ヘルシンキのスオメンリンナ島でマニアックな遊びをする
悪友知り合いSと、7月初旬にスオメンリンナへ遊びに行ってきました。
注:この記事はマニア向けです
スオメンリンナはヘルシンキ観光地として非常に有名なので記事を書く必要はないと思ってました。既に多くの人が情報を発信してるでしょうし。
ただ今回は結構楽しめたので記事を書いてみることにします。
しかし前もって言っておきたいことがあります。
「初めてフィンランドに行きます!」
「初回は全部見て回れなかったからもう一回行きます!」
みたいなライト層には向かない内容です。
誰得か分からないマニア向けの内容となっております。
「もう何回も行ったことがある」とか「普通の観光では満足できない」という猛者向けの記事になります、それでも良いと言う方はどうぞ。
今回遊びに行った経緯
知人Sとロンナンサウナに行くついでに行きました。
※ロンナンサウナについてはこちらの記事を参照してください。
ただロンナ島は小さいのでサウナと食事と酒以外にやることがありません。そのせいか知人Sが「ロンナ行く前にSuokkiも行こうぜ!」と提案してきたので行くことに。
1. スオメンリンナ博物館で昔の地図を凝視する
ヘルシンキ在住でスオメンリンナ島には幾度となく訪れ、ピクニックにもさして興味がない、そんな我々がまず向かった先はスオメンリンナ博物館。
常時展示には目もくれず、足早に2階の期間限定展示に向かいます。
そう、2024年12月末まで展示のこれを見るためです。
1633年からの資料を集めた「フィンランドの測量と地図学」の展示です。
1600年代とかいう「適当に作っただろ」って疑いたくなるクオリティの地図から、1900年代のまともになった地図まで幅広く見れます。
個人的に何が面白かったかと言うとフィンランドの国土がどのように変わってきたかの推移が見れることです。
例えばこんな感じ
フィンランド北部にある街、オウルの西にはハイルオト島(Hailuoto)があります。この島の形、昔と今とでだいぶ形が変わっています。
昔は島が連なっているのに今は大きな島が1つだけです。
当然、昔の地図は精度が現代に比べると心元ないでしょう。にしてはちょっと違いすぎるんじゃないかというレベルなので例として挙げました。
さすがにこれだけ違うなら測量技術がなくても誰でも分かるんじゃないの、と思いますよね?
フィンランドの国土はちょっとづつ増えている
もちろん首都ヘルシンキなどの都市部では埋め立ても行っています。
しかし今回はオウルからも少し離れた都市部とはとても言えない島です。埋め立てたにしては形も変ですし、メリットもあまりないはずです。
ではなぜ土地の形が変わったのかと言うと、フィンランドの一部地域では隆起が起きています。
理由はシンプルです。フィンランドの土地は何万年も昔の最終氷期時代、スカンジナビア氷床の一部でした。
氷期が終わるにつれ"氷"の大半は融解し消失したわけですが、それに伴い地殻が氷床の重さで沈んでいた圧から解放されて隆起します。
つまり押さえつけられていた地形が少しづつ時間をかけて元の状態に戻っていっているわけです。
「現代は半島でも昔は島だった」という地形はフィンランドではよく観測されます。一部の地域ではもうあまり観測されなくなりましたが、ヴァーサやオウルの沿岸部などでは未だに観測が容易なほど隆起が起きています。
おまけ
以下の画像はスカンジナビア半島の過去1万年間の隆起の分布図です。
1万年間の内、最大で280mの隆起が観測されています。
シュトルーヴェの測地弧
ちなみに展示場にはシュトルーヴェの測地弧が記載されてるフィンランドの地図もあります。
シュトルーヴェの測地弧、フィンランド語で「Struven ketju」と言います。
もし車を借りて北欧を巡る旅行を予定している、でも目的地が決まらない、という人がいたらこれらの測量点を辿る旅というのも面白いのかもしれません。地味ですが一応世界遺産ですし。
ヘルシンキの埋立地
他にもヘルシンキの古い地図なんかを見ると、埋立地の今昔が面白かったりします。
ハカニエミとカイサニエミを結ぶ橋はPitkäsilta(長い橋)と呼ばれています。一つしかないのになぜ"長い"橋と呼ばれているのか。
それは当時あった橋の中で一番長い橋だったからです。
そして橋が架かっているハカニエミ側の地はSiltasaari(橋の島)と呼ばれています。橋の島とはどういう意味だったのか。
昔の地図を見ると謎が解けたような気がしませんか?
観光客も多いHakaniementori(ハカニエミマーケット)は実は埋立地です。
ご存じだったでしょうか。
個人的にはとても面白い展示だと思いますが、地味な展示のせいか見に来る人はとてもまばらでした。
たまにフィンランド人が覗きに来ますが、外国人観光客は皆無だったり。
人が少ないのをいいことに我々は地図の前で長時間鎮座してました。
スマホ片手に動かざること山の如し。
たのしい。
2. 税関博物館で昔の憧れを思い出す
つづいてはこちら、税関の博物館Tullimuseoです。
ここは無料で入場できます。
展示物は主に「昔使われていた備品」や「過去押収した物品の一例」なんかがあります。
昔の分析室なんかはロマンしかない。
昔スウェーデンの物価がフィンランドより下回った時には、バターや砂糖の買い出し客が殺到したりなんかもしました。当時のバター模型も面白い。
ちなみに自分は昔、フィンランドで何の仕事をしたいかと考えた際に税関のとある役職にちょっと憧れを抱いていました。どうやったらその仕事に就けるのかをわりと熱心に調べたことがあります。
(色々考慮した結果、結局はその仕事に就かなかったのですが。)
そういったこともあり税関についての何かをみかけると「お?」と反応してしまいます。白バイに憧れて警察官になる少年の気持ちみたいなもんです。
たのしい。
3. ドックの盤木が好きです
続いてはこちら。現在も絶賛稼働中のドック、Viaporin telakkaです。
いわゆる水抜きできる乾ドックです。
何故なのかはわかりませんが、私は盤木が並んでいるところを見るのが好きなんですよ。
もう見ているだけで大満足な光景です。たのしい。
しかし飽きてきた知人Sから「もう行くぞ」と言われ、しぶしぶ次へ。
4. 人間大砲にロマンを抱く遊び
さて、スオメンリンナ島と言えば大砲ですね。
観光客にとってはいまだ健在というべきか、観光で訪れた子供達の多くは足や手、顔を砲口に入れて親に写真を撮ってもらっていました。
そんな時、ある親子が大砲の写真を撮ろうとしていました。
父親は子供の足を砲口に入れて写真を撮ろうとしたのでしょうか、子供を抱え上げ足を大砲の砲口に入れようとしています。
子供は怖いのか泣いて叫びました。
嫌がって暴れる子供の足を、それでも砲口に入れようとする父親はふざけてこんなことを言ってました。
さすが。これがラテンパワーってやつでしょうか。
ここで思いつきました。観光できている人の出身地を想像して、彼らが大砲で家に帰るにはどの方角がいいのか連想する遊びをしてみようと提案。
つまり何てことはない「あの人はどこの国から来たか」を想像する遊びです。でも「大砲」という要素が合わさると何故かわくわくします。
スオメンリンナに来ている観光客の観察も面白いのでおすすめです。
ややたのしい。
5. おもちゃ博物館でプレミアものを見抜け
サウナの予約時間が迫ってきたものの、まだ少しだけ時間があるということでおもちゃ博物館(Lelumuseo)に行ってきました。
残念ながらミュージアムカード(Muosekortti)の対象外なので、大人1人当たり€7ほど払って入場。
昔ながらのおもちゃを世界各国から取り揃えています。
自分はおもちゃに詳しくはないのですが、確かブリキ玩具ってプレミア価格ついてるのが多いんでしたっけ。高く売れそうに見えるものもチラホラ。
ディズニーとArabiaのコラボ商品もありました。
「これは全種まとめてだと高く売れるだろうな」と知人S。
「このおもちゃはいくらで売れそうだ」などという下世話なトークをしながら見て回りました。
まあまあたのしい。
6. カフェ Samovarbarで手作りのケーキをいただく
ちなみにおもちゃ博物館はカフェが併設されています。
ここのケーキ、かなり美味しいんです。
ケーキと言っても洗練されたフランス菓子というわけではありません。
素朴なフィンランド人らしい、お菓子作りが得意なおばあちゃんの家で出てくるようなケーキです。
旅行で来た方には是非この"フィンランドらしさ"を味わってほしいです。
公式サイトによると「Me leivomme käsin joka päivä」とのこと。
つまり毎日手作りしているそうです。(どこからどこまで"手作り"なのかは正直わかりませんが・・)
このカフェのいいところはケーキだけではありません。飲み物もです。
というのもフィンランドといえばコーヒー消費大国のためか、カフェではコーヒーを飲むのが一般的です。そのため紅茶のクオリティが残念なカフェが多かったりします。
一方でこの幅広で浅いティーカップを見てもらうとわかるように、このカフェのメインの飲み物は紅茶です。紅茶の種類も多いです。
今回は夕方ということもありカフェインフリーのチャイルイボスティーを頼みました。しっかりと蒸らして淹れてもらったおかげか、大変美味しかったです。
スオメンリンナに遊びに来た際はぜひこのカフェを訪れてほしいです。
小さなカフェで、海を眺めながら優しい味わいのケーキが楽しめます。
ロンナ島へ
気持ち早めに島へ行き、ぐるっと周囲を回ることに。
ちなみにロンナ島はスオメンリンナ島に近いということもあり、昔は機雷の保管所として使われていました。
さすがにこの頃になると疲れてきたので「もういいから早くサウナ入ろうぜ」的な雰囲気になってきました。
バーで一杯ビールをいただいてからサウナへ。いえーい!
位置情報
スオメンリンナ島で今回訪れた場所を地図にまとめました。
興味のある方はぜひ。
実は今までスオメンリンナに対していい思い出がありませんでした。なので今回普通に遊びに行ったのはかえってよかったのかもしれません。
おまけ:もやっとした自分のスオメンリンナ歴
前回行ったのは6年前くらいだった気がします。ただその時はスオメンリンナに住んでいる友人がホームパーティを主催するから行っただけで、島を見て回ると言うことはしませんでしたが。
前々回は8年前くらいでしょうか。(前回とは別の)友人の結婚式があるので行きました。スオメンリンナの教会で行われる式と、島のレストランで行われる披露宴に参加することに。
ちなみに式は新婦の希望で冬に決行。暖かくもない正装に身を包み、真冬のスオメンリンナに行くという苦行となりました。
さいごに
こんなマニアックな遊び方を発信したところで誰の得になるかはわかりません。でも何がどう作用するか分からないものなので今回思い切って書いてみました。
こんな記事でも何かが皆さんの参考になれば幸いです。