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ヘルシンキのスオメンリンナ島でマニアックな遊びをする

悪友知り合いSと、7月初旬にスオメンリンナへ遊びに行ってきました。


注:この記事はマニア向けです

スオメンリンナはヘルシンキ観光地として非常に有名なので記事を書く必要はないと思ってました。既に多くの人が情報を発信してるでしょうし。

ただ今回は結構楽しめたので記事を書いてみることにします。
しかし前もって言っておきたいことがあります。


「初めてフィンランドに行きます!」
「初回は全部見て回れなかったからもう一回行きます!」

みたいなライト層には向かない内容です
誰得か分からないマニア向けの内容となっております。


「もう何回も行ったことがある」とか「普通の観光では満足できない」という猛者向けの記事になります、それでも良いと言う方はどうぞ。

そもそもそんな情報を"観光情報"として扱っていいのかを疑問に感じたため日記のように書くつもりです。ただ、おすすめのカフェも紹介してるので情報の要素は一応あります。(なけなしの観光情報要素)

カフェの情報だけ見たい人は、見出し「6. カフェ Samovarbarで手作りのケーキをいただく」をクリックして該当箇所だけ見た方がいいでしょう。





今回遊びに行った経緯

知人Sとロンナンサウナに行くついでに行きました。
※ロンナンサウナについてはこちらの記事を参照してください。

ただロンナ島は小さいのでサウナと食事と酒以外にやることがありません。そのせいか知人Sが「ロンナ行く前にSuokkiも行こうぜ!」と提案してきたので行くことに。

【フィンランド語豆知識】
スオッキ(Suokki)はスオメンリンナ(Suomenlinna)の略称です。

https://urbaanisanakirja.com/word/suokki/




1. スオメンリンナ博物館で昔の地図を凝視する

ヘルシンキ在住でスオメンリンナ島には幾度となく訪れ、ピクニックにもさして興味がない、そんな我々がまず向かった先はスオメンリンナ博物館。

常時展示には目もくれず、足早に2階の期間限定展示に向かいます

君の顔は見飽きてるぜ!あばよ!


そう、2024年12月末まで展示のこれを見るためです。
1633年からの資料を集めた「フィンランドの測量と地図学」の展示です。

興味がある人は今年中に訪れよう!


1600年代とかいう「適当に作っただろ」って疑いたくなるクオリティの地図から、1900年代のまともになった地図まで幅広く見れます。

個人的に何が面白かったかと言うとフィンランドの国土がどのように変わってきたかの推移が見れることです。



例えばこんな感じ

フィンランド北部にある街、オウルの西にはハイルオト島(Hailuoto)があります。この島の形、昔と今とでだいぶ形が変わっています

左:1800年代の地図 右:現代の叡智Google Maps


昔は島が連なっているのに今は大きな島が1つだけです。

当然、昔の地図は精度が現代に比べると心元ないでしょう。にしてはちょっと違いすぎるんじゃないかというレベルなので例として挙げました。
さすがにこれだけ違うなら測量技術がなくても誰でも分かるんじゃないの、と思いますよね?



フィンランドの国土はちょっとづつ増えている

もちろん首都ヘルシンキなどの都市部では埋め立ても行っています。
しかし今回はオウルからも少し離れた都市部とはとても言えない島です。埋め立てたにしては形も変ですし、メリットもあまりないはずです。

ではなぜ土地の形が変わったのかと言うと、フィンランドの一部地域では隆起が起きています

【隆起とは】
隆起とは地面が海面に対して高度を増すことを指します。


理由はシンプルです。フィンランドの土地は何万年も昔の最終氷期時代、スカンジナビア氷床の一部でした。

スカンジナヴィア氷床

【氷床とは】
地表部を覆う総面積5万平方km以上の氷塊(地球の場合は氷河)の集合体である。氷床は氷棚や(狭義の)氷河より大きな規模のものを指す。

Wikipediaより


氷期が終わるにつれ"氷"の大半は融解し消失したわけですが、それに伴い地殻が氷床の重さで沈んでいた圧から解放されて隆起します。

つまり押さえつけられていた地形が少しづつ時間をかけて元の状態に戻っていっているわけです。

ちなみにフィンランド語で隆起現象を「Maankohoaminen」と言います。

黒線で囲んだ現代の国土も昔は大半が大気に露出していませんでした


「現代は半島でも昔は島だった」という地形はフィンランドではよく観測されます。一部の地域ではもうあまり観測されなくなりましたが、ヴァーサやオウルの沿岸部などでは未だに観測が容易なほど隆起が起きています。


おまけ
以下の画像はスカンジナビア半島の過去1万年間の隆起の分布図です。
1万年間の内、最大で280mの隆起が観測されています。

物理地学の基礎:演習問題と解説 3-3 アイソスタシーより画像を拝借




シュトルーヴェの測地弧

ちなみに展示場にはシュトルーヴェの測地弧が記載されてるフィンランドの地図もあります。

Karjala地方がまだフィンランドだった頃

シュトルーヴェの測地弧(シュトルーヴェのそくちこ)は、ドイツ出身のロシアの天文学者、フリードリヒ・フォン・シュトルーヴェが中心となって、1816年から1855年に掛けて子午線弧長の三角測量のために設置された三角点群。
これらの観測点群は、地球の大きさなどを正確に測る上で多大な貢献をしたものであり、当時設置された265か所の測量点のうち34か所が、2005年にユネスコの世界遺産に登録された。

Wikipeda

シュトルーヴェの測地弧、フィンランド語で「Struven ketju」と言います。

もし車を借りて北欧を巡る旅行を予定している、でも目的地が決まらない、という人がいたらこれらの測量点を辿る旅というのも面白いのかもしれません。地味ですが一応世界遺産ですし




ヘルシンキの埋立地

他にもヘルシンキの古い地図なんかを見ると、埋立地の今昔が面白かったりします。

ハカニエミとカイサニエミを結ぶ橋はPitkäsilta(長い橋)と呼ばれています。一つしかないのになぜ"長い"橋と呼ばれているのか。
それは当時あった橋の中で一番長い橋だったからです。

そして橋が架かっているハカニエミ側の地はSiltasaari(橋の島)と呼ばれています。橋の島とはどういう意味だったのか。
昔の地図を見ると謎が解けたような気がしませんか?

1800年代


観光客も多いHakaniementori(ハカニエミマーケット)は実は埋立地です。
ご存じだったでしょうか。

上部画像はヘルシンキ市のサイトから拾ってきました


個人的にはとても面白い展示だと思いますが、地味な展示のせいか見に来る人はとてもまばらでした。
たまにフィンランド人が覗きに来ますが、外国人観光客は皆無だったり。

人が少ないのをいいことに我々は地図の前で長時間鎮座してました。
スマホ片手に動かざること山の如し。

たのしい。




2. 税関博物館で昔の憧れを思い出す

つづいてはこちら、税関の博物館Tullimuseoです。
ここは無料で入場できます。

入口は地味


展示物は主に「昔使われていた備品」や「過去押収した物品の一例」なんかがあります。

昔の分析室なんかはロマンしかない


昔スウェーデンの物価がフィンランドより下回った時には、バターや砂糖の買い出し客が殺到したりなんかもしました。当時のバター模型も面白い。

当時の映像なんかも資料として放送されています

【おまけ】
フィンランドから物価が安い国に買い出しと言えば、現代ではエストニアに行って酒を買うことが有名だと思います。
ちなみに買い出しに来るフィンランド人は Poro(トナカイ)と呼ばれています。一部のエストニア人からは運び屋呼ばわりされてるとのこと。


ちなみに自分は昔、フィンランドで何の仕事をしたいかと考えた際に税関のとある役職にちょっと憧れを抱いていました。どうやったらその仕事に就けるのかをわりと熱心に調べたことがあります。
(色々考慮した結果、結局はその仕事に就かなかったのですが。)

実はまだちょっとだけ憧れてます


そういったこともあり税関についての何かをみかけると「お?」と反応してしまいます。白バイに憧れて警察官になる少年の気持ちみたいなもんです。

たのしい。




3. ドックの盤木が好きです

続いてはこちら。現在も絶賛稼働中のドック、Viaporin telakkaです。
いわゆる水抜きできる乾ドックです。

公式サイトの写真がかっこいー!

【ドックとは】
ドックは、船の建造、修理、係船、荷役作業などのために海岸、河岸、湖岸等を掘り込みまたは埋め立てて築造された湾入状・袋状の平面形の土木構造物である。

【乾ドックとは】
乾ドックとは、船体の検査や修理などのために水を抜くことができるドックのこと。通常「ドック」と言えば、この「乾ドック」のことを指す。


何故なのかはわかりませんが、私は盤木が並んでいるところを見るのが好きなんですよ。

この画像はWikipediaから持ってきています

【盤木とは】
船舶・艦船をドックに入渠(にゅうきょ)させる前に、まず盤木と呼ばれる支えを構築しなければならない。盤木を設置することで、ドックが排水された後でも艦船を直立させておくことが可能となる。船体の形状に合ったものを設置する。いわば、船の模型を置くための台のようなものをつくるのである。盤木の材質はコンクリート、鉄、木などである。

もう見ているだけで大満足な光景です。たのしい。

しかし飽きてきた知人Sから「もう行くぞ」と言われ、しぶしぶ次へ。




4. 人間大砲にロマンを抱く遊び

さて、スオメンリンナ島と言えば大砲ですね。

観光客にとってはいまだ健在というべきか、観光で訪れた子供達の多くは足や手、顔を砲口に入れて親に写真を撮ってもらっていました。

大砲の上に乗る子供も多いです(画像は拾いものです)


そんな時、ある親子が大砲の写真を撮ろうとしていました。
父親は子供の足を砲口に入れて写真を撮ろうとしたのでしょうか、子供を抱え上げ足を大砲の砲口に入れようとしています

子供は怖いのか泣いて叫びました。

子「やだー!!!!!」

嫌がって暴れる子供の足を、それでも砲口に入れようとする父親はふざけてこんなことを言ってました。

父親「HAHAHA!スペインまでこれで帰ろうぜ!

さすが。これがラテンパワーってやつでしょうか。

結構距離ある

知人S「子供嫌がってるから止めてあげればいいのに(笑)」
私「いや、それよりもスペインだとしたら方角が合わない、もうちょっとこっち寄りだ」
知人S「お前のそういうところ嫌いじゃない」


ここで思いつきました。観光できている人の出身地を想像して、彼らが大砲で家に帰るにはどの方角がいいのか連想する遊びをしてみようと提案。

つまり何てことはない「あの人はどこの国から来たか」を想像する遊びです。でも「大砲」という要素が合わさると何故かわくわくします。

次なる対象:襟付きのシャツにデニムを合わせた背の高い集団

私「ゲルマン系で身なりが金持ちっぽい、あの集団はドイツ人か?」
知人S「確かにドイツ人っぽいけど・・・(耳を澄ます知人S)いや、奴らはポーランド語を話している!」
私「なにー?!」

ノリノリでやると面白くなってくる
人間大砲、それはロマンである


スオメンリンナに来ている観光客の観察も面白いのでおすすめです。

ややたのしい。




5. おもちゃ博物館でプレミアものを見抜け

サウナの予約時間が迫ってきたものの、まだ少しだけ時間があるということでおもちゃ博物館(Lelumuseo)に行ってきました。

残念ながらミュージアムカード(Muosekortti)の対象外なので、大人1人当たり€7ほど払って入場。

昔ながらのおもちゃを世界各国から取り揃えています。

目がちょっと怖くないか


今では販売が難しそうな戦争のカードゲームなんかも


これは完全にホラー


日本のおもちゃもありました


自分はおもちゃに詳しくはないのですが、確かブリキ玩具ってプレミア価格ついてるのが多いんでしたっけ。高く売れそうに見えるものもチラホラ

ディズニーとArabiaのコラボ商品もありました。
「これは全種まとめてだと高く売れるだろうな」と知人S。

オークションサイトより転載


「このおもちゃはいくらで売れそうだ」などという下世話なトークをしながら見て回りました。

まあまあたのしい。




6. カフェ Samovarbarで手作りのケーキをいただく

ちなみにおもちゃ博物館はカフェが併設されています。
ここのケーキ、かなり美味しいんです。

ケーキと言っても洗練されたフランス菓子というわけではありません。
素朴なフィンランド人らしい、お菓子作りが得意なおばあちゃんの家で出てくるようなケーキです。

旅行で来た方には是非この"フィンランドらしさ"を味わってほしいです。

りんごとナッツのケーキ+バニラソース(下)とラズベリーのケーキ(左)


公式サイトによると「Me leivomme käsin joka päivä」とのこと。
つまり毎日手作りしているそうです。(どこからどこまで"手作り"なのかは正直わかりませんが・・)

思わず2個目も頼んでしまいました(チョコケーキとベリーのソース)


このカフェのいいところはケーキだけではありません。飲み物もです。

というのもフィンランドといえばコーヒー消費大国のためか、カフェではコーヒーを飲むのが一般的です。そのため紅茶のクオリティが残念なカフェが多かったりします。

一方でこの幅広で浅いティーカップを見てもらうとわかるように、このカフェのメインの飲み物は紅茶です。紅茶の種類も多いです。

今回は夕方ということもありカフェインフリーのチャイルイボスティーを頼みました。しっかりと蒸らして淹れてもらったおかげか、大変美味しかったです。

毛糸の帽子(pipo)をかぶっているみたいで可愛らしい


一応しょっぱいものもあります


スオメンリンナに遊びに来た際はぜひこのカフェを訪れてほしいです。
小さなカフェで、海を眺めながら優しい味わいのケーキが楽しめます。

Café Samovarbar
Suomenlinna C66, 00190 Helsinki
Tel +358 40 500 6607

5/11~6/23 毎日営業 11時~17時
6/24~8/4 毎日営業 11時~18時
8/5~9/1 毎日営業 11時~17時
9/2~9/29 週末のみ 11時~17時
※夏季のみ営業



ロンナ島へ

気持ち早めに島へ行き、ぐるっと周囲を回ることに。

ちなみにロンナ島はスオメンリンナ島に近いということもあり、昔は機雷の保管所として使われていました。

【機雷とは】
機雷(きらい)とは、水中に設置され、艦船が接近または接触したとき、自動または遠隔操作により爆発する兵器をいう。
※いわゆる地雷の水中版です。

かつての保管場所


さすがにこの頃になると疲れてきたので「もういいから早くサウナ入ろうぜ」的な雰囲気になってきました。

バーで一杯ビールをいただいてからサウナへ。いえーい!




位置情報

スオメンリンナ島で今回訪れた場所を地図にまとめました。
興味のある方はぜひ。



実は今までスオメンリンナに対していい思い出がありませんでした。なので今回普通に遊びに行ったのはかえってよかったのかもしれません。


おまけ:もやっとした自分のスオメンリンナ歴

前回行ったのは6年前くらいだった気がします。ただその時はスオメンリンナに住んでいる友人がホームパーティを主催するから行っただけで、島を見て回ると言うことはしませんでしたが。

ちなみにパーティにはとんでもない人数の参加者がおり、主催者の友人とはゆっくり話せませんでした。見知った顔の他の友人達と少し話してさっさと帰ることに。一体何のために行ったのか



前々回は8年前くらいでしょうか。(前回とは別の)友人の結婚式があるので行きました。スオメンリンナの教会で行われる式と、島のレストランで行われる披露宴に参加することに。
ちなみに式は新婦の希望で冬に決行暖かくもない正装に身を包み、真冬のスオメンリンナに行くという苦行となりました。

当然、真冬用のコート一枚では厳しそうだったのでヒートテックみたいな肌着を中に着て行きました。教会内は入口に近い場に座ったためか寒かったので大正解でした。しかし披露宴会場は暑くて汗が・・。
着脱がそもそも面倒な肌着、正装時なら着替えるのがなおさら大変でした。

もちろん靴は雪の中でも歩けるよう冬用のものを履いていきました。
そのため室内では持参した革靴に履き替えるというウルトラ面倒くさいことをするはめに。

結婚式の日取りは全部夏にしてくれ!
大半の結婚式は夏に行われるものですが、もし冬に参加するという方がいたら頑張ってください。

ちなみにその時結婚した友人、今は離婚しています
(離婚率の高いフィンランドあるあるだね!)




さいごに

こんなマニアックな遊び方を発信したところで誰の得になるかはわかりません。でも何がどう作用するか分からないものなので今回思い切って書いてみました。

こんな記事でも何かが皆さんの参考になれば幸いです。