投げること以外の勉強もしてきましたし、そういうところにも全力を尽くしました。特にこだわったのはケアとアップと睡眠です。


_試合前後は何をして過ごしていましたか

川口 試合の日は、試合開始の7、8時間前に起きていました。ナイターゲームだと午前10時ぐらいですね。

起きたらまずストレッチをして、ご飯も吸収のされにくいものは食べないように気をつけていました。先発ピッチャーは15時に球場入りするのですが、出発までの時間はストレッチや瞑想などをして、落ち着いた状態で球場に行けるようにしていました。

試合後はまず栄養補給をして、次の日がオフならその日のうちにトレーニングをします。わざと追い込んで疲れさせて、投げた疲れとトレーニングの疲れを合わせて次の日に一気に回復するようにしていました。
トレーニングと治療で合わせて三時間ぐらいかけて、お風呂に入って。寝るのはだいたい三時半ぐらいでした。

「7、8時間前」を身振りで表現する川口投手 この辺りもあざといと言われる所以でしょうか


3.充実の徳島生活

_親交が深かった選手は誰ですか

川口 工藤と中込ですね。二人とも二個下ですが、その差を忘れるぐらいの仲です。

二人とは、ご飯を食べたり温泉に行ったりサウナでたくさん喋ったりしました。野球の話より、普通に友達みたいな会話が多かったです。

工藤とは一回海に行きました。気の抜けない緊迫した生活だったので、たまにそうやって遊ぶととても気持ちが楽になりました。

3投手はグラウンドの中でも外でも仲良し


_野球以外の趣味は何ですか

川口 UVERworldというアーティストが好きで、曲を聴いたりライブの映像を見たりしています。

特に好きな曲は「在るべき形」です。後半の歌詞が自分の今までの野球人生と被っていて、響きました。

登場曲はぜひUVERworldの曲にしたいです!PayPayドームで使ったらメンバーの方が気づいてくれるんじゃないかと思っていて、今までUVERworldの曲にたくさん救われてきたので、感謝を伝えたいです。


_一人暮らしで自炊が多かったと思いますが、どんな料理を作っていましたか

川口 タンパク質は食事で摂るようにしていて、お肉と野菜で動物性も植物性もとれるように気をつけていました。飽きることもあったのですが、味噌汁に好きな野菜を入れて食事の楽しみにしていました。


_徳島で過ごした期間はどうでしたか

川口 やっている間はしんどいことも多くて長く感じました。でも、終わってみればあっという間だったなと思います。
あと、とても住みやすい街だなと思いました!


_徳島での生活でモチベーションになっていたものは何ですか

川口 美味しいご飯です。冒険して新しいお店に飛び込むのが好きなので、オフの日はご飯屋さんを探していました。

そこで出会う徳島の人はみんな優しくて温かくて、良い時間を過ごせました。


_行きつけになった場所などはありますか

川口 沖浜の「ミロクスパイス」というカレー屋さんです。本当に美味しくて、毎週行っていた時期もあるぐらい。店長が球場に応援に来てくれたこともありました。

チームメイトだと、塩﨑、角井、工藤は連れて行きましたね。美味しいのでいろんな人に紹介していました。


4.そして迎えた「運命の日」

_今年1年の取り組みを振り返って、指名される手ごたえは感じていましたか

川口 基本はずっと不安でした。支配下でとってくれるところもあるんじゃないかと思う一方で、やっぱり年齢がネックなのかなとも思っていました。


_指名を待っている際の心境はどうでしたか

川口 中込が3位で呼ばれて、続くかと思ったらそのあとインディゴ勢が呼ばれない時間が長く続いて。自分と同じ高身長のピッチャーがたくさん指名されていたので、希望を失いかけていました。指名を終了する球団もどんどん増えていましたし、似た名前の選手が呼ばれるたびに期待と落胆を繰り返してメンタルがすり減りました。

去年指名漏れした時と感覚が似ていて、今年もこうやって終わるんだな、と思いました。下を向いていて、途中からあんまり聞いてなかったです。
指名された時はまず周りの歓声で気がついて、とても驚きました。


_一番初めに報告したのは誰ですか

川口 お母さんです。自分は高校から実家を離れて寮生活をしていて、自分が野球している姿をあまり見せられていませんでした。それなのにお金を使わせてしまって申し訳ない、という気持ちがずっとあったので、いい報告ができて良かったです。


_周りの反応はどうでしたか

川口 「おめでとう」といろんな人に言ってもらいました。

巨人にいる戸田(懐生・インディゴOB)とも連絡をとって、「頑張ろうね〜」とちょっとゆるめに話をしました。


_戸田投手など、高校でチームメイトだったNPBの選手に対する思いはありますか

川口 負けてらんないなと思います。高校の時は甲子園でプレーしているところを応援する側だったので、やっと同じ土俵に立てたという気持ちです。


_何がドラフト指名に繋がったと思いますか

川口 小さい頃から漠然とプロ野球選手になりたいと思っていて。でもあんまりはっきり見えてこなくて、大学の頃は「まだ野球やってたんだ」とか「まだ続けるの?」とか、否定的な言葉をかけられることもありました。でも、それを乗り越えて、周りの声を気にせずコツコツと努力を続けてきた結果だと思います。


_試合に出られず野球を辞めようとしていた時期の自分に対して、どのような声をかけたいですか

川口 やめなくてよかったなと思っています。「野球続けたほうががいいよ」って言いたいですね。

高校、大学の時はただ頑張っていたというか、頑張り方がわかっていませんでした。遠回りがあって今があるのかもしれないけど、やっぱり若さは魅力であり武器だと思うので、早くからもっと勉強したほうがいいよとも伝えたいです。


_インディゴにきて成長できた事は何ですか

川口 登板数も増えて、たくさん気づきを得ることができました。中でも「自分のフォークがこんなに三振取れるんだ」というのは一番大きい発見でした。球速も上がりましたし、いろんなことを試して日々成長できたと思います。


_ホークスにはどんな印象を抱いていますか

川口 圧倒的な強さを持った最強軍団というイメージです。福岡だけじゃなく全国にホークスファンがいて、たくさんの人に応援してもらえる温かい球団だなと思っています。


_インディゴから投手が3名指名されましたが、他の二人に対してどんな思いがありますか

川口 サウナでも「三人揃って指名されるといいね」と話していたので嬉しいです。

二人の方が先に指名されましたが、NPBに入ってしまえば順位は関係ないと思っていて、二人より先に試合に出たい気持ちはあります。他の四国のピッチャー(横浜DeNA4位・若松投手、東京ヤクルト育成2位・廣澤投手)にも負けたくないですね。自分のやるべきことをやって、彼らと一軍で戦えたらなと思います。


ドラフト後 指名された4選手で記念撮影


5.舞台は福岡へ 川口投手のこれから

_今後の目標を教えてください

川口 まずは支配下登録されることです。怪我に気をつけて、いいコンディションでアピールしたいと思っています。

そして、ゆくゆくはチームの日本一に貢献できるピッチャーになりたいです。ファンがワクワクするような、川口が投げるなら見にいこうと言ってもらえるような選手が理想です。球場の空気を一変できる圧倒的なピッチャーを目指しています。


_これからの課題は何ですか

川口 今までは、得意なストレートとフォークを活かすためにスライダーを投げていましたが、スライダーでも三振を狙えたらもっと幅が広がると思います。いろんな球種を磨いていきたいです。


_楽しみにしていることはありますか

川口 今まで自炊していましたが、NPB球団の食事が気になります。冊子で見た写真では、おぼんにたくさんの種類の料理が乗っていて、栄養のことをとても考えられているんだろうなと思いました。

色々な料理が乗っていたことをまたもや身振りで教えてくださいました


_逆に、不安に思っていることはありますか

川口 名前を覚えるのがとても苦手で…今年インディゴでも苦労しました。同い年の大泉選手と交流戦で喋ったりして、全く知り合いがいないわけではないのですが、新しい環境なのでそこが不安です。

でも仲良くなるのは苦手じゃなくて、普段はヘラヘラしているので(笑)名前を覚えられれば大丈夫かなと思っています。


_対戦してみたい選手は誰ですか

川口 日本ハムの清宮選手です。同級生で、チームとしては西東京大会の決勝で当たっているのですが、そのときは松本(健吾・現東京ヤクルト)が投げていて、自分は神宮のスタンドから見ていました。高校の時に直接対戦できなかったのでリベンジしたいです。抑えられたら高校時代の自分も成仏できると思います(笑)


_清宮選手を打ち取るイメージはありますか

川口 得意なフォークで仕留めたいです!


_チームメイトだった選手とは対戦してみたいですか

川口 高校の一個下の代とは仲が良くて、田中(幹也・現中日)もその一人。当時の自分は控えだったので、田中は僕が野球してる姿をあまり知らないと思います。呼び捨てで呼んだりしてくるので、しっかり抑えて先輩の威厳を見せたいですね(笑)

加藤響(徳島インディゴソックス→横浜DeNA3位)は、ずっと後ろで守ってくれていたので球筋とかもよくわかっているはず。自信はぼちぼちですね…いつかは対戦してみたいです。


_ホークスで話してみたい選手はいますか

川口 武田投手です。登場曲がUVERworldで、話してみたいなと。ずっと見ていた選手なので、もちろん野球のことも聞いてみたいです。

和田投手や有原投手など、いろんな環境でプレーしてきて経験豊富な選手にも話を聞いてみたいです。長く活躍する秘訣や、どういう気持ちで臨んでいるのかが気になります。


_小久保監督や首脳陣へアピールしたいことは何ですか

川口 まずは野球に対する姿勢ですね。バッターに向かっていく姿勢や熱い気持ちを見てほしいです。その中で、得意なストレートとフォークなどいろんな球種を評価してもらえたらと思います。


_投球後に声を出すスタイルは続けていきますか

川口 余裕がないとか気合いを入れすぎだとか言われることもあるんですが…(笑)
短く声を出すことで力を込められるので、今後も出していきます!

投げ終わりの声にも注目です


6.届けたいメッセージ

_インディゴファンにメッセージをお願いします

川口 県外出身の自分も応援してくれて、とても力になりました。
これから皆さんにできる恩返しがあるとすれば、NPBでしっかり活躍してインディゴの名前や価値をさらに上げることだと思っています。
これからも一生懸命頑張ります!本当にありがとうございました!


_ホークスファンにもメッセージをお願いします

川口 熱い思いのこもった全身全霊のピッチングに注目してもらいたいです!
福岡に住むのは初めてで、美味しいものを食べるのが好きなので、ぜひ福岡の美味しいご飯屋さんを教えてください。
皆様に愛されるような、そして日本一に貢献できるようなピッチャーになりますので、応援よろしくお願いします!


_自身と同じ境遇の、今試合に出れていない選手に伝えたいことはありますか

川口 僕は、順調な野球人生じゃなかった自分にしかできないことがあると信じています。高校や大学で光を浴びていない選手たちにとって、希望や道標のような存在になれるよう頑張りたいと思っています。
チャンスはいつ来るかわからないし、粘り強く耐えて努力を続けたら何が起こるかわかりません。
周りが自分に期待していなくても、マイナスの意見に耳を傾けなくて大丈夫。
続けるか、そこで終わらせるかは自分次第です。
夢をぜひ叶えてください。


_ありがとうございました!


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プロフィール

ふりがな:かわぐち とうや
背番号:13
出身:奈良県
生年月日:1999/10/26
身長:187
体重:85
投/打:右/右
経歴:東海大学菅生高ー城西国際大ーハナマウイ


<取材者談>
爽やかな笑顔の裏で、頑張っても芽が出なかった過去や今年にかける覚悟など様々なものを抱えていることが伝わってきました。
遅咲きで夢を掴んだ川口投手の存在は、諦めずに努力を続ける人の希望になると思います。
来シーズンからの川口投手の活躍を、球団一同楽しみにしています。

取材・執筆 岡村美和