注釈の多い生活(※)
シャンプー、整腸薬。
テレビのコマーシャルは印象的なキャッチコピーが大切。
数秒の間にひとことで目を引くようなものを。
SNSが普及して文字、言葉に溢れたこの時代。数多の情報の中から、人々の目に留まらなければいけない。
けれど、嘘もいけない。抽象的な表現は印象を残すけれど信頼を得られない。
そんな時大活躍なのが「米印(※)」
画面の隅っこに度々登場して、キャッチコピーの補足をしてくれる。
※使用感のこと
※個人差があります …等々。
毎画面ごとに登場しては、補足活動に忙しい。
それも一瞬で読めるのかというほどの補足をしてくることもある。
日常生活にもこんな風に注釈が使えればいいのに。大方の人は、言葉の裏に、また奥底に言い切れぬほどの言葉が隠れているに違いないから。
思えば思う程、言葉は簡潔になるし、心が無ければ無いほど、冗長的になる。
言えない本音をちょこっと「※」で補足できたらいいのに。
言語情報と非言語情報(表情、ジェスチャー、記号)では非言語情報が伝えられる割合の方が遥かに高い。
実際に言語聴覚士の仕事をしていて、言葉を話せなくなった患者さんの中にも、上手に非言語情報だけでコミュニケーションを取る方もいた。
時として、言葉でないものが言葉を上回る時がある。
「演技の上手い人」といわれる俳優達はきっと、セリフ以上のものがあるのではないか。
私達の生活にコマーシャルの様に、※は上手いこと登場してくれないけれど、仕草、表情、態度で伝わることは沢山ある。どんな場面においても。
そんな事を思いながら、私はテレビで流れていた、あのコマーシャルのシャンプーをドラッグストアで手に取っているのであった。