発明少女は、大人の「職業:発明家」になれるのか ~プロ(本物)の発明家への道~
メディアは、若くて特別なことをしている人がいると、もてはやす傾向にあります。
もちろん、何も行動をしていない人と比べれば、とても良いことです。
ただし、ちゃんとしたスキルや知識がないと、メディアや、若者を食い物にしようとする悪い大人にかもられてしまいます。
今回の発明少女も、その辺りは気を付けて頂きたいなと思います。
今回の発明者自身と、その保護者などがしっかりしなければなりません。
悪い大人にかもられないために、本格的な「特許の請求項」チェックをしましょうか。
「請求項」が特許の質(権利範囲)を左右するので、ここが大事です。
他の記事では、さほど、こういうところを触れないと思いますが、知財部員としては、「請求項」の表現が特許の全てといっても過言ではないです。
それでは、発明(特許7503721)の内容と請求項をおさらいしましょう。
発明の内容は、「虫を捕獲して駆除する装置」になります。
請求項は、以下の通りです。
◆請求項のアドバイス
★不要な限定その1
先ずは、「直方体形状」の形状という、表現で虫を捕獲する容器を限定しているのが、いまいちな気がしますね。
直方体であることが、特許性(新規性・進歩性)に寄与しているとは、あまり思いません。
別に、球体の形状、楕円系の形状であっても良いでしょう。
★不要な限定その2
「天面に鉄部を有する」も、違和感がありますね。
鉄に限定する意味が本当にあるのでしょうか?
後の構成に、この虫を捕獲する容器を掴むマジックハンドが出ます。
そのマジックハンドに「マグネット部」が出てきます。
このマグネット部と鉄部が磁力でくっつくから良いのかもしれませんが、磁力を発生する金属は「鉄」だけではないです。他の素材が技術として選択する可能性はあります。
また、競合が類似品を作ろうとしたとして、この鉄の部分だけを変えれば、特許を回避できる権利は弱すぎますね。
更に言えば、磁力でくっつく機構に限定する必要もないと思います。
マジックテープや吸盤、ゲル状の吸着素材など、くっつけるという発明の本質機能に着目すれば、磁力以外の選択肢も見えてきます。
★不要な限定その3
マジックハンド部も、なかなかの表現ですよね。
冒頭の「棒状」の限定も何でする必要があるのか?
棒じゃない形状もあると思います。
「物体を把持するマジックハンド部」の表現が、正直、素人感が凄い。。。
知財部員の常識として、特許では「~する~部」と、記載するのが普通で「把持する把持部」が常識だと思います。
本来は、謎の「マジックハンド部」という言葉を使いたくないから、「~する~部」という機能表現をしているのに、結局、マジックハンドを使うんかい!という突っ込みが業界人ならします。
これを担当した明細書の担当者が、頭の中が「マジックハンド」何ですよね。
この思い込みが入ると、明細書が怪しくなります。
冷静に、「マジックハンド」じゃなくても良いんじゃない?という目線が必要です。
そもそも「手の形状」じゃなくて良いんですよ!アーム部とか、もうね、「マジックハンド」ありきの発明にしてしまっているのが、間違った方向性の始まりですね。
★まとめ
上述したように、特許明細書を書くプロである特許事務所であっても、幾つも修正点があり、発明少女の特許は、もっと良い特許になった可能性があります。
※もちろん、広くし過ぎると、特許にならない可能性はあります。色んなバランスによって、特許庁の審査官は、判断していますので。
しかしながら、こういう議論を特許出願前に特許事務所の弁理士と議論したうえで、特許出願すると、良い特許が生まれます。
そのためには、発明者自身・発明者の支援者が知識とスキルを身に着けて、特許事務所の言いなりから脱却しましょう。
特許事務所の担当者ばかりが、悪く聞こえますが、そういうことでもないです。特許事務所の弁理士は、発明者の意見を尊重するので、発明者が言わないことは、勝手に脚色しないように敢えてしていることもあります。イマイチな特許が出た場合は、発明者の言いなりで、特許事務所の弁理士が書いた結果とも言えます。
優秀な人の能力を最大限引き出すためには、自分自身も優秀にならなければいけません。
そうしなければ、発明者は「お金」ばかりが、「特許事務所」、「特許庁」にむしり取られ、何の意味もない浪費になってしまいます。
自分を伸ばした先に発明○○という形容がなくなり、「発明家」としての肩書が自然とついてくるのではないでしょうか。
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