ぶかぶか靴で歩く、朝の鞆の浦。
広島県福山市にある美しい港町、鞆の浦(とものうら)を初めて訪れた。
歴史ある町並みや港の景色がここまで保たれていることに感動し、また、その生きた景色が美しくて感動。
港からの日の出はさぞかし綺麗だろうなと思い、
翌朝、私は5時55分の日の出を目指して早起きし、1人宿を出た。
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ところで、私は、前日この港に到着してすぐに、雁木(がんぎ)から海に落ちた。現場の写真 ↓
海に触れたいと思い、雁木を降りていったのがいけなかった。
慎重に降りたつもりだったが、雁木の表面は見た目よりも苔でつるつるになっていて滑ってしまったのだ。
私は、お尻を雁木に打ち付けながら、もがくこともできないまま、足からあっという間に海に吸い込まれていった。
恐怖の数秒間、頭に浮かんだことは、なぜか”千鳥の大悟”だった。
大悟の、”歩きながら海に落ちる”、という芸が、瞬間的に脳内で再生されていた。
私は衣類を着たまま海に入った経験がなかったので、脳としては、事前に似たような情景をイメージし、備えるつもりだったのだと思うけれど、だったら映画のタイタニックを思い浮かべた方が良いような気がした。
幸い、雁木のL字型の構造と、背負っていたリュックがストッパーになったおかげで、お腹まで海に浸かったところでなんとか体勢を戻すことができ、私は大悟にならずに済んだ。
しかし当然のことながら、靴、服、荷物はずぶぬれになってしまった。
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話を戻します。
前日にそんな事があったため、私は、夫のぶかぶか靴を貸してもらい(自身の靴は乾燥中)、もたもたと港に向かって歩いていた。
港には、日の出時刻を5分過ぎて到着。
幸い、日の出の方角には、山と雲があり、まだ太陽は見えなかった。
係船柱(船を縄で留めておく柱)に腰かけ、日が昇るのを待つことにした。
すると、近くに船乗りさんがやってきて、同じく日の出待ちの観光客に話しかけるのが聞こえてきた。
「日の出まではまだ少しかかりますよ。よかったら日の出の撮影スポットまで船出しますよ。タダでいいですよ。」
「雁木を下まで降りてきて船に乗ってください。」
たぶん、そちらに目をやれば、私も乗船できそうな雰囲気だった。
海上から日の出を撮影できる、めったにないチャンス・・・!!!
だけど、、この今にも脱げそうな夫の靴で、また雁木にチャレンジするのは危険すぎる、と思い、さすがに我慢した。
そうこうするうちに、雲間から太陽が見えてきた。
派手さはないけれど、ノスタルジックな雰囲気があり、好みの一枚。ここで待っていてよかった〜と満足した。
その後、朝の町並みを撮影して歩いた。
「おはようございます。」
この町の人は、観光客の私にも微笑んで挨拶をしてくださる。
ふと、大学時代の親友が広島出身だったことを思い出した。
彼女の、分け隔てなく人を包み込むような優しい人柄に、私はいつも癒されていたことを思い出した。
町と人の暮らし。時を重ね、避けられない変化もあるだろうなかで、大切にして守ってきたもの、想いがあるのが分かる。
また訪れたい町です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
それでは、また。