【全て源泉かけ流し!】私が泊まった4千円以下の温泉宿
温泉旅行の宿代の平均は、1泊2食付で1万5千円だそうです。
高いと思うか安いと思うかは価値観に依るところ。ですが長期滞在が基本となる湯治、1~2週間単位で治療(ワーケーション)に出ることも多い私にとっては致死量の価格です。
病臥する以前からボロ宿嗜好の強かったため、剝れかかった壁紙に立て付けの悪いドア、廊下のギシギシ音などは元々何とも思いません(害虫は苦手)。高級旅館に泊れない僻みからではなく、家族経営の小さい宿が本当に好きなのです。
定款やマニュアルに縛られないおおらかさがあり、長逗留すると知らぬ間に割引が適応されていたり、野菜や果物をもらう等、経営者との距離も近づきます。中にはペットの散歩を任されたり、朝夕と野菜サラダと味噌汁を好意で出してくれる宿もありました。
お別れの際に込み上げる筆舌に尽くし難い寂寥感は、きっと高級宿では体験できないことでしょう(僻見かも知れませんが、、)。
本編では実際に私が一名で投宿し、消費税入湯税込で4千円以下の温泉宿をご紹介致します。2度の増税と原価高騰の波に耐え、未だ格安で旅人達を迎える経営者に拍手を送りたいと思います。
①鶯宿温泉 石塚旅館(岩手)
この宿ほど手放しの宿を他に知りません。何と消費税込で一泊2,000円です。鶯宿温泉から田沢湖方面に30分行くと、日本を代表する美麗湯で知られる国見温泉があり、同名の「石塚旅館」が存在します。両館は全く関係ありません。
こちらの宿、私同様難病との戦いの末に湯治に辿り着いたとある旅館の館主から教えていただきました。正直かなりヘビーです。面白半分で行かない方が良いでしょう。
女将さんに南向きの部屋を案内されましたが、カメムシが凄く北側の部屋に引っ越しました。それでも尚、カメムシとの戦いは続きます。
人間の慣れとは凄いもので、3日もすれば何とも思わなくなります。陽が入る時間やストーブを炊くと活動的になるカメムシ、サッと割箸でキャッチしペットボトルの底に落とします。するともう二度と上がって来ません。
浴槽は小さい内湯が一つ、単純温泉ですが湯花が舞い、ホットミルクの様な芳香が漂います。鶯宿温泉街は一通り日帰りで回ったことがありましたが、こちらの湯が最良でした。その証拠に、昼夜地元客がひっきりなしに訪れます。
②小野川保養温泉センター(山形)
小野川温泉の外れにあるこの施設。一般客用の旅籠「吾妻荘」と同経営者が運営しています。小野川温泉の特徴として、源泉を街で集中管理・配湯しており、どこの宿でも安定した良湯に浸かれることが上げられます。
こちらも小さい内湯があるのみですが、硫黄臭漂う小野川4号泉が楽しめます。ちょっと熱いですが、セルフ式で加水できたような記憶があります。
他の旅館と比べて圧倒的に安いので、アメニティやサービスを気にしなければ断然ここです。コンビニの様な商店もあり、中華屋もあるので食逸することはありません。自炊も出来ますが、例によって清潔感に難ありか、、
小野川は街を上げて湯巡りを推奨しているので、憧れの佳宿にも立ち寄り入浴できます。説明不要、街のシンボルでもある共同浴場「尼湯」は必湯です。夏は蛍鑑賞も楽しめます。
③磐梯熱海温泉 湯Kori(福島)
磐梯熱海駅から徒歩1分、老舗旅館から生まれ変わったゲストハウス「湯Kori」。今風の若者が帳場に立ち、一階ロビーではスクリーンにABEMA Primeが投影されています。
部屋も多様で、老舗旅館の趣を残す純和室は清潔感があります。トイレもウォシュレット付きで、長期滞在するには何の不満もありません。駅前温泉なのでコンビニや食堂も近く、コワーキングスペースもあるほどなのでWi-Fiの強度も完璧です。
源泉も近くの温泉神社からPh.9.0のアルカリ性単純温泉を引いています。
実際私は温湯名湯で知られる共同浴場「湯元元湯(35度程度)」に一日中浸かっていることも多いですが。。宿の湯も素晴らしいです。
景勝地「五色沼」にもアクセスしやすく、宿にレンタサイクルもあるので、アクティブな旅にも向いています。
※全国展開しているOYOホテルチェーンのため、AIによる価格変更がマメに行われます。
④那須温泉 民宿くさの(栃木)
那須湯本のシンボル「鹿の湯」から石畳を抜けると、川下に「くさの」は現れます。駐車場がなく前面道路に車を停めるのですが、民宿街の共用道路なのか駐禁の取り締まりはないようです。
以前は食事を出していたようですが、現在は完全に素泊まり宿。
電子レンジがあり、コンビニの弁当で食事は済ませます。ご主人曰く、かつては湯治客で賑わい三菱のマイクロバスで送迎をしていたそう。現在はほとんど湯治客はいなくなり観光や登山客が多いそうです。
部屋も至って清潔で、特に廊下の木材が綺麗で目に留まります。何でも気体に含まれる硫化水素の成分ですぐに痛んでしまい、定期的に張り替えるのだとか。
民宿利用者は「滝の湯」と「河原の湯」の2カ所の共同浴場に入浴が可能です。地元の方に交じりレモン汁の様な強酸性をいただきます。カランやシャワーはなく、湯升に溜まった源泉で身体や頭を洗います。寝る時まで源泉臭が身体を離れません。
いつもご主人と女将さんが出立の瞬間を玄関で見送ってくれます。
⑤五十沢ゆもとかん旧館(新潟)
豪雪地帯南魚沼に現れる一件宿。かつては3,000円プラス税だったようですが、何とか現在(令和3年11月時点)も4千円以下をキープしています。
消雪パイプように井戸を掘ろうとボーリングしたところ、潤沢な源泉が噴き出たことからこの温泉の歴史が始まったそうです。旧館だけでは手狭になり、数百メートル引湯し建てたのが五十沢ゆもとかん(本館)です。
著名人のサインがロビーに多数掲げられ、湯の素晴らしさと南魚沼産コシヒカリを筆頭とする地産の料理も良いことで知られています。いつか泊まってみたいものですが、地歩を確認する意味でも私には旧館が身の丈に合っている気がします。
宿番さんは温泉ソムリエ有資格者で、分析書を家元に見せたところ「超美肌源泉」と太鼓判を押されたそうです。
⑥松之山温泉 民宿みよしや(新潟)
日本三大薬湯に数えられる松之山温泉。一般的な温泉が数十年前の雨水が
が地熱により熟成されるのに対し、松之山は一千万年以上前の太古の海水。油と海水を混ぜたような香り立つ濃厚源泉は唯一無二の存在です。
高級志向の旅館が多い印象ですが、その中で異彩を放つ自炊宿が「みよしや」です。炊事場あり、外鍵なし、百円式テレビと典型的な湯治場スタイルに思わず頬が緩みます。
こちらも極めて小さい内湯のみ。入った瞬間に内側からガツンと効き始め、やがて汗が吹き出します。短時間で効かせるという意味では、私の中ではここがナンバーワンかも知れません。
周辺には定食屋や中華屋もパラパラとあり、食事には困りません。温泉街を少し離れると、品数は少ないですがコンビニもあります。
※昨年11月、暖房費込で4,300円ほどでした。領収書に内訳の記載がなかったような、、燃料代なしでいくらかはちょっと不明です。
以上、6軒の宿をご紹介しました。
共通しているのは源泉の質、湯遣いがその温泉街の中で最も良いということです。宿はデカくなるほど湯が粗悪になり、「温泉は安いほど良い」という郡司勇氏(温泉界のレジェンド)の金言は言い得て妙。
今後もこの言葉を心髄に叩き込み、旅を続ける所存です。
九州、山陰山陽は安宿(ボロ宿)の匂いがプンプンします。今年は、行けるだろうか。
令和4年2月
<①鶯宿温泉 石塚旅館>
<②小野川温泉 小野川保養センター>
<③磐梯熱海温泉 湯Kori>
<④那須温泉 民宿くさの>
<⑤松之山温泉 民宿みよしや>
<⑥五十沢ゆもとかん旧館>
<おすすめ温泉まとめ>