恋するハンバーグ。
洋食屋さんにいくとき、そのお店の看板料理、いわゆる推しメニューは必ずチェックします。
デミグラスソース系のお肉メニューは、洋食の花形。その中でもハンバーグは、おとなにも子どもにも大人気のエース格といっていいでしょう。
🍤無敵のベストパートナー
そんなハンバーグ、単品でももちろん人気ですが、この組み合わせは無敵ではないでしょうか。
ハンバーグ&エビフライ。
ふたりはベストパートナー。ハン太郎くんとエビ子さん。
お店によって、ランチのA定食、おすすめセットAなどなどいろんな名前を名乗っていても、あっちの洋食屋さんにも、こっちの洋食屋さんにも、ほぼ存在するのが、この組み合わせ。そしてメニューに載るどのお店でも、人気メニューなのだと思います。
🥩フライ代われば様子も変わる
これがおなじフライでも、ハンバーグ&ポークカツとか、チキンカツというコンビになるとどうか。そのほうが肉✕肉で一見豪華な気がするのに、なぜかエビフライには一歩譲っている気がします。
ほかのフライを当てはめてみても、エビフライにはかないません。
イカフライやホタテフライ。エビとおなじシーフードなんだけど、そもそものフライとしての存在感が、エビには届かない気がします。
メンチカツはハンバーグとひき肉被り。ハムカツはおいしいけど、おまけ感というか、おやつ的な印象がぬぐえません。そもそもの単品の時点で、立ち位置が脇役のように思います。
🍤だけどエビフライは
それがエビフライときたら、どうですか。ハンバーグの隣にいても、その堂々とした立ち姿。ときどき、ホントにまっすぐぴーんと立った状態で盛り付けてあったりもするくらいです。
エビフライはなぜ、そんなに存在感が強くて、なぜ、そんなに高いポジションにいるんだろうか。
ハンバーグの隣には、目玉焼きがあればじゅうぶんじゃないか。肉々しいソースをまとった、茶色のハンバーグ、それを彩るなら、目玉焼きの白と黄があればいいじゃないか。
でも目玉焼きは、主役にはなりえません。たとえハンバーグの隣にいるとき、そのポジションはあくまで助演。
目玉焼きが単体で登場することがあったとしても、それは1日のメインの食事になる夕飯ではなく朝。もしかしたら、昼にも出番があるかどうかを、目玉焼き自身もどきどきと胸高鳴らせている、そんな存在なのです。
でもエビフライは違う。単品でも人気メニューです。
💧エビフライにはタルタルソース
エビフライはまずもって、ソースからして違う。たしかにタルタルソースは、シーフード系のフライ全般に使われることもあって、エビフライ専用ではないかもしれません。
でも間違いなく、タルタルソースが一番輝くのは、エビフライにまとわれたとき。
衣の向こうから薄く透けて見える気すらする、エビの鮮やかなオレンジレッド。タルタルソースの純白は、それを最高にうつくしく見せるための白。
🥩ハンバーグはいつも思う
ハンバーグはいつも、こう思っているのです。きょうのパートナーはエビフライだろうか。それとも、別の誰かだろうか。
目玉焼きはついてきてくれるだろうけど、やっぱり隣にはきつね色の衣から、赤い尻尾をちらりと覗かせた、あの華やかなエビフライにいてほしい。
もし、エビフライがいないなら、こちらから飛んでいってもいい、フライ・ミー・トゥTHEエビフライ。
エビフライが隣にいれば、デミグラスソースをまとった茶色一色の自分も、タルタルソースの白の輝きに包まれることができる。
あのタルタルをちょっとだけ、こっちにもつけて食べてごらん。玉ねぎのシャリシャリ、ピクルスの酸味、爽やかなのにコクのあるソースの味。
デミグラスソースだけで食べ切るより、途中にひと口挟むタルタル味変バーグの、なんとおいしく感じることか。
エビフライにだって、きっとハンバーグが役に立っているはずだ。エビは淡白な食材だから、きっとお肉のコクとのコントラストを感じることで、単品で食べるときよりも、くっきりとした印象を残す役目をつとめられるはず。
やっぱり隣にはきょうもエビフライにいてほしい。
🍤恋するハンバーグ
エビフライのほうが望むなら、自分はいつでも駆けつける。いや、飛んでゆく。アイ・ウィル・フライforユー。
ハンバーグはこんなふうに、エビフライに恋してるのかもしれません。
それであればわかります。洋食屋さんのメニューを見たときに、まるでそこから浮き上がってくるように、きらきらとした魅力を放つあのひと皿。
ハンバーグ&エビフライは、きょうもハンバーグの恋をのせたまま、お店を訪れるお客さんたちの指名を受け、そしてその胃袋を満たすのです。