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「変わる組織」はどこが違うのか? 41

スタッフを減らして、もっとラインに考えさせよう

 私の印象ですが、日米の大企業を比べると、日本の方がスタッフ部門に人が多いような気がします。たとえば本社企画部といった組織は米国企業ではあまり見かけません。人事部門はありますが、日本より小ぶりで権限も小さい。
 では、本社企画部門がやるような仕事は誰がやるのかというと、CEOとCFO、それにCHROが加わって協働して行う。それに必要な情報収集や分析作業は、CFOのスタッフや外部のコンサルタントが担っているようにみえます。アメリカ企業では人事異動の権限はライン(現場)にありますから、人事部はその手続きを担うだけの小さな組織です。
 これは表面的な比較にすぎませんが、それよりも日本企業は、もっとスタッフを減らしてラインに業務を「移譲」した方がいいと考える本質的な理由があります。それは経営人材の育成です。

スタッフを減らし、ラインに権限移譲する方が経営人材が育つ

 ミッション・ビジョン・バリューの策定もスタッフにやらせない。CEOが自ら旗を振って、ラインに考えさせる。ラインは、自らビジョンをつくり、それを実現するための戦略を立て、資源配分をして実行し、結果の責任を負う。こうした一連の活動を行う中で、自律した経営人材の育成が促されます。
 ラインは日々の仕事で忙しいから、計画策定のためにとれる時間は限られている、代わりにスタッフにやらせようという「親心」が、ラインにいる多くの社員の成長の機会を奪っています。そもそもこの発想は、「ラインは機械のようにわき目もふらず、ひたすら効率的に働くのがいい」というF・テイラー的な考えです。
 ラインは機械ではありません。人である以上、日々の単純な仕事の中にも意義を感じている必要があります。モチベーションは意義から生まれます。そのためにはビジョン・戦略・権限・実行・結果責任という一連の活動に参加させることが重要なのです。
 では、スタッフは何をするのか。いきなりビジョンを考えろ、戦略を作れといわれてもラインとしても困ります。どうしたらいいかわからない。スタッフは、議論に必要な枠組みや、データ収集や分析、視点の提供といったことを行って、ラインの思考を促す。自ら資料を作って上に報告するのではなく、ラインが考え、議論し、結論を出し、上に報告するのを支援する。それがスタッフの仕事です。
 頭のいい人をスタッフ部門に集めて使うと便利ですが、直間比が悪くなり、おまけに経営人材が育たないという問題を抱えるようになります。思い切ってスタッフを減らしてラインに権限を委譲すれば、直間比は良くなり、経営人材も育つ。一挙両得のように思いますが、どうでしょう? 


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