To Call 2
~幼馴染みのボクらの話 シリーズ 8~
花穂は会話の邪魔になってはいけないとその場を離れて、その様子をわくわくと見守っているとふいに自分の携帯が鳴る。
あまりのタイミングの悪さに眉を顰め、一瞬無視してしまおうかとも思ったが、大事な連絡かもしれないと思い直し、渋々電話に出た。
「はい、もしもし」
しかし、先方からの返答がない。不審に思ってもう一度呼びかける。
「もしもし?」
「俺」
「はい?」
その声に花穂は素っ頓狂な声を出す。声の主は大介だった。
「ちょっと、なんであたしに掛けて来てんのよ? 朝の寝ぼけがまだ覚めないの? それともふざけてんの? あたしは好きな人に掛けろって言ってんだけど? 別に今すぐ告れって言うんじゃないわよ? 些細な、微々たる一言から始めるのが大事なんであってね」
冷ややかに、呆れた顔でこんこんと言い諭そうとする花穂の言葉を大介が遮る。
「だから、掛けてんだろ!?」
「は? 何言ってんの? あんたあたしの言った意味分かってんの?」
やきもきと叫ぶが、返ってくる声は益々苛立ちの混じった不思議そうな声。
「だからオメーだよ!」
叫ぶように張った声が、受話器と受話器を通り越して直接耳に届く。
「え?」
花穂は目を丸くして、携帯を持つ手の力を緩ませた。
「俺の好きな奴は俺の目の前。……お前だよ花穂」
改めて受話器にそう話しかけ、大介は頬に朱を走らせる。
一瞬ぽかんと恥じ入る大介を見つめるが、ちっとも頭が付いて行かなかった。
だが、瞬きした途端脳が突然理解して、花穂は電光石火のごとく赤くなる。
そして、混乱し、困惑し、羞恥にプルプルと震わせながら沈黙していた。
緊張と気まずさからくるこの独特の空気に、それでも何か答えなきゃと受話器を耳に当てる。
「言っとくけど『電話しろ』っつったのお前だかんな」
「うん」
照れ隠しでぶっきらぼうに言う大介に、花穂は緊張して真っ赤になって頷く。
「どこまで鈍いんだ?」
「ごめん……」
「まあ、別に今更だけど……」
「うん、ごめん」
「で?」
溜息交じりに大介が言う。
「え?」
「返事。……一応俺、告白してんだけど?」
困ったように笑って、髪をいじる。
「あ、あの……」
はっとして、答えようと口を開く。
固唾を呑んで花穂の答えを聞こうと、受話器を一層耳に近づけた。
実際目の前にいるので意味がない行為なのかも知れないが、何というか恥ずかしさ緩和。いわゆるクッション的役割を果たしている気がして、お互い何となく携帯電話を離せないでいた。