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受け身すぎる若手との取っ組み合いを経てわかった、20代を動かすマネジメント術
30代も後半になると「若手がびっくりするほど自分から動いてくれない」という悩みが周囲からポロポロ出てきます。私も実感します。いい子なんです。細かく指示を出せば全力でやってくれます。いい子たちなんですが、今の20代は自分から全く動けません。
「もっと自分なりに考えて動いてみて」と言っても、昔のパソコンみたいにフリーズします。十分な情報を与えてもダメ、例示してもダメ。
何なら「まずは手を動かしてみて、わからないことが生まれたらいつでも質問してね」と言ってもダメ。何も質問が来ないので1週間放置すると、ただ1週間悩んで手を止めていること多々。お願い、質問して……。
「自分をどう扱ってほしいか」のトリセツを持たない20代
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なぜこんなことが起きているのか。私自身、外資で管理職をやったり、インターン生の育成を担当したりして、何度も苦悩しました。
「私もあなたを大事にしたい。あなたの望むプロジェクトを割り当てたいし、次のステップを用意したい。だからどうしてほしいか教えて」
そう伝えても20代は「自分をどう扱ってほしいか」を語ってもくれません。
しかし、心のどこかで自分に合った仕事を回してほしいという願望は持っているようす。というか、頑張ればいつか自動的に本人が望む仕事が降ってくると信じている気配すらあります。ごめんね、無理だよ。私、エスパーじゃないから。
君は完璧で究極の受け身。そしていい子。これでやる気がない方なら、処遇にも困らないのに。たぶん同じ悩みを抱えている管理職の方、いますよね……?
こういうことは、変な仮説をこねくり回すより本人たちに聞くのが早いな! ということで、20代を対象にインタビューをしてまいりました。といっても、自分のチームにではありません。かれら・彼女らの性質からして、同じ組織のトップには絶対に気を遣いすぎるので、あえて関係ない方々にお話を伺いました。
そして分かったのが、30代以上との決定的な「違い」でした。
今の20代は失敗の代償が大きすぎる社会で育っている
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今の20代は、デジタルネイティブである以上にSNSネイティブです。そして、SNSで「失敗」するとどんな目に遭うかをまざまざと見て育っています。「Xでちょっと盛った話をしたら、100人からしばかれた」みたいな経験を見知っているわけです。
2000年代のネットも殺伐とした場所ではありましたが、1人 vs 圧倒的多数でしばかれることはほとんどありませんでした。それが今は日常的に起きる。となれば、無難に過ごしたいと思うのは当然のことです。
公で叩かれたくないなら、コミュニティを縮小するのが一番の得策です。となれば、やり取りはInstagramの鍵アカウントとLINEグループ、ゲーム好きならdiscordのコミュニティにまとまります。いずれも小規模で、村社会的です。いずれも何かをやらかしたら、グループからのけ者にされるリスクを背負います。だったら自分から動きたくないと考えるのは、自然なことでしょう。
筆者の知る限り、学生のなかで2015年ごろにはリスク回避傾向が生まれていました。学校で恋愛をしたがらないのです。恋をしても成就を願わない。なぜなら、告白して失敗してクラスから浮いてしまうリスクのほうが、恋がかなうメリットよりも大きく感じられるからです。
目立たないことが最適解。そういう社会で育つと「みんなの前で褒められる」こともプレッシャーになります。仕事が早いねとか、頑張ってるねとオフィスで言われたくない。なぜなら浮くからです。
管理職は研修で「叱るときは公ではなく個室でやりなさい。相手の尊厳を傷つけるから」と指導されますが、褒めるときは公でやるように言われてきたはずです。ところが、20代以下は褒めるときも個室推奨です。20代は褒められることでコミュニティから浮くリスクを、我々より大きく見積もっているからです。
自分の意思を持つことと、タイパの相性が悪すぎる
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