「変わる組織」はどこが違うのか? 39
「変わる組織」はコンフリクトを活かす
どんな組織でも、変わろうとすると、変わりたくない人たちとの間で衝突や摩擦(コンフリクト)が生まれます。このコンフリクトを恐れると組織は変われません。あたりまえですよね。ということで、今回はこのコンフリクトをうまくマネージし、これを利用する方法を考えてみましょう。
コンフリクト・マネジメントを考える上でとても役に立つフレームワークがあります。ケン・W・トーマスとラフル・H・キルマンという二人の心理学者が提示したトーマス・キルマンモデルです。彼らは、下図のように自己主張(assertiveness)の程度と、他人の意図を深く理解する「聴く力」の2つの切り口で、人がコンフリクトに対応するモードを5つに分類しました。これが、なかなかスグレものなのです。
簡単に説明しておきましょう。まず「競争的」。相手の言うことを聞かず、一方的に自己主張をするタイプです。この時期、なんとなくドナルド・トランプを連想してしまいます。
その下の「回避的」というのは、自己主張もしないし、人の話も聞かない。つまり問題が起こりそうになったら、その場から逃げるタイプです。
その右横の「受容的」というのは、相手の言い分はしっかり聴くのですが、自己主張が弱いタイプです。
真ん中の「妥協的」は、足して二で割るタイプ。痛み分けといわれるように、両方とも半分は満足するが、半分しか満足しない。そういう解決策を探るタイプです。
最後の「協調的」は、しっかり自己主張もするし、相手の言い分もよく聴くというタイプです。WIN・WINの解決策を粘り強く探すタイプです。
ステレオタイプ的には、アメリカ人、中国人、インド人、韓国人には、「競争的」な人が多く、日本人には「受容的」な人が多いといわれます。
少し前のことですが、在日外国人を対象に、日本人の部下と仕事をしていて最も苦労を感じることは何かというアンケート調査がありました。そのトップ3が「他人との衝突を恐れる」「リスクを避ける」「変化への対応力がない」。やっぱり日本人は受容的(あるいは回避的?)と思わせられる結果でした。
さて、このトーマス・キルマンモデルをどう利用するかです。まず自分のタイプを考えてみましょう。それを知る心理テストもありますが、考えれば大体わかりますよね。そして相手のタイプも考えてみましょう。相手が「競争的」で、自分が「受容的」な場合は、そのままだと負けます。「競争的」な相手には、自分もまず「競争的」に対応するというのが定石です。もちろんそれでは言い合いになるだけで問題は解決しません。しかし、この言い合いを嫌がってはいけないのです。一旦そうしておいて、行き詰ってから「妥協」あるいは「協調」という方向に交渉を移していくのです。
他にもいろいろ対処法はありますが、ポイントは、組織が変わる上でコンフリクトは必要不可欠だと前向きの認識を持つこと、その上で、うまいコンフリクト・マネジメントを学び、実践することです。