3/31発売『暗殺の森』UHD+Blu-rayについて①
2023年3月31日に、ベルナルド・ベルトルッチ監督、ヴィットリオ・ストラーロ撮影監督、ジョルジュ・ドルリュー音楽、ジャン=ルイ・トラティニャン、ステファニア・サンドレッリ、ドミニク・サンダほか出演の大名作『暗殺の森』が、4K UHDとBlu-rayの同梱という形で発売となります。発売元はWOWOWプラス、販売元はTCエンタテインメント、お値段は高くて申し訳ありませんが7,800円+税でございます。7,800円というのは、なにか出始めのレーザーディスクの一枚ものの値段だったなあ、と今、遠い目になりました。
私、シネフィルWOWOW(以前はシネフィルイマジカ)というDVD&Blu-rayレーベルでけっこう長いこと働いております山下と申します。今回の『暗殺の森』の商品化のプロデューサー/ディレクターも務めます。よろしくお願いします。
さて、『暗殺の森』のなんたるかは既に多くの方がご存知でしょう。ご存知のない方はググっていただければいくらでも出てくると思いますので、もう省略します。ここでは今回の商品に使うマスターについて説明させていただきます。
今回のマスターは2022年の初春に完成した、オリジナル・ネガからの4Kマスターです。4Kというのは、画面の左端から右端までを約4000ピクセルのデジタルデータで記録したり、表示したりするという意味です。お宅に4Kテレビをお持ちの方もおありでしょう。異論もありますが、長い間映画撮影、上映の主流メディアであった35mmフィルムの映像をデジタル化する際に、その解像度で取り込めば、まずまず元の素材と遜色のない画質がキープ出来るというのが業界の一応の共通認識となっております。
さて、今回の4Kマスターの冒頭に提示される修復に関する先付けです。イタリア語であります。Google翻訳に頼りますと、
『暗殺の森』(ベルナルド・ベルトルッチ、1970年)の4K修復はチネテカ・ディ・ボローニャとミネルヴァ・フィルムズの協力により、ベルナルド・ベルトルッチ財団の後援の下、イタリアの国立映画アーカイブCSCに保存されていたネガと音ネガから制作されました。
光の加減の参考として、2009年にベルナルド・ベルトルッチとヴィットリオ・ストラーロが監修して、ルーチェ・チネチッタで制作された35mmプリントが参考に使われました。
実作業は2022年にリマジネ・リトロヴァータで行われました。
と書いてあります。チネテカ・ディ・ボローニャはイタリアのボローニャ(映画修復のメッカです)にある映画アーカイブ、ミネルヴァ・フィルムズはこの作品の権利者、ルーチェ・チネチッタはローマにある会社、リマジネ・リトロヴァータは前述のチネテカ・ディ・ボローニャに併設された現像や修復をやるラボです。
今回、弊社が日本におけるディスク化権ほかを取得する前に、オンラインのストリーミングでこの新しい4Kマスターを見せてもらいました。昨年の5月くらいのことだったかと思います。ストリーミングに乗せるためにもちろんデータはかなり圧縮されてますが、大体の仕上がりは分かります。何しろ、ベルトルッチ監督にとっても、ストラーロ撮影監督にとっても出世作と言える作品であり、その美しさは映画史の中でも特別なものとして捉えられてきた作品です。その4K修復版ですから胸は高まります。そして見始めて……アレ? やっぱりこうか……。
ちょっと昔のヨーロッパ映画の、近年修復されたBlu-rayを沢山買っている方はお気づきかと思いますし、僕自身もここ10数年の間にずーっと感じてきたことなのですが、全部とは言わないまでも、ヨーロッパのラボ(現像所というか修復現場)で修復された映画は、色味がアンバーとか黄色とか茶色に傾いていることがかなり多い。おおげさに言えば、フィルムを一回、紅茶に浸したみたいな色味です(実際に浸したって、そんなに色は変わらないでしょうけれど)。で、この『暗殺の森』も全体に「黄色いな〜!」という印象なのでした。すべてのシーンが「夕方」みたいに見えるのです。
『暗殺の森』は2011年に一度、2Kの解像度で修復されています。その時はヴィットリオ・ストラーロが監修し、まだ生きていたベルトルッチが承認したマスターで、その年の5月にカンヌ映画祭のカンヌ・クラシック部門で上映され、ベルトルッチは名誉賞を授与されました。これまで出ていたBlu-rayはその時に作られた2Kマスターを使ったものでした。
で、そのバージョンと、今回の4Kバージョンの色味がまったく違うんですね。ここにその違いを示します。左が新しい4K版、右が以前の2K版です。
困惑してしまうのは、どっちも修復版の制作を仕切ったのは同じチネテカ・ディ・ボローニャであり、現場は同じリマジネ・リトロヴァータなんです。なんで同じところで作ってこんなに色が違うのか!? そして少なくとも自分の目には明らかに以前のバージョンの方がよりノーマルに見える。今回の4K版はプリントを参考にしているだけで、関係者が誰も監修していないこともあり(ストラーロはまだ生きているのですが)、どうにも腑に落ちない。
それで、かねてよりお付き合いのある米国のBlu-rayレーベルの、僕なんかの1000倍、修復の経験を持っているベテラン・スタッフにメールで「こんなことになってるんだけど……」と相談しました。そうしたら「いやー、俺もあそこで修復したカラー映画にはその問題があると思ってたんだよな〜」という返事。やっぱり、そうですか……。
そのチネテカ・ディ・ボローニャは、年に一回、6月の末の9日間、IL CINEMA RITROVATOという、古い映画しかやらない映画祭を開催しています。ここ2年は、コロナの影響もあって、規模を縮小したり、会期をずらしたり、オンラインも併用したりと苦労していたのですが、2022年は久々にフルフルの仕様で開催。僕もその4年前、2018年に一度参加して、めちゃくちゃ楽しかったので(その時に、あるカンファレンスに出席していたヴィットリオ・ストラーロとほんの2〜3分ですが、会話出来ました。その頃は、同じベルトルッチ&ストラーロ組の『暗殺のオペラ』のBlu-ray化に取り組んでいたのです)、そもそも「今年は行きたいな」と思っていたのですが、なんと今回の映画祭のメイン・ビジュアルがまさに『暗殺の森』のダンス・シーンであり、映画祭初日の夜、屋外のマッジョーレ広場で行われる上映もこの『暗殺の森』4K修復版、ということで、こりゃもう、確認も兼ねて行くしかないっしょ!という感じで出かけました。4年ぶりの海外(4年前もその映画祭)、仕事っちゃ仕事なんですけど、完全なる自費旅行。
その映画祭の話をし始めたら終わりゃしないので省きますが(そもそも、よそでなんか書いた気もします)、初日の6月25日の夜、観ましたよ、『暗殺の森』。ちょうどその前週、6月17日にトランティニャンが91歳で亡くなったんですよね。さながら追悼集会になるかと思ったけど、あんまりそんな雰囲気でもなかったです。ゲストはステファニア・サンドレッリで、最初はわーっとみんな盛り上がったんですが、あまりにも話しが長すぎて(おまけにこちらはイタリア語が全然分からないし)、「早く映画やれよー!」って感じになっていったのでした。
でまあ、大スクリーンで観られたのは良かったですけど、色味は、先にスクリーナーで観たのと同じ、黄色味のかかったそのまんま。もしかして、何か少し改善されたりしてるかな、と淡い期待を持っていたんですが、まったくそのまんまでした。しかし、別に誰も文句をいう風でもない。まあ、観始めたら、すぐに慣れちゃいますからね。こういうもんだ、と思えば、こういうもんなんです。
別の上映会場で、先の米国のレーベルの人と4年ぶりに再会して、
「で、どうだった。君の映画の色は?」
「やっぱ黄色かったよ」
「そうか。ま、それが"オフィシャル”ってことだな」
と笑う。何百本もの映画に関わってきた彼にしてみれば、なにかの理由で作品の仕上がりが理不尽な結果に終わってしまった経験がいくらもあるんでしょう。いや、だけどさ、映画史に燦然と輝く『暗殺の森』だよ!? それがお膝元のイタリアで修復して、こんな色味で、後世までこれで残っていくってことでホントにいいのかよ!? 一度、4Kのデジタルマスターが出来てしまったら、未来永劫、それが元になるわけですよ。
日本に帰ってきて、権利を仲介してくれているエージェントの方に、権利元に以下のような意味あいのことを伝えてくれるようお願いしました。このページに載せた比較画像+αもいくつか付けて、です。「以前の修復マスターとここまで色味が違うことをおかしいとは思わないのか? 可能であればグレーディング(色調整のことです)をやり直してほしい。それが無理なら、日本市場向けに、こちらで独自のグレーディングを行うことの許可が欲しい。それが叶うなら、作品の権利を買う」と。
正直、日本でグレーディングをやり直すのは嫌なんですよ。だって、それで出来た色の責任が持てないし、お金もかかります。その費用、完全にこっち持ちですから(権利料からその分を差っ引いてくれるわけでもなし)。昨今、Blu-ray等パッケージ・メディアの売上は激減していて、弊社を含め、どこのメーカーもギリギリのところでやってます。お金をかければかけるだけ、損益分岐点は遠のいてしまう。だけど、ボローニャのマスターの色味のままディスク化したら、この映画の長年のファンが「なんじゃこりゃあ!」と怒る姿がありありと浮かびます。商品として成立するものではありません。
先方の返事はこうです。「今回のマスターは、由緒正しいボローニャのリマジネ・リトロヴァータで修復作業が行われた素性の正しいものだし、既にベルトルッチ夫人の承認も受けたものだから、ここから何かを変えるつもりはない。しかし、そちらが日本のマーケットのためにグレーディングをやり直したいというなら、それはやっていい」。
由緒正しいのは、それは本当にそうなんですよ。なんだけど……なんとも悲しいような、嬉しいような。となれば、日本でやるしかないか。「あー、お金が……」という気持ちもある反面、日本の映画でないものを権利元公認の上でグレーディング出来るなんて機会はそうそうありませんし、しかもそれが、あの『暗殺の森』なわけですから嬉しくないこともない。それどころか、ちょっと武者震いするような気持ち。おまけに、通常、何かの作品を修復する時というのは、さっき言ったように、その映画の「定本」と言うべきものを作ることになるわけですから、ものすごい責任とプレッシャーがあるわけですが、この映画に関しては、自分は納得いってないにせよ、既にイタリアでその「定本」は出来てしまったわけで、こちらはあくまでも日本の観客、ディスクの購買者、放送の視聴者に提供する一つの「バージョン」を作ればいい立場ですから、そこまで重くはない。もちろん、だからと言って、好き勝手をやりたいわけじゃありません。どこまでこの作品の本来あるべき姿に近づけられるか。作品の本質に真摯に寄り添えるか。その探求になります。
で、そういう作業をするとなると、自分が頼るのはただひとつ、そもそも今自分がいる会社のグループ会社でもあったIMAGICA、今はIMAGICA EMS(エンタテインメント・メディア・サービス)という社名になってますが、そこのアーカイブ・チームです。僕自身で言えば、フェリーニの『道』のデュープ・ネガからのHD修復に始まり、ロシアのアニメーション作家ユーリー・ノルシュテイン作品の2K修復(オリジナル・ネガからの2Kスキャンはロシアでやってもらって、そのデータから日本で修復、グレーディングしました)、やはりアニメーション作家ですが日本のレジェンド、川本喜八郎と岡本忠成の諸作の4K修復(これはもちろんオリジナル・ネガからの4Kスキャニングから仕上げまで、すべて同社での作業です)と、ここ10年、お世話になりっぱなしの人たちです。こちらに、これこれこういうことになっていて、こういう作業が必要なんだという話をすると、それは面白いと乗っていただいて、イタリアから届いた4Kマスターを持ち込みました。
ここまでさんざん、ボローニャ製のマスターをディスってるように思われるでしょうが、実際の4Kのマスターを見ると、たしかに黄色いのは黄色いんですが、しかしめちゃくちゃキレイなんですよ。フィルムのグレイン(粒子)もしっかり捉えられているし、ゴミや傷も実に丁寧に取られている。IMAGICA EMSの修復スタッフの方も「フィルムのことがよく分かっている修復だ」と仰ってました。まあ、そりゃそうなんですよ。ボローニャのリマジネ・リトロヴァータは、世界的に見てもずいぶん古くから映画修復をやってきたところなんですから。
今回、IMAGICA EMSでグレーディングを担当してくださったカラリスト(グレーダーとも言います)の方は、先に言ったノルシュテインや川本、岡本もやっていただいたし、最近は田中絹代監督作品とか、『犬神家の一族』をはじめとするKADOKAWA作品(大映作品を含む)もたくさん手掛けてきた、僕の本当に信頼する人です。「フィルム」のなんたるか、が分かっている人と申しましょうか。今回の『暗殺の森』の再グレーディングに関しては、まず前回版のBlu-rayを参考にしてもらうことを基礎に置いて、他にもヴィットリオ・ストラーロが撮影を手掛けた映画で、まずまずちゃんと仕上げられていると僕が思ったBlu-ray『青い体験』とか『ラスト・エンペラー』とか『タッカー』とかを渡して、その傾向を掴んでいただきました。そうしたら、自発的に撮影監督たちのインタビュー集「マスターズ・オブ・ライト」(まもなく増補した「完全版」が出ます)のストラーロのページも読んでくださっていて、ホント嬉しかったです。
その方に「ここらへんが落としどころだろう」というあたりまできっちり仕込んでいただいて、それをチェックさせてもらうことになったのが、昨年末の12月15日。しかしその良し悪しをジャッジするのに自分一人ではあまりにも不安です。で、ここでヒーローのようにさっそうと登場するのが、日本における、というかおそらく世界広しと言えども、ここまで『暗殺の森』の各国版ポスターやスチルをコレクションしている人は他にいないだろうと思われ、また作品そのものにも精通しておられるPOSTER-MANこと小野里徹さんです。
小野里さんのコレクションは『暗殺の森』『気狂いピエロ』関係にとどまらず広範なもので、近年はさまざまな機会に彼所有のポスターが借用、展示されることが多々。僕自身はTwitterを介してたまに緩いやりとりをさせてもらうことはありましたが、直接にお会いしたことはありませんでした。それが急接近したのは、これもまたおかしなもので、6月のボローニャなんですよね。と言っても、小野里さんがボローニャにいたわけではなくて、今年の修復映画祭のポスターが『暗殺の森』だったり、現地での参加者がその柄のトートバックを持ってる姿をツイートしていたりしていたので、何かそのことをTwitterに書かれていた。それで「あ、僕、買って帰りましょうか。どうせ自分のも買うし」とメッセージを送り、帰国後にそのブツの受け渡しで初めてお会いしたのでした。もう今はなくなってしまった赤坂のサイゼリヤで。
その時には既にUHD+Blu-ray化の話が本決まりになりそうだったので、今ここでお話ししているようなことを小野里さんにも聞いてもらって、いずれいろんな形でご協力をお願いします、ということを、安いワインを何杯もお代わりしながらお願いしていたと思います。ほぼ同世代で、お互い映画好きなのはもちろん、音楽の話も出来るので、楽しくなっちゃって、僕はその後行かなくてはならなかった歯医者の予約をすっ飛ばしてしまったくらいです。
12月15日はその小野里さんにもIMAGICA EMSの部屋にご同行いただきました。そして今回販社をやっていいただくTCエンタテインメントのご担当も2名。大きな4Kテレビを前に、まずはイタリアから来た元素材そのままの状態で冒頭部分を流し、その後、新たに調整したバージョンを。
で、結果的に何をどうしたかというと、ごくごくシンプルに説明するなら、過剰な黄色を抜きました。それに尽きます。ただ全編一律にというわけではなく、シーンごとにその程度は調整しています。それ以上には、他の色をいじったりはしていません。実際、黄色味を抜いた状態で見ると、シーン内でのばらつきもなく、色彩はちゃんと整っているんです。だからボローニャでもちゃんと見識をもってやっていたわけです(もちろん)。ただ、全体に黄色い。それはボローニャで使ってる機材がおかしいとか、そういう話ではないと思います。スタジオでのこういう作業は、プロ用のテレビモニター(マスターモニター、略してマスモニなんて言いますが)を毎日きっちり調整して、視覚上はそれに映ったものを確認しながら行うわけですが、加えて、その映像の情報のさまざまな数値を別の形で視覚化する波形モニターなども確認しながらやる。それを見れば、このマスターが全体的に、明らかに黄色方向に振れていることはボローニャのエンジニアだって分かっていたはずです。それでも黄色にする。そして他の多くの修復された映画にもその傾向が見られる。
ここからは私見に過ぎませんが、おそらく、彼らの目には、わたしたち日本人が「黄色いな〜」と感じるこの映像が、黄色には見えていないんじゃないかと思います。目の色が違うからか(しかしイタリアにいる人だって目の色はいろいろでしょう)、視覚情報を処理する脳神経の問題か、生まれた時から浴びている太陽光のせいか、日常生活で使っている照明の色温度のせいか……この問題、どなたかお詳しい方がいらっしゃったら、なぜこうなるのか、ご教示いただきたいです。ちょっと気になるのは、ヨーロッパ発の新作映画に関して、格別にそういう色の偏りを感じたことはなく(まあ、昨今の映画はいかようにも色調整が出来るし、また意図的に極端な色使いをする作品も少なくないですが)、今回のように古い作品を修復したものの中に「この色でいいのか?」と思わせるものが多いというところです。
さて、その日の現場に話を戻すと、カラリストの方の決めていただいた色で概ね「これならいいね!」という感じだったのですが、幾分怪しいところは、その場にいたみんなでイタリアから来たマスターの色をもう一度見直したり、前回版のBlu-rayを見直したりしながら、「もうちょっとだけ黄色抜きましょうか」「ここはこのままにしておきましょう」なんて会話の中で進みました。大前提として「黄色恐怖症」になっているので、黄色いシーンやカットを見ると過剰に反応してしまうのですが、しかし室内のシーンなどは意図的にそうなっている場合もあるし、ストラーロがオレンジ色の光を好むのも周知の事実です。そうしたところまで直してしまってはいけません。
では、それで結果的に全体の色は、前のBlu-rayと同じになったのかというとこれまたそういうわけでもないのです。カラリストの人曰く、前のBlu-rayではフィルムでは出ない色になっている部分もあると。昨今はデジタルでどんな色にでもしようと思えばできるので、おそらく色を決める作業の時に誰かの意向でそういうちょっと「作る」方向になったんだろうと思います。今回はカラリストの方の、フィルムだったらこの色は出るけど、ここまでいったらアウト、という大いなる知見におすがりしました。あと、今見ると、前のBlu-rayは仕上がりがかなり明るく、また「軽い」感じがしましたね。今回のマスターはさすがに4Kということで情報量が多く、画面がミッチリしてますし、画に重さがあります。3月31日発売のUHDやBlu-rayでご確認いただきたいと思います。音もシネフィル・レーベル作品のいつものように、イタリアから来たマスターの音をオノ セイゲンにさらにマスタリングしていただいてます。そして映像特典として、小野里さん秘蔵のかなり沢山の各国公開版ポスターや、貴重なスチル写真(本編には出てこないキャラも!)を静止画集で入れる予定です。全部、日本独自の仕様ですね。海外のファンの方にも買ってもらいたい。また、まだ商品の仕様を完全に決めきれていないのですが、初回版は数量を決めて、後の通常版とは違うものにしようかという話も出てきてますので、お早めにご予約いただけますと幸いです(既にご予約いただいている方、本当にありがとうございます)。
金曜日に告知解禁してこれを書いている間に、Twitterで幾人かの方が書かれたことに対して2つほどお答えしておきます。
①『暗殺の森』をスクリーンで観る機会はないのか?
これについては漏れ聞いていることがありますので、そう遠くないうちに、どこかからアナウンスが出ると思います。
②『1900年』は出し直さないのか?
今のところ、弊社から出す予定はありません。実は『1900年』はベルトルッチが亡くなる前年の2017年に4K修復版が出来ていて、フランスではBlu-rayが出ています(リージョンBなのでご注意を)。これはFOXとパラマウントとルーチェ・チネチッタとチネテカ・ディ・ボローニャによる修復でベルトルッチもストラーロも協力しているとクレジットに出ます。ただですねえ……なんか仕上がりがあんまり……ある意味『暗殺の森』以上に「これでいいの!?」と個人的には思ってまして。ただ、これ作るのは相当大変だったみたいです。いくつかバージョンを変えるたびにネガがバラされて、欠損していたコマが700コマあったというんですね。それを復元したと。でも、質感も色もなんだかなーって感じなんですよね……シーンによっては悪くないところもあるんですが。
すっかり長くなりました。もう9000字超えてます(笑)。長くなったついでに、直近のBlu-rayタイトルと劇場公開ものの宣伝をさせてください。まず1月27日発売のBlu-ray『シチリアを征服したクマ王国の物語』。
2019年の作品で、弊社がこれまでBlu-rayで出してきた映画の中ではもっとも新しいものです。フランスとイタリアの合作で、原作はイタリアの有名な童話。とにかくグラフィックが凄いし、5.1chの設計もダイナミック。オリジナルのフランス語版に加えて、柄本佑さん、伊藤沙莉さん、リリー・フランキーさんらによる日本語吹替版も収録。これはホントに、お宅のTVモニターが一皮むけたみたいに感じることでしょう。劇場公開時の予告編はこちらです。
そして同じ1月27日から3日間、こちらもアニメーションですが、山村浩二監督&プロデュース作品「『幾多の北』と三つの短編」というのを池袋の新文芸坐で初の一般劇場公開します。こちらについては別のnoteも書いてますのでご参照ください。「作家のアニメーション」って今、ここまで凄いことになっちゃってるんだ、と驚かれること間違いなしです。いわゆる「アニメ」をよくご覧になっている方よりも、『暗殺の森』みたいな(って言い方もざっくりしてますが)、ヨーロッパ映画に親しんでおられる方のほうが、むしろスッと入っていけるような文学感とでも申しましょうか。4Kの絵も5.1chの音もすごいんですけどね。こちらもぜひぜひよろしくお願いします。3日間、上映後にトークショーも予定しておりまして、ピーター・バラカンさんや中条省平さんらゲストも豪華です! 予告編はこちら。
それでは読んでくださってありがとうございました。お互いに哀愁のマンデイを迎えましょう。
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