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新規就農者なんて焼け石に水?:農業者減少&耕作放棄 問題解決の方向性

MIKI FARM MAGAZINE vol.8
信仰3世で元宗教家。現在は新規就農に向けて準備中。ちょっと変わった視点から、農業に触れて学んだこと感じたことを綴っています。
農・アート・信仰と3つのテーマからコラムを綴っていますが、今回は農業にテーマを絞って”新規就農”について考えます。


新規就農支援がありがたい

私は現在、熊本県は南阿蘇村にて、新たに農業を始めるための準備を進めています。

前職は宗教家、農業は全くの未経験。これといった事業資金の準備なし。

こういった状況からでも農業を新たに始めることを具体的に考えられるのは、新規就農にあたって利用できる国と自治体の支援があるおかげです。

新規就農支援は主に4つ。

①就農準備資金
就農前の研修を後押しする資金
月12.5万円(年間最大150万円(最長2年間))交付

②経営開始資金
就農直後の経営確立を支援する資金
月12.5万円(年間最大150万円(最長3年間))交付

③経営発展支援事業
就農後の経営発展のための機械・施設の導入を支援支援額: 補助対象事業費は上限1,000万円
(②も併せて受ける場合は上限500万円)
補助率: 都道府県支援分の2倍を国が支援
(国の補助上限1/2)

④青年等就農資金
市町村から青年等就農計画の認定をうけた認定新規就農者を対象にした無利子融資、実質無担保・無保証人。
農業経営を開始するために必要な農業生産用の施設・機械の整備のほか、長期運転資金など幅広い用途に対応し、借入限度額は3700万円。

5年間の長期に渡って金銭的支援があるだけでなく、厚遇された条件で融資を受けられます。
無利子・無担保で利用できる上、償還期限17年以内、うち据置期間は5年。他に類を見ない好条件です。

私が農業に挑戦できるのも、この4つの支援施策を始めとした国と自治体の後押しがあるおかげで、本当にありがたい制度です。

ですが、これだけ新規就農者が手厚く支援されているのは、それだけ今の農業が支援を必要としているということでもあります。特に、農業人口の面で。

新規就農者なんて焼け石に水

農業従事者の平均年齢は2025年、いよいよ70歳に迫ろうとしています。全体の8割以上が60歳以上、深刻な高齢化が進んでいます。

現在の農業者の多数を占めるのはいわゆる団塊の世代の皆さん。これまで日本の農業を支えてきたこの世代が、いよいよ農業を続けることが難しくなってきます。現時点でも70代の皆さんが現役、それどころか主戦力として農業を担っておられることには頭が下がるばかりなのですが…現実的に、いつまでもそれに甘んじられるものではありません。

新規就農支援はこうした状況を何とかするための施策です。
しかし私が実際に新規就農に向けて準備を進める中で聞こえてきたのは「焼け石に水」という言葉です。

国が公金を投じて新規就農を斡旋しても、それを上回る勢いで農業人口は減り続けています。
それに伴い、全国各地に耕作放棄地が広がっており、累計で40万ヘクタールを超えているとのこと。

農業人口の減少と耕作放棄地の増加に歯止めが掛からない状況で、求められているのは農地の集約、大規模化とそれを一手に担う大農家。

国としては一番支援したいのはそういう農業である、ということが痛いほどよく分かるようになってきました。
同時に、私個人ではそんな農業の担い手にはとてもなれない、ということも分かってしまいました。

そういった意味で、私のような新規就農者がちょっと増えたところで「焼け石に水」なのです。

農業界を取り巻く現状は、なかなか厳しいものです。

ですが、私もこうして国の支援を受けて新規就農しようと決めた以上、何らかの形で貢献したいとも思う訳です。
「私のような、新規小規模零細就農者の役どころって、どういうところにあるだろうか?」
それを見出だせていないまま、ただ農業を始めたいから始める、ということではとても立ち行かないだろう、と。

思い至ったのは、逆転の発想。新規就農者だからこそ、小規模農家だからこそ、果たせる役割がある、ということでした。

”集約”ではなく”シェア” 私でもできること

耕作放棄地40万ヘクタール。これは滋賀県全体がまるまる覆われてしまう程の広さで、個人がどうこう出来る規模感のものではありません。

ではこれを日本の人口、1.2億人で割るとどのくらいの広さでしょう?

たったの0.3アールです。

1アールは100平米(10m × 10m)ですから、その3分の1。これは農家でなくとも、個人の家庭菜園として充分に管理できるくらいの広さです。むしろ丁度いいくらいですね。

農家として新規参入しても「焼け石に水」だと一蹴されてしまう私ですが、耕作放棄地の問題を国民全体で考えるなら、0.3アール分の責任はもう十分果たしていますので胸を張ってて良いはずですね(笑)

問題と向き合う視点を変えてみれば、私にも力になれる部分があると思ったのです。

国の方針としては増加していく耕作放棄地を残された農業従事者でいかに担っていくかを考えていますから、当然ながら農地集約・大規模経営という方向性になります。そういう方向性に対して関わりシロを持てる人というのは、農家の中にもそれほど居ません。

大規模集約化という方針にはそもそも無理がある、というか大多数の人にとって”どうしようもない”というのが、新規就農者である私個人の感想です。

問題を少ない人数で負担することよりも、いかに大人数でシェアするかを考えることの方が、私にとっては現実的な解決方法として考える余地がありました。

例えば、先ほど書いたように耕作放棄地の問題を「国民一人あたり0.3アールの畑を持ちましょう」という非常にシンプルな目標に落とし込んでみます。

皆さんほとんどの方が畑を耕した事なんかないでしょうし、興味も持っていません。
でもそういう方たちに対して、「いや、畑仕事ってやってみたら面白いよ?」「畝作りまで手伝ってあげるから、やってみない?」と、農業の魅力を伝えたり、一緒に土いじりを楽しんだり、そのぐらいのことであれば私にもできそうです。

むしろ、ゼロからスタートしたばかりの新規就農者であればこそ、農に触れる新鮮な喜びにあふれています。農業が抱える問題についても、学び始めたばかりだからこそ真摯に向き合える、そんな側面もあるはずです。

ド素人ならではの新鮮な感性で農業を身近に発信していく役割を、新規就農者は担えるんじゃないだろうか?そう思います。

個人が発信する情報でどのくらいの人の気持ちを動かせるか、せいぜい頑張って100人程度でしょうか?

ではそれを新規就農者1万人それぞれが取り組めば?

100万人になりました。

そこからさらに、発信を受け取った人たちが身の回りの近しい人10人くらいに伝えてもらえたら、1千万人です。
それを10年続けたら?1億人!目標に近づいてきました。

本当の問題解決はそんなに簡単なものではないでしょうが、途方もなく大きな問題を少数に負わせるのではなく、頑張ればなんとか出来る課題を皆でシェアしていく、という方向性に未来を感じています。

せっかく「農業始めてみよう」と思い立ったのですから、その気持ちそのものを身近な人たちと共有していけたら、その延長線上に私が農家として身を立てていく道も見つかるかも知れません。

0.3アールの畑、あなたもやってみませんか?
畑仕事、ホントに気持ちいいものですよ(⁠^⁠^⁠)

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