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3学期、「作家の時間」のはじまりはこんな感じだった。

みんなは、3学期の授業をどんなふうにはじめていったのだろう。例えば、僕の場合、「作家の時間」をこんなふうにはじめてみた。というのを書いてみようと思う。

ちなみに、12月の最後は、作家の時間についての「書き手自身に聞いてみる20分間インタビュー」をして、終わった。そこから冬休みを挟んで、3学期のはじまり。(インタビューのことはこちらに)


「作家の時間」についてのインタビューを本人たちと再現

「作家の時間」は、だいたい午後にやる。1時間と15分、お昼休みを思い思いに過ごした子どもたちが時間になるとわらわらと集まってくる。3,4年生27人。僕が準備しておいたのは、「書き手自身に聞いてみる20分間インタビュー」の書き起こし文(インタビューは話し手が子ども2人、聞き手書き手は僕)を印刷してホッチキス留めしたものを三部。部屋の前方には、椅子を三脚。

「ちょっとさー、この前のインタビューをみんなに紹介してみたいんだけど、いい?」

「え〜、いいよ〜。笑」

「でさ、ただオレが紹介しても仕方ないから、それぞれ喋ったところをその時話していた感じが伝わるように読んでくれない?」

「え〜、いいけど。笑」

授業が始まる数分前。交渉はすんなり成功。2人のうち1人は別のグループなので、代わりに別な子になりきってもらうことに。原稿をそれぞれに渡して椅子に座ってもらう。時間になって、「おーし、はじめるぞ〜」と口火を切り、全員集まるのを待たずにスタート。

「2025年はじめの作家の時間だけど、早速ですが、まずは、とあるインタビューの再現を見てもらうところからはじめます。“自分だったら”を考えながら聞いてね。じゃあ、いきます。」

・・・

「最後に聞きたいのだけど。2人の中で、書き手として、作家として、もっとこうなりたいなーみたいなことってある?」

「まず、ちゃんと締め切りを分かっているっていうことかな(笑)。」

「自分が書いてる作品をあんまり見られたくなくて、出版してもみんなに見てねとかあんま言えないけど、ちゃんと見てもらって、ファンレターとか貰って次に活かせるような感じにできたらいいなって思う。」

「もっと面白い作家になりたい。面白い話が作れる作家みたいな。小説を書きたいんだよね。暗号クラブとかデルトラクエストみたいな感じ。」

「だけどそういうのってさ、多ければ250ページとかいくし、俺らが書くにしても結構時間を取りそう。30くらいはいけるかもだけど、ちょっとそういうのが難しいから書けないみたいなーみたいなこともある。」

「なるほどね。聞けてよかったわー。ありがとう。」

・・・

インタビューからわかったのは、もう3,4年は作家としての経験を積み重ねてきている彼らには、はっきりと「こうなりたい」「こうしたい」の輪郭が見えているということだ。

いや、まだはっきりとはしていないかもしれないが、自分なりに考えるには十分体験してきているように思う。書き手としてのアイデンティティが芽生えはじめる。10歳は、そろそろそういう時期でもあるんだな。

「こんな作家になりたい」を言葉にする

そんなわけで、まずは、自分の作家ノートに「こんな作家になりたい」を言葉にしてみるところからはじめる。新年の抱負とか、目標とか、そういうふうには表現しない。「こうなりたい」という自分自身の思いや願い、のびようとしている方向性みたいなものを言葉にして掴んでみる。まだ気づいていない自分を発見するつもりで。

まだ「こうなりたい」がぼんやりしていて、捉えようがない人は、友だちとおしゃべりしたり、ライブラリーにある本の中から憧れの作家の本を持ってきて考えてみたりしてみる。短くても、何となくでも、仮置きでもいいから、言葉にしてみる。

「おれ、意外な結末が書ける作家になりたいんだよね。」
「シャーロックホームズみたいな本を書けるようになりたい。」
「小さい人にも読んでもらえるものを書きたい。」
「笑える本が書きたいんだよね。あいつみたいに。」
「楽しみながら書ける人になりたい。」

すぐに言葉になる人もあれば、うーんと時間いっぱいこれだけを考える人も。まだ言葉になりそうにない人は一旦保留。どこかで言葉が見つかるといいね。

それぞれキリのいいところで、作家ノートに新作の題材を考えたり、下書きの続きを書き始めたりして、新学期の作家活動に入っていった。

授業の終わり5分前。近くでペアを作って、30秒間、「こんな作家になりたい」を相手に語ってみる。言葉にならなくとも、30秒間、うーんと考えてみる。聞き手は、関心を向け続けること。どんな姿勢で聞くかによって、目の前の人が語れるものも変わってくるからね。もちろん、語り手が苦しんでたら質問でサポートもOK。

30秒間であれば、ギリギリ語ることができそう。では、ペアを変えて、次は45秒間。さっきよりも15秒増えた。その分、情報を足さないといけない。つまり、もう少し詳しく語ってみる。視点を変えて語ってみる。はじめて言葉になった!そんな発見があったかな。

「自分なりの言葉で、自分自身を語る」からはじめる

3学期のはじまりは、こんなふうにはじめてみたわけだが、ここには、僕自身の子どもたちに対する思いというか、願いというか、伝えたいことがはっきりとあったんだと思う。

いわゆる「目標を立てることが大事だ!」みたいなよくある話ではない。「自分より遠くにある何者かになること」を目指してほしいわけでもない。

むしろその逆。もっと手元にある、「自分なりの言葉で、自分自身を語る」ことを書き手として大切にしてほしい。そして、そのためには、お互いにお互いの思いに関心を寄せ合うこと。まずはそこからはじめた。

そう思うと、「こんな作家になりたい」よりも、もっと別ないいお題があった気もするが、こういうプロセスが実際の子どもたちのインタビューから生まれたという事実も今回は大事にしたかったことなので、まあ、いいでしょう。

今すぐ言葉にならなくてもいい。でも、「オレって、どうなりたいんだっけ」を何度も問うてみること。聞いてもらうこと。

まだ全員の「こうなりたい」を聞けてないから、追い追い聞かせてもらおう。すでに、受け取って、ミニレッスンにしてレクチャーしたいことも見えてきた。

さて、今年度残り3ヶ月。いや、授業自体は10時間ちょっと。書き手として自分自身を目一杯のびやかにのばしていってほしい。そして、それを最大限支えていきたいと思う。時にはスパイスも加えつつね。たのしみだ〜。

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30代になったばかりのぼく、「とっくん」こと片岡利允が、「きょういく」と「はたらく」にまつわる、日々の気づきや関心ごとについて綴っていく雑…

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