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しゅんしゅんと鉄瓶が鳴る。布巾を掴み、触らないように気をつけながら白湯を湯呑へと注ぐ。小…
ざわざわと音がする。今年も巡りの13人が集まったようだ。数の増減はあるが、話の筋は変わら…
格子に絡まった風がひと際大きく唸った。北側の玄関からお化けが出そうなひゅうぅぅという音が…
上下に動く二つの棒を見ながら、編みあがる手袋を眺める。まるで魔法みたいだ。 サクサクサク…
羽を休めるために岩場に降り立つと、ふいに霧が濃くなった。疲れていなければ、こんな場所で休…
世界が灰色から闇色へと変わっていく。この時期は晴れることはない。世界は一日中、ぼんやり…
目が覚めると外は真っ白だった。山も白い。山の上だけだと思った白はあっという間に麓まで降りてきてしまった。 山の上は雲の中で見えはしない。唐突の雪への準備がされてないわけでもない。いつもよりも雪が降るのは遅いのだから。 「とがり山が三度白くなると、ここも雪になる」 そんな話はただの目安だとは分かっている。雲の中の山は白と言うより灰色だ。 「まだ、一度も白くなっていなかったのに」 はぁと吐いた息が白く染まった。
「今日はどんなお話をしてくれるの?」 ワクワクとした瞳で見上げるとおばあちゃんは静かに…