なぜ、パルワールドのPS5の日本版は、販売しないのか? ~共同不法行為を避けるSonyのリスクマネジメント~
このニュース記事をみたときに、ポケットペア(パルワールド)側の判断なのか、Sony(PS5)側の判断なのか気になりました。
パルワールドの経営者は、割と強気な姿勢でことを進めることが多いので、こういう訴訟の状況下においても、売り上げを重視して、日本でも販売する選択もあったはずです。
パルワールドは、自社でゲームプラットフォームがあるわけではなく、PS5やSteamといったゲームプラットフォームからダウンロードする形をとっています。
そうなると、プラットフォーム側(PS5、Steam)の許諾を得ないと販売することができないです。
特許権を侵害するということは、民法709条における不法行為に該当します。
更に、その侵害に関与するものが関係者が複数人いる場合、民法719条に記載の「共同不法行為」を満たす可能性があります。
※ここで侵害に関与するの意味は、特許の請求項の構成要件を複数人で充足するという意味ではなく、侵害した製品が「製造~販売」される、その商流における関与者という意味になります。
法律を理解するには、複数の法律を理解しないと、その本当の効力が見えてこないです。
特許の請求項の構成を満たすのは、パルワールドだから、プラットフォーム側の法務・知財部員は、知らん顔をするのは、素人判断になります。
今回は、著作権侵害ではないので、プロバイダ責任法までは、考慮しなくても良いかもしれませんが、知的財産権(特許、著作権、商標、意匠)侵害はどれで侵害するかによって、派生して使える法が変わります。
※ダウンロード販売や、オンライン接続ゲームの場合、ゲームプラットフォーム側はプロバイダ責任法の範囲なのかなと思います。
それ故、ビジネスを有利に進めるには、広範囲な法域の理解が必要になります。
よって、
今回のパルワールドPS5の日本版の販売を控えたのは、Sony側からの要請なのかも
しれません。
※外国の特許がないという前提になりますが。
このように、少ない断片的な事実から、法律家達の絶妙なスキームが見え隠れするのが面白いです。
皆さんも、法律を勉強して、こういう事件が起きた際に、「中の法務担当者はこういう考え何だろうな」を想像して楽しんでください。
そういう仮想シミュレーションを行うことで、自分たちが法律問題に巻き込まれないようにしましょう。
(執筆:得地)