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心のふるさとを見つけて

今年も隣の集落にある古民家の正月行事に参加した。
ミズキの枝に繭玉を飾り、住民有志が神楽を舞い、杵と臼を使って餅つきをして、コマやけん玉など昔ながらのおもちゃで遊ぶ。
息子は、今回初めて餅つきにも挑戦した。
娘は、繭玉飾りや神楽を真剣な眼差しで眺めていた。
こういう経験が、故郷での思い出として、子どもたちの心の中にほんの少しでも残っていてくれたらいいな、と思う。

この古民家は、住民有志を中心とした団体によって、長年様々な形で利用しながらの保存活動が行われてきた。
自分や家族の暮らしだけでなく、地域のために動き回る人たちの姿はとてもかっこいい。
そういう人たちの熱い想いに触れるたび、ますますこの地域が好きになるし、そういう場所で暮らすことができて幸せだなぁと思う。

古民家はこのあたりで唯一のかやぶき屋根を残した建物で、囲炉裏や釜戸などは、毎日ではないけれど現役で使われている。
一昔前、ここにはこんな暮らしがたしかに存在していたのだ、ということを今に伝えてくれる貴重な場所。
この仄暗い空間で、こんな風に火を囲んで、家族で食事をしたり、親しい人たちと語り合ったりして過ごしたのかな。
今よりもずっと不便で大変な暮らしだったのだろうけど、その分、今とは比べものにならないくらい、人と人とが強く、温かい絆で結ばれていたんだろうな。

私は週末農業サークルをきっかけにここへ足を運ぶようになって、まだ3年ほどだけれど、この場所と、ここに集う人たちがとても好きだ。
みんな職業も年齢も、ここに辿り着くまでの経緯も様々だけれど、この古民家に惹きつけられる人たちには、何か根っこの部分で共通するものがあるような気がしている。
それが何なのか、うまく言葉にはできないけど、波長が合うというのか、その人たちと一緒にいると、無理なく自然体で過ごすことができる。

生まれ育った場所にも、そこで一緒に過ごした人たちにも、それほど愛着が持てなかった私だけど、この場所で暮らすようになって、心の故郷を見つけたような居心地の良さを感じている。
これからも、たくさんの人がこの古民家で温かい時間を過ごせるように。
子どもたちがこの地域の良さを知り、この場所で暮らす素敵な人たちに出会い、故郷への愛を育んでいけるように。
そのためにできることを私なりに考え、行動に移していけたらいいな、と思っている。
古民家が繋いでくれた仲間たちと一緒に。

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