私と温泉と湯治③【草津温泉〜湯田中渋温泉郷へ】
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語弊のないよう慎重に。私は元来人の多いところが苦手です。草津はあまり進んで行く温泉街ではありませんでした。派手にライトアップされた湯畑に、カップルがワイワイ集まる場所に、何故この時連泊をしたのかさっぱり分かりません。
草津の湯が素晴らしいのは言うまでもありません。
ですがこの時は特段温泉で身体を治すというモチベーションはありませんでした。ただ鬼籍に入る前に放蕩をしたかっただけです。
案の定、この時の草津は最悪な思い出になります。名前は伏せますが、リノベーションされたゲストハウスの様な宿でした。小さい内湯には万代鉱源泉が使用されていました。この源泉は95度です。
湯守が横着だったのでしょう、温度調節がされておらず、内湯が熱すぎて足を浸けることすら出来ません。3日間いましたが、一度も宿の湯には入りませんでした。
草津温泉は無料で入れる共同浴場があるので、そちらでカバーリングしました。「煮川の湯」と「白幡の湯」に、誰も人がいなそうな夕食時間帯や夜明け前に入っていました。
こちらの宿、部屋は白の壁紙で囲まれ床はカーペット。窓は一つありましたが、家のトイレの窓のようなサイズで外は見えません。まるで独房に入ってしまったようです。大量に持ち合わせていた薬、医師から処方された鎮痛剤や睡眠薬などです。
全てを口に含め洋酒で流せば一発で逝けるはずです。暫く一点見つめしてボーっとしている時間がありました。危険な状態だったと思います。
今年の夏、友人に連れられ草津に数年振りに行きました。その宿は潰れていました。
草津温泉滞在期間中に、出発から1週間が経過しました。
この頃の記憶、ちょこちょこ飛んでいます。激痛が原因不明ということだけが分かりゾンビの様な状態でした。心療内科を受診すれば「重度の鬱」と診断されたかもしれません。
ですが私は精神科には行きませんでした。鬱の治療が出来たところで10年以上も続く「激痛」は治らないと思ったからです。この旅は記録を取るどころか写真もろくに撮っておらず、どの道を通って、道中何を食べたのか忘れてしまっています。
草津では何を食べたのか、、多分角にあるセブンイレブンでおにぎりなどを咀嚼するだけだったと思います。ですが不思議と家に戻ろうとは思わず、長野方面に移動しました。
到着したのは「渋温泉」です。石畳の温泉街の並びにある御宿に泊まります。まだ営業しているようでこちらも御名前は伏せます。草津に続いてここの内湯も温度調整がされておらず、激熱で入れたものではありませんでした。二軒続けて宿の内湯に入れませんでした。
加水用のホースはありますが、浴槽は結構な容積です。風呂場にいるだけで身体が冷えるので、諦めて外湯を使うことにします。
渋温泉と言えば外湯巡り。宿泊すると共同浴場の鍵が貸与されます。
9カ所の共同浴場でタオルにスタンプを押し、全て巡れば満願成就。当然この時、そんなことをする気力はありません。ここでも3泊しましたが、私は「初湯」、「六番湯 目洗いの湯」、「九番湯 渋大湯」に入っていました。
渋温泉の「金具屋」は日本を代表する佳宿。正面玄関からライトアップされたワンショットは屈指の映えスポットと言えます。撮影のために順番待ちが出来ることもあります。
女子旅4人組に「写真を撮ってくれませんか?」と言われ、「分かりましたと」答え、何枚か撮影をしました。”来るところを間違えたかな”と思いました。今なら少し離れた穂波温泉や角間温泉に泊まります。温泉街の良し悪しではなく、私が極端に一人が好きなだけです。
渋温泉もやはり人が多いので、誰かと行くことはあっても、好んで一人旅で行こうとは思いません。風情があって、一人でも居心地が良いのは角間温泉です。
「角間荘」というお宿は自炊が出来るようなので、いつか長期滞在をしてみたいです。今では湯治場に行くと、フォロワーさんや旅行く人と交流をするのは「楽しい」と思いますが、この頃はかなり卑屈になっており、とにかく誰とも会話をしたくなかったです。
渋温泉の写真を探しましたが見出し画像の一枚しかありませんでした。
草津はゼロです。一転、湯宿温泉や角間温泉を始めとする鄙びた温泉街の写真は掃いて捨てるほど出てきます。全く同じ画角で、フォーシーズン。好みがハッキリ出ていて妙に納得です。
つづく
令和4年10月13日
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