「北欧での医師としての働き方――パンとコーヒー、そしてキャリアの未来を考える」
大学の夏休みを利用して、私はデンマークとノルウェーに行ってきました。将来、医師としてのキャリアを考える中で、北欧での働き方に興味を持っていたこともあり、現地の生活をじっくり体験してみようという思いからの旅行でした。北欧の福祉国家としての医療制度や待遇の話はよく耳にしますが、実際に住んでみてどうなのか、また自分が働くとしたらどんな生活になるのかが気になっていたからです。
しかし、今回の旅で一番満足したのは「パンの美味しさ」でした。パートナーの知り合いで、日本から夫婦で移住してパン屋を営んでいる方たちにお会いし、彼らのおすすめの北欧のパン屋をいくつか回りました。特に気に入ったのは、カルダモンロール。北欧特有の香り高いカルダモンが使われたこのパンは、シンプルでありながらも深い味わいがあり、一度食べたら忘れられません。サワードゥも美味しかったのですが、やはりカルダモンロールが一番の衝撃でした。チェコに戻ってからも、同じようなクオリティのパンを探してみましたが、なかなか見つからず、北欧のパンは特別だと改めて感じました。
それだけではありません。北欧のコーヒーの美味しさにも感動しました。もともと私は自宅で豆を挽いてコーヒーを楽しむタイプですが、北欧のコーヒー文化は一歩上を行く感じがします。浅煎りでフルーティーな香りが特徴の北欧のコーヒーは、インスタントコーヒーにはもう戻れないほどの鮮烈な体験でした。北欧のカフェ文化が日常の一部として根付いているのも、この地域の魅力の一つです。
そんな北欧の生活に触れて、ふと思ったことがあります。日が長いシーズンには北欧で医師として働き、冬は日本で過ごすというライフスタイルも悪くないのではないか、と。実際、北欧での医療従事者のキャリアには多くの魅力があります。けれど、同時に、日本でのキャリアの進展に疑念を抱いている自分もいます。特に、経験値を積むという観点から、日本では上級医の許可が降りるまで時間がかかることが多く、実践的なスキルを身につける機会が限られていると感じることがあります。一方、欧州の大学では、学生のうちから縫合を含む実際の医療行為を経験することができる場面が多く、実践的な訓練が充実していることに魅力を感じます。
また、北欧で働いている夫婦の話を聞くと、最初は物価や税金の高さを心配していたが、実際に住んでみるとそれほど苦しくないという話も興味深かったです。北欧は物価が高いと言われますが、その分給与も高く、税金も福祉として返ってくるので、全体的な生活コストは日本と大差ないのだとか。旅行者として訪れると高く感じるかもしれませんが、現地で仕事をして生活する分には非常にバランスの取れた経済システムだということです。
北欧での医師としての働き方――物価や税金は高いが、バランスの取れた生活
まず、北欧での医師としての働き方についてですが、デンマークやノルウェーは福祉国家として、医療従事者に対する待遇が非常に手厚いことで知られています。医師の労働時間は法律で制限され、週37時間程度が標準となっており、長時間労働は避けられるシステムが整っています【OECD, 2020】。これは、医師が健康的な生活を送りながら、持続的に働けるための環境づくりが行われているからです。
さらに、北欧では充実した福祉制度が整っており、税金は高いものの、その分社会保障や教育、医療に多くが還元されています。例えば、デンマークでは税金の約50%が社会福祉に使われており、医療費や教育費が無料、または非常に安価で提供されています【European Commission, 2021】。これにより、医療従事者として働く上で、安心して生活することができます。
北欧での生活費が高いとよく言われますが、実際に住んでいる人の話では、給与水準も高いため、生活が苦しく感じることは少ないとのことです。特に、医師の給与は他の職業に比べて高く、税金で引かれる分も福祉として返ってくるので、全体的な生活水準は非常に高いです。
北欧と日本の医療教育の違い――実践的な経験を積む機会の差
日本の医学教育は非常に理論重視であり、現場での実践的な経験を積むには上級医の許可が必要です。これには時間がかかることが多いらしく、学生や若手医師が早期に実践的なスキルを身につけることは難しいと感じる場面が多いかもしれません。(場所と人にもよると思いますが、、、)しかし、欧州の医学教育では、学生の段階から実践的な訓練が充実しており、縫合や患者の処置など、実際の医療行為を経験する機会が多いのが特徴です【Dyrbye et al., 2014】。
この違いは、医師としての成長に大きな影響を与えます。日本では、研修医や若手医師が現場でのスキルを磨くために、長い時間をかけて準備することが求められますが、欧州ではより早い段階から経験を積むことができ、実践的なスキルを身につけるチャンスが多いのです。
北欧の食文化と健康的なライフスタイル――カルダモンロールとコーヒーの魅力
さて、北欧での医師としての働き方だけでなく、日常生活での楽しみも重要です。北欧のパン、特にカルダモンロールは、私にとって最高の発見でした。シンプルでありながらも深い味わいがあり、カルダモンのスパイスが生地に絶妙に溶け込んでいます。日本ではなかなか同じクオリティのパンを見つけることができず、北欧の食文化の奥深さを改めて感じました。
また、北欧のコーヒー文化も、日常の生活に彩りを与えます。浅煎りでフルーティーな味わいが特徴の北欧のコーヒーは、他の地域とは一線を画すものです。コーヒーには抗酸化作用があり、適度に摂取することで集中力を高め、仕事のパフォーマンスを向上させる効果があります【Einöther & Giesbrecht, 2013】。日常的に質の高いパンとコーヒーを楽しむことは、心身の健康にとってもプラスに働くでしょう。
医学的視点から見る北欧での働き方と生活の影響
北欧で医師として働くことは、ワークライフバランスを保ちながら、やりがいのあるキャリアを築くために非常に魅力的な選択肢です。労働時間が適切に管理されており、福祉制度が充実しているため、医師としてのキャリアを安心して積み重ねることができます。
一方、北欧特有の気候に注意が必要です。冬の間は日照時間が極端に短くなり、「季節性情動障害(SAD)」という精神的な不調に悩むこともあります【Rosenthal et al., 1984】。SADを予防するためには、ビタミンDの摂取や光療法が有効であり、適切な対策を講じることで健康を維持することが可能です。
結論:北欧での医師としての働き方は魅力的な選択肢
北欧で医師として働くことは、充実した福祉制度やバランスの取れた生活、そして豊かな食文化が魅力的です。カルダモンロールやコーヒーの美味しさに加えて、医師としてのキャリアを築く上での実践的なスキルの向上も期待できるため、北欧での生活は大いに価値があります。
参考文献
OECD (2020).
Organisation for Economic Co-operation and Development, “Health at a Glance 2020,” OECD Publishing.
• 北欧の医療制度と医師の労働環境に関するデータ。
2. Dyrbye, L. N., et al. (2014).
Dyrbye, L. N., et al., “Burnout among medical students: the role of student mistreatment,” Medical Education, 48(3), 282-290.
• 医学教育と学生の経験に関する研究。
3. Einöther, S. J. L., & Giesbrecht, T. (2013).
Einöther, S. J. L., & Giesbrecht, T., “Caffeine as an attention enhancer: reviewing existing assumptions,” Psychopharmacology, 225(2), 251-274.
• カフェインと認知機能の関係に関する研究。
4. Rosenthal, N. E., et al. (1984).
Rosenthal, N. E., et al., “Seasonal affective disorder: a description of the syndrome and preliminary findings with light therapy,” Archives of General Psychiatry, 41(1), 72-80.
• 季節性情動障害と日照不足に関する研究。
5. European Commission (2021).
“Taxation trends in the European Union: Data for the EU Member States, Iceland and Norway,” European Commission.
• 北欧諸国の税制と福祉に関するデータ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?