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世界イチ高額な液体を買ってしまった


 飲み会の前後に、ヘパリーゼ®を飲んだ経験があるだろうか。

 私にはある。「ちょっと今日はたくさんお酒を飲みそうだな」とか、「いやあ、テキーラのショット5杯もイっちゃたよ」という状況の際、コンビニで買って飲むことにしている。

 この類のドリンクはちゃんと効果を実感するので満足しているのだが、いつも少しだけ、「これ…高いよな?」と思ってしまう。ちなみに私愛用の「ヘパリーゼ®ダブル パイン味」の希望小売価格は257円(税込み・100ml)。カフェラテMサイズ程度のお金を払えば、地獄の2日酔いを回避できるのだから安いものである。しかしそれでも、「サイズ的にはヤクルトじゃん…」というケチな考えから逃れられない。適正価格がわからないのだ。 
 
 ちなみに、個人的にもっと効果を感じる「ソルマック プラス」の希望小売価格は440円(税込み・25ml)。毎度ありがたく飲ませてもらっているが、やや高額という印象はいつまでも拭えない。一体、この液体は他の商品と比べてどれくらいの金額設定なのだろうか。もちろん含有物の異なる液体同士を比べることなどナンセンスなのは理解している。ただ、何となくの目安が欲しい。コンビニで気持ちよくヘパリーゼ®を買うために、調べてみることにした。

基準はガソリンと水

 今回の調査では、1リットルあたりの価格で比較を行う。なぜなら「1リットル=●●円」という式を、我々は普段から目にしているからだ。ガソリンのことである。街中でよく見かけるあの看板を基準に、ヘパリーゼ®とソルマックの液体としての価値を考えてみたいと思う。
 なお、もう1つ、わかりやすい基準として水を比較対象に追加する。水は人間にとって最重要アイテムであり、全ての液体の産みの親、キャッシュカードの暗証番号8931だからである。

 水(※近所のコンビニ調べ)とレギュラーガソリン(※2021年6月8日現在)の、1リットルあたりの価格は以下である。なお、以後は全て税込み価格、端数は何となく切り上げたり切り捨てたりして記載する。

【ガソリン】 1リットル=152円
【水】    1リットル=52円

 こうしてみると、ガソリンは水のおよそ3倍の価格ということがわかる。ではヘパリーゼ®はどうか。

【ヘパリーゼ®ダブル パイン味】1リットル=2570円

 なるほど、これを見ると、ヘパリーゼ®はおよそガソリンの16倍、水の49倍の価格ということがわかった。ではソルマックはどうか。

【ソルマック プラス】 1リットル=17,600円

 おっと、急にインフレが起こった。地球にナッパとベジータが襲来したときのようである。これによれば、ソルマックはおよそヘパリーゼ®の7倍、ガソリンの115倍、水の338倍の価格ということになる。この価格が高いのかどうか私にはわからない。製造元の大鵬薬品工業株式会社はきっと巨大企業なので、新薬の研究や従業員の福利厚生、保養所の修繕費なども必要なのだろう。そういった費用を捻出するためにも、質の高いソルマックのようなドリンクを日々製造し、世の中に送り出している。そうしたお金が商品に反映されているだけの話であって、ソルマックはたぶん適正価格なのだ。大鵬薬品工業さん、いつもお世話になっています。これからも末永くよろしくお願い致します。

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実りある毎日に憧れて……

 やっとここから本題に入る。
 
 私は最近、家の中の匂いをよくしたいと思っていた。在宅で働く人間にとって、家は職場であると同時に食堂であり、居間であり、寝室でもある。1日のうちほぼ24時間を過ごす家の中を、少しでも快適な環境にしたいと考えていた。

 そこで思い付いたのがアロマだった。丁寧な暮らしを送る人々の家には必ずアロマがある。素敵なデュフューザーを用いてパステルな香りを部屋中に充満させ、『&Premium』を読みながら来年のパリ旅行に思いを馳せる――。そんな生活を私も送りたかった。だからアロマを買うことに決めた。急いで色々と情報を収集する。

 ふむふむ、無印良品のアロマがコスパいいのか。へえ、エンハーブってのは東京のブランドなのか。なるほど、ジュリークはドイツ生まれのアロマなんだな。見た目もお洒落で素敵じゃないか。これなら、私の毎日を見た目から底上げしてくれそうだ…。そうして色々と吟味して悩んだ。そして私は決めた。イソップだ。ミランダ・カーがハンドクリームを愛用しているというブランドのアロマに決めた。急いで店舗を調べる。新宿にあった。電車に乗って向かう。気分が高揚していた。

 店舗に着き、店員にアロマが欲しい旨を伝える。すると親切にアレコレと説明してくれた。香りや効能の違い、使用するべきデュフューザーなど、アロマ初心者の私にとって、イソップの店員は先生のようだった。

 おすすめされたアロマを買うことにする。レジに向かい、金額が提示された。4180円。私は一瞬固まった。前の人のお会計がそのまま残っているのかと思った。しかし店員は笑顔だ。濁りのない瞳でアロマ初心者の私を見つめている。まぎれもない現実だった。カウンターの上に置かれた25mlの液体には、4180円の値段が付けられているのだった。

 もちろん後戻りはできないので、そそくさと支払いを済ませる。会計後、「何か気になる商品はございますか? よろしければサンプルを差し上げます」と言われたが断った。ちまちまとしたサンプルをもらうなど、丁寧な暮らしを送る人のルールに反する。本当は、全商品のサンプルを2か月分もらいたかったが急いで店を後にした。家に帰ってからも、イソップ店内のいい匂いが鼻から離れなかった――。

待たせたな・・・。
こいつが、お望みのフルパワーだ。

 で、例の価格を発表することにする。

 その前に、一応私が購入した商品の説明をしておく。イソップの「イザベル オイルバーナーブレンド」だ。25mlで4180円。公式ホームページによれば、

クール感のあるスペアミント(香料)の香りと温かみのあるローズマリー(香料)の香りでバランスを取ったブレンド。哲学的な黙想に合う香りです。イソップの全製品は、動物由来成分を含まないビーガン製品です。また、製品に使用されている全成分において、動物実験は行っておりません。

とのことらしい。

 ああ、私は今後、哲学的な黙想を行うことになるのか。一体ぜんたい、どうやって取り組めばいいのだろう…。まあそんな話はどうでもいい。では発表する。これを読んでいる人はきっと、フリーザの戦闘力を知ったナメック星人みたいな顔になるのだろう。

イザベル オイルバーナーブレンド1リットル=167,200円

 いかがだろうか。もしまだ戦う気があれば、ピッコロと同化すればいい。それでもこの数字を超えることなど出来ないのだから。ちなみにその他の液体と比べると、イソップのアロマはおよそソルマックの10倍、ヘパリーゼ®の65倍、ガソリンの1100倍、水の3215倍の価格となる。たぶん濃縮ウランよりも高額なのではないだろうか。きっと世界イチ高い液体だ。でもいい匂いがするから問題ない。イソップが我が家にやって来てから、私の生活はグンと質が上がった。冷蔵庫の開けっ放しが減ったし、フランパンの底を洗うようになった。それもこれも、イソップのアロマのおかげである。私の今の目標は、丁寧な暮らしを送る人として『&Premium』に載ることだ。そのためにアメリカン・スピリットを1日1箱吸うことに決めた。オーガニックなタバコを嗜む気鋭のライターとして、いつか取材の連絡が来ないだろうか…。




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