『ボナペティ! 臆病なシェフと運命のボルシチ』 試し読み 2(全8回)
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「……何か?」
「何か、じゃないわよ」
佳恵は開き直って肩をすくめた。「作ったものを粗末にされる悔しさっていうのは、私にもよくわかります。学生のころですけど、飲食店で働いたこともありますしね。でも、それをそのままお客にぶつけるってどうなんですか」
突然割り込んできた女に、シェフは戸惑っている。カップルはもちろん、壁際ではお菊さんまで腰を浮かせている。
「なんなんだ、あんた……。悪いが、ここは俺の店なんでね。何をしようと関係ないだろ」
「でもそのおかげ