ゲームソフト開発者から見たswitch互換のメリットとデメリット(switch次世代機の話)
switchの次世代機にswitch互換機能がある事が正式に公開されました。
switch互換が発表されたせいで今後は新規ユーザーはswitch本体の購入をやめて次世代機待ちになる人がかなり増えてしまうのではと思います。
「今switchや有機EL版を3,4万円出して買うより、少し待っていくらか金を足して互換のある次世代switchを買った方が断然良い」と考える人が多く出てくるでしょう。
海外ではすでにswitch本体の売れ行きに大幅にブレーキがかかっていて、日本市場だけはハードの売れ行きが健闘しているものの、これについては東洋証券の安田秀樹氏が何度も何度も記事で指摘しているように、「日本のswitchは為替を無視してかなり安い価格(ドル換算で)で販売しているため、日本以外の国への転売需要でも売れている」というのがあるのでしょう。
為替を無視して日本では1ドル110円換算くらいで売っているため、日本でswitchを購入して海外で売るとそこそこお金が稼げます。
ソフトも今は他国の言語が選択できたりするのも多いため、ソフトもセットで買われたり。
次世代機でswitch互換機能が付く事は、ソフトメーカーにとってはメリットもあれば大きなデメリットもあります。
今回はそれについて少し語ってみたいと思います。
<いちいちswitch次世代機に移植する必要が無くなった>
一部のゲームはswitch版とは別にswitch次世代機版もまた出すという事をするかと思います。
ただ、unityやunreal engineで作られたゲームであってもswitch次世代機に出そうとするとかなり手間がかかったり、実際は出すのが無理なタイトルもあるのです。
任天堂に限らずソニーやMSの新ハードでもそうなのですが、「新しいハードはかなり古いバージョンのunityやunreal engineには対応しておらず、新ハードが対応しているバージョンでビルドし直さないといけない」というのがあります。
switch互換がもし無かったらswitch次世代機に対応したバージョンのunityやunreal engineでビルドし直して出すはめになりますが、ゲームエンジンはバージョン変更をするとそのまま問題無く動くという事はあまりありません。
何らかのバグや不具合が新たに発生するためにその修正に結構手間がかかってしまいます。
当時そのゲームのプログラミングに関わっていた人はすでに別のゲーム開発に移行している事が多いため、元のプログラマーを呼び戻してバグの修正をさせるか、新しいスタッフに担当させて修正させるか悩ましいところです。
プログラムはどこかをいじるとまた新しいバグが出てしまう事もよくあります。
また、ゲーム製作で使っている内製や外製のライブラリの中には途中で更新が止まっていて昔のバージョンのunityやunreal engineでないと正常に動作しないというのも結構あります。
新しいバージョンで使うとバグが出たり、そもそも動かなかったり。
そういうゲームは内製の場合はライブラリを今から更新したり、あるいは外製で自由に更新できない場合は似たような物を新たに作るはめになる事もあり、それができない場合はswitch次世代機への移植を断念するはめになってしまいます。
PS4やXBOX ONEで出てswitchで出ていなかった色々な昔のゲームは今後switch次世代機に登場すると思いますが、これが理由で出せないゲームも一部あるでしょう。
しかしswitch互換が付けばいちいち移植する手間をかけずとも、switch版がそのまま動くというありがたい事になります。
PS5でもPS4版は出ているのにPS5版が一向に出ないゲームがわりとありますが、これらも先に書いたのと同じような理由でPS5版が未だに出せていないのです。
unityやunreal engineで過去に作られたゲームを最新ハードで出そうとすると、もし互換が無いと出し直すのにユーザーが思っているより手間やコストがかかってしまうのです。
<大量のソフトもそのまま引き継ぐため、インディーゲームの売れなさは今後さらに悪化していっても改善はされない>
インディーゲームは色々なプラットフォームの中でswitchが一番売れていると思います。
次点がsteam、ワールドワイドで見るとPSプラットフォームもゲームによりますがswitch版の7,8割くらい売れているのもあります。
ただ、その一番売れているswitch市場であってもソフトがすでに一万種類を超えてしまっているため飽和していて、もう個々のインディーゲームの売れ行きはかなり悪化しています。
互換機能で過去の作品を遊べるという事はそのレッドオーシャン化している市場をリセットせずそのまま引き継ぐ事になり、インディーゲームの売れなさは今後さらに悪化はしても改善されるという事はありません。
また今後はフロムソフトウェアのエルデンリングやsekiro、ダークソウルIIIや他メーカーのマルチタイトルがswitch次世代機でもどんどん出るようになり、カプコンのドラゴンズドグマIIやモンハンワイルズ、スト6などもスペック的にグラフィックがだいぶ劣化するもののswitch次世代機でも遊べるようになるでしょう。
カプコン以外のメーカーのマルチソフトも。
それらがセールの時にそこそこ安い値段で買えるようになるとインディーゲームではなく元フルプライスソフトのセール品の方を買うという人がswitch次世代機ではかなり増えてしまうため、以前のswitch市場のように「インディーゲームが結構売れる」というのはもう完全に期待できないと予想されます。
これについては過去の私の「ゲームの売れ行きアップ方法」という連載の
という記事でも詳しく解説した通りです。
インディーゲーム開発以外でもきちんと収入がある開発者や会社はともかく、インディーゲームでしか利益を得られない個人や会社は今後は生き残りはかなり難しくなると思います。